『Nikoderiko: The Magical World』は、あまりに「アクションゲーム」愛にあふれすぎています。
主人公・ニコの佇まい、ステージ中に浮かぶアルファベットの収集アイテム(4つ揃えるととある単語になるアレ)、猛スピードで向かってくる青いトゲトゲ、そして、『スーパードンキーコング』シリーズで知られるレジェンド作曲家のデビッド・ワイズが手がけるBGM……。これだけで、さまざまな名作が思い浮かんだのではないでしょうか。
本作の軸となるのは、3Dアクションと2Dアクションを融合させたようなゲーム性とステージ構成。奥から迫り来るドラゴンに追いかけられてたかと思えば、乗り物に乗って横スクロールのステージを攻略する……といった表現豊かなアクションを楽しむことができます。
2Dと3Dを行き来するアクションに、ちょっと多すぎるくらいのアクションゲーム愛をオマージュという形でトッピング。わんぱくなゲーム性がノスタルジーを刺激しながらも新鮮な本作「ならではのよさ」を紹介させてください。
※この記事は『Nikoderiko』の魅力をもっと知ってもらいたいBEEP Japanさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
2Dアクションと3Dアクションが融合したわんぱくなゲーム性。攻撃・ジャンプ・滑空のシンプルなアクションで、誰でも馴染みやすい
トレジャーハンターのニコとルナを主人公とする『Nikoderiko』の物語は、「彼らの船を燃やして宝を奪ったグリムバルド男爵をやっつけること」。シンプルかつ分かりやすい内容で良いですね。
そんな本作は、昔ながらの空気感も強く感じられるオーソドックスなアクションゲーム。
基本的な動きも、攻撃・ジャンプ・滑空といったようなシンプルなもので、少しプレイすればすぐにそのプレイ感に馴染むことができます。
本作のアクション面における最大の特徴は、横スクロールの2Dアクションと奥行きのある3Dアクションがシームレスにつながる形で構築されたステージたち。
上下左右に平面的な動きをする横スクロールステージを攻略していたはずなのに、いつの間にやらステージに奥行きの概念が生まれ、先ほどまでとは異なる質感のアクションゲームが顔を覗かせる。
このスクロール系アクションゲームの美味しいところを全部乗せしたかのような欲張り感、わんぱく感が本作の楽しいところです。
2D横スクロールと3Dアクションという、似ているようで大きく異なる2つのゲームジャンル。この2つのゲームジャンルをただそのまま混ぜ合わせただけではないのが『Nikoderiko』です。
例えば、ドラゴンに追われて逃げ続けることが目的のステージでは、ステージ冒頭のドラゴン出現ムービーから流れるように3Dアクションが始まります。このエリアでのミッションは、ニコたちをとにかく手前に手前に走らせて、奥からのっしのっしと一歩ずつ歩みを進めるドラゴンに追いつかれないようにすること。
奥からやってくるドラゴンが大写しになった状態で背後から大きな音を立てて迫りくるため、その迫力と恐怖感はなかなかのものです。
こういった構成のステージは、スクロール系の3Dアクションゲームでは黎明期の頃からよく見かけるものですが、敵が迫りくる焦燥感が凄まじかったり直前まで進む先に何があるのかわからなかったり、作品においてもかなり印象的なステージになりますよね。マイナー所で申し訳ないですが、『ドナルドダック レスキュー大作戦!!』というゲームでもこのタイプのステージが一番楽しかったです。
そして、迫力の3Dエリアを抜けてそのまま始まるのが、乗り物に乗ってドラゴンから逃げる2Dの横スクロールエリア。このエリアはこちらからは攻撃できないシューティングゲームのように進んでいき、敵が迫ってくる中で周囲の壁にぶつからないようにする繊細な操作が求められます。それに、この乗り物がまた独特なホバー移動タイプなんです。
もしもこのホバー移動アクションを3Dでやることになった場合、そのアクの強い独特な操作感から、かなりのストレスが溜まってしまうように思います。敵に追われる大迫力の3Dアクションと、ちょうどいいレベルでホバーアクションのヒリヒリ感を味わえる2Dアクションの融合が見事に成功しています。
もちろん、ドラゴンもただこちらを追いかけてくるだけではなく、壁を壊して顔を出したり火を噴いてこちらを攻撃してきたりと、あの手この手でプレイヤーを楽しませ……もとい、怖がらせてくれます。
このドラゴンステージに限った話ではありませんが、「巨大な敵が追いかけてくる」というギミックでも、それを2D上で表現するか3D上で表現するかによって、実際のプレイの質感に変化があるというのは面白く感じられました。こういったようなアクションのバリエーションの豊富さ、手数の多さが『Nikoderiko』の大きな魅力のひとつです。
