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2DアクションRPG『エンダーリリーズ』の続編にあたる『エンダーマグノリア』が気になるので「いきなり続編から」始めてみた。前作を遊んでないけど “話についていけるのか” 検証してみる

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評判のいいゲームは続編が出る。しかし過去作を遊んでいないと、とっつきにくい。

だってやっぱり過去作を遊んでいたほうが思い入れが変わってくるじゃないですか。実際のところ、そうやって躊躇して手をつけられないまま見送ってしまったゲームがいくつもあります。

筆者がそういう性格ゆえに、あるとき友人から「ねえねえ『ゼルダの伝説』シリーズを通ってきてないんだけど『ブレス オブ ザ ワイルド』から入っても大丈夫かな?」と聞かれたとき「それなら『時のオカリナ』(1998年発売)から入ったほうがいいかも」と鬼のような提案をしたことがありました。

……よくない、とてもよくない。

続編から入ったっていいじゃん。気に入ったら過去作を掘っていけばいいじゃん。いったん遊んでみてから決めればいいじゃん。

ということで、気づいたらもう続編が出てしまったゲームを “前作についてあまり知らないまま” 遊んでみようと思います。そのゲームがこちら、探索型2DアクションRPG『ENDER MAGNOLIA: Bloom in the Mist』(以下、『エンダーマグノリア』)。

『エンダーマグノリア』レビュー・感想・評価。前作を遊んでないけど “話についていけるのか” 検証してみる_001

前作『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』(以下、『エンダーリリーズ』)の評判がかなりよかったらしいのですが、筆者はダークファンタジーのジャンルに疎いこともあり、なんとなくスルーしていました。そのため、ざっくりとした概要くらいは知っているもののストーリーについてはほぼ知りません。

続編から入りにくい主な理由は「ストーリーについていけるのか」ではないでしょうか。事実として『エンダーマグノリア』は、“前作から数十年後” が舞台となっているらしいので、いつもだったら見送っていたところ。しかしここで流れを変えていきたい。もっと軽い気持ちでゲームがしたい。

おそらく、筆者と同じように「前作を遊んでいないから」という理由で『エンダーマグノリア』を見送ろうとしている人がいるのではないかと思っています。いるでしょう。

そこで本稿では、前作『エンダーリリーズ』をまったく遊んでいない筆者が果たして続編『エンダーマグノリア』についていけるのか、という点などについて紹介いたします。

まず最初に伝えたいことは、このゲーム、わりと序盤で「犬」をなでることができました。ありがとう。

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文/柳本マリエ


どうやら人工生命体「ホムンクルス」が暴走しているらしい

冒頭に書いたとおり筆者は前作『エンダーリリーズ』のストーリーについてほぼ知りません。知っていることは基本的に下記の記事に書かれている「操作性」や「雰囲気がいい」といった部分です。

ということで前作の結末を知らないまま、本作『エンダーマグノリア』を始めてみました。

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本作は、謎の女性から「調律師を頼るのよ」という記憶(?)とともに「ライラック」が目覚めるところから始まります。そこから自分の足で少し進むと、剣がぶっ刺さっている人工生命体「ホムンクルス」を見つけました。どう見ても貫通してるけど大丈夫なのでしょうか。

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剣を抜いてほしいと言われたため抜いてあげたところ、仲間になりました。彼女の名前は「ノラ」というらしく、破棄された「戦闘用ホムンクルス」とのこと。どうやら「労働用ホムンクルス」もいるよう。

ノラが仲間になったことによりライラックは剣での攻撃など、ノラの能力を行使できるようになりました。このようにライラックはホムンクルスの能力を使うことでようやく戦うことができます。

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ホムンクルスの能力を使い分けながら進んでいくのが本作の特徴のひとつ

「じゃあ主人公ライラックの役割は?」というところで、本作の概要を下記にまとめます。といっても内容は最序盤またはSteamページに書かれている範囲なので安心してご覧ください。

<主人公のライラック>
「ホムンクルスを救済する力」を持つ調律師

<あらすじ>
魔法と機械文明が発展して階層化した魔法大国「煙の国」。発展の末に生み出された人工生命体ホムンクルスは輝かしい未来をもたらすはずだったが、定期的に「調律」をしないと意識制御ができなくなってしまう。地下から吹き上がる煙はホムンクルスを狂わせ、暴走する怪物へと変貌させてしまった。

<攻略フロー>
暴走するホムンクルスを見つける→戦う→倒す→ライラックによって調律される→仲間になる(そのホムンクルスの能力をライラックが使えるようになる)→下層から上層を目指して進む

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最初に出会うノラは例外として、全体の流れとしては暴走するホムンクルスたちをライラックの力で調律することで仲間にしていく感じ。前作のストーリーを知らなくても理解できないような話はなく、とくに問題ないように感じました。

さて、次項からは実際に遊んでみて感じたことを紹介いたします。想像していたよりかなりおもしろくて自分のなかの新しいジャンルが開けた感覚でした。

とにかくめちゃくちゃ遊びやすい(なんで???)

本作を触ってみてすぐに感じたのは「遊びやすい」という点です。具体的には下記など。

・マップがとにかく親切でほぼ迷わない
・バトル操作がシンプルでわかりやすい
・攻撃範囲が広く雑に攻撃しても当たる
・死にそうなときはエフェクトでわかる
・死んでしまってもデメリットがほぼない
・回復ポイントが多い

まずマップについて説明させてください。本作は、あらゆるゲームに共通して発生する「どこへ行くべきか迷ってしまう問題」をひとつひとつ解決してくれています。

たとえば、ダンジョンなどを探索していると「いまは通れないルート」ってあるじゃないですか。そこを通るには鍵などの「アイテムを取得」しないといけないのか、プレイヤーの「スキルを解放」しないといけないのか、条件はさまざまだと思います。

本作は、そういった通れないルートに対してただ「進行不可」と表示されるだけではなく「なにによってルートがふさがれているのか」まで表示してくれる親切設計

マップを開くと左側にアイコンがあり、「ここは魔法扉で進行不可」「ここは肉腫で進行不可」といったようにこの画面を見るだけで現在の探索状況がすぐにわかるようになっているため、迷子になることがほぼありません(いったんスルーしておくなどの判断がしやすい)。

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実際は右側にアイコン表示つきのマップが表示されている(本画像はネタバレ防止のためモザイク処理済み)

試しに肉腫の例を見てみましょう。下記画像は、肉腫があって通れないため「肉腫」と「現在進行不可」のアイコンが表示されています。下の「???」は、アイテム取得やスキル解放などふさがれているルートを通るための条件が満たされたタイミングで「このアイテムを使う」「このスキルを使う」と、開拓する方法の補足が入ります。親切すぎ。

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つまり、探索して通