個人的に、特にお気に入りのステージは『やみのさなかのみずうみ』。
これは暗い湖の中を泳いで進んでいくステージなのですが、ここでは主人公が影絵のように表現され、そのシルエットが黒く映し出されているという、絵本のような幻想的で芸術的な演出を楽しむことができます。
このシルエットエリアは2D横スクロールアクションなのですが、色々な方向から光が当たる3Dアクションでは、ここまでの美しい表現は不可能に近かったのではないかと思います。
なお、本作の難易度はしっかりとした歯ごたえのあるものです。特に何も考えずにサクサクと快適に進められるところと集中しなければすぐにミスしてしまうところが良いバランスで配置されており、アクションゲームとしてのメリハリがしっかりとしているため、作業的になることなくほどよい緊張感をもって攻略を進めていくことができます。
ちなみに、イージーモードも用意されているので、アクションゲームが苦手な人でも安心です。
そして、これらのステージを駆け抜けていった先に待ち構えるのが、個性豊かなボス敵たち。彼らとの戦闘にも、敵によっては2Dアクションと3Dアクションが複合しています。2Dアクションであるからこその難しさ、3Dアクションであるからこその難しさがあるボスがそれぞれ存在しているため、ここでも異なるアクションタイプの融合が上手く実現しているように思います。
何度かやられつつ、敵の攻撃パターンを覚えていけば最終的にはなんとかギリギリ勝てるというバランスも良いと感じます。
……まぁ、敵の攻撃パターンやこちらの攻撃タイミングを覚えるまでに時間がかかり、信じられないほどの大苦戦を強いられたボスもいるんですが、それもまたアクションゲームの華、楽しさと言ったところでしょう。
アクションゲームへの愛を感じるオマージュが盛りだくさん。4つ集めたらとある単語になる収集要素や「タルめいろ」も
さて、ここからは『Nikoderiko』に込められた、往年の名作アクションゲームに対する “愛” についてお話させていただければと思います。
本作では、2Dアクション・3Dアクションの傑作にして金字塔的作品である『スーパードンキーコング』シリーズや『クラッシュ・バンディクー』シリーズに対して大いなるリスペクトが捧げられており、そのオマージュと思しき要素が至る所で見られます。
それらのオマージュの中でも、オマージュ元のゲームをプレイしたことがない方でも分かりやすいのが、主人公のニコとルナのビジュアルでしょう。
ドンキーがゴリラ、クラッシュがバンディクートをモチーフにしているように、彼らはマングースをモチーフにしたキャラクターです。
特にニコのキャラクターデザインには、毛の色や服装など、随所にクラッシュを感じさせる要素があるように感じます。ドンキーやクラッシュと比較するとより人間に近い獣キャラであるなど、彼らの間に明確な違いはあるものの、ニコの姿を見たとき、クラッシュと似た「ゲームの主人公感」を感じさせる何かがあるように思います。
そして、ニコたちの敵として立ちふさがるのが、“コブリング” と呼ばれる集団。彼らのモチーフはコブラであり、その天敵はマングース。
本来であればマングース側が敵になりそうな力関係ではあるのですが、ドンキーコングとワニのクレムリン軍団に倣って、哺乳類vs爬虫類の構図になっているのかも……。
その他の場所でも、愛にあふれるオマージュが多すぎるので、ちょっとその一部を見ていきましょう。
まずはステージの中に隠されているボーナスステージの開始画面。
実際にシリーズ作品をプレイしたことのある方ならお分かりいただけると思いますが、見覚えがあるとか既視感があるとかそういうレベルではなく、もはや実際に『スーパードンキーコング2』で目にした画面そのもの。最初にこれを見た時、そこそこの音量で「ドンキーじゃねーか!」と声を出さずにはいられませんでした。
もう1つ、「ドンキーじゃねーか!」と声を出してしまったのが、収集アイテム。
そのアイテムというのが、「N」「I」「K」「O」とそれぞれ書かれた4種類の黄金パネル。4つ集めれば主人公の名前の「NIKO」が完成するというわけなんですが、これはもう完全に『スーパードンキーコング』シリーズではお馴染みの「K」「O」「N」「G」パネルです。
これら2つの要素を見た時に、このゲームの方向性とその心意気が手に取るように分かり、「そちらが全力のオマージュでくるなら、こちらも全力で受け止めねばなるまい」と、謎の覚悟が決まりました。
最後までやりきっていないので分かりませんが、おそらく本作を完全クリアした時の達成度は、『スーパードンキーコング』シリーズよろしく、100%を超えているような気がします。
『Nikoderiko』には、『スーパードンキーコング』シリーズへの絶大なリスペクトがある。その観点をもってステージに目を向けてみると、お助けアニマルに乗って攻略するステージや、
トロッコ、
タルめいろ、
移動するツタに掴まって敵を避け続けるステージ……など、あの日あの時あのゲームで見たステージが目白押しで、その徹底っぷりに驚かされます。
これだけの量のドンキーオマージュを浴び続けていると、「ドンキーじゃねーか!」と叫ぶ体力はいつの間にか無くなり、「お、ドンキーだね〜」とニコニコするばかりに。慣れとは恐ろしいものです。
ここまでドンキーやクラッシュのオマージュについて触れてきましたが、『Nikoderiko』にはまだまだ他のアクションゲームのオマージュと思われる箇所があります。
その中の1つが『レイマン』シリーズ。『Nikoderiko』でニコたちが入手する生き物のような通貨アイテムが、『レイマン』シリーズに登場する通貨アイテムに似ています。
ここまで数々のアクションゲームオマージュを浴びているので、見当違いな可能性もなきにしもあらずですが、「通貨アイテムが独特なフォルム」という偶然が起こり得るとも考えにくいです。
少なくとも私は、最初にこのアイテムを見た時、「レイマンじゃねーか!」と声を出さずにはいられませんでした。結構な大音量で。
再放送かのようになってしまいましたが、本作で。このように思いもよらぬところから急にオマージュが飛んでくるので嬉し驚きが入り混じった大声が出てしまいます。
……それにしても、赤いハリネズミ……ではなく、ヤマアラシの敵が出てきたのには驚きましたね。彼らは丸まってこちらに突撃してくるので要注意です。最初にこの敵を見た時、「ソニックじゃねーか!」とまたも結構な音量で叫んでしまいました。
ちなみに、この敵には青いバージョンも時々存在します。『ソニック』シリーズがオマージュされていることは容易に想像できたはずなのですが、ここまで直球ど真ん中で登場してくれるとは……度肝を抜かれました。
私程度の知識量でも、すぐにこのくらいのオマージュが見つかるので、『Nikoderiko: The Magical World』に仕込まれているアクションゲームへのオマージュ、愛はとんでもない量なのではないかと思います。気が付けていないところもまだまだまだまだあるのではないでしょうか。
『スーパードンキーコング』シリーズで知られるレジェンド作曲家、デビッド・ワイズの手がけた音楽たち
そして、本作に仕込まれたオマージュの最高峰として忘れてはいけないのが、『Nikoderiko』で流れているBGM。
本作の楽曲を担当したのは、なんとあのデビッド・ワイズ。説明は不要かもしれませんが、彼は『スーパードンキーコング』の楽曲を手掛けたことで知られる伝説的作曲家。彼の作った曲は名曲ばかりですが、強いて挙げるなら『バナナジャングル』や『とげとげタルめいろ』あたりが代表作でしょうか。個人的には、『キングクルールのふね』がメチャクチャ好きです。
本作でもデビッド・ワイズの音楽は唯一無二の輝きを放っており、ステージ選択画面の曲やボーナスステージ開始時の曲など、名曲のバーゲンセール状態。どれもゲーム本編の魅力を高めています。本作における『とげとげタルめいろ』的なステージ『はやりのたいほうあそび』の曲も素晴らしかったです。デビッド・ワイズとタルめいろの組み合わせにハズレ無し。
そして、これらの楽曲はステージ内で集めたアイテムと引き換えに解放が可能。宝箱からは音楽以外に設定資料やキャラクターグラフィックも出現するため、聴きたい曲をすぐに聴けるというわけではないのですが、デヴィッド・ワイズの曲をいつでも再生してサウンドトラック代わりに楽しめるというのは大きな魅力です。ちなみに、彼は「満足のいくクオリティの楽曲しか納品しない」そうです。
さて、2Dアクションと3Dアクションへの愛をもって作られた『Nikoderiko』とその魅力についてここまでお話してきました。名作アクションゲームへの「愛」が詰まった本作は、それらのリマスターやリメイクとは違った形で素晴らしさを次の世代に受け継ぐ、そんな作品に感じました。
今回はシングルプレイでこの世界を堪能しましたが、本作はなんと2人での協力プレイも可能とのこと。シンプルなストーリーとゴールを目指すシンプルなプレイだからこそ、ゲーム経験値を問わずにおすすめできそうです。
ちなみに、難易度もふたつ存在しています。シングルプレイで高難度をやり込むもよし、ワイワイ友だちとクリアを目指すもよし。『クラッシュ・バンディクー』やデビッド・ワイズの名にピンときた方はぜひ手にとってほしい、それぞれの「よさ」を感じられる作品です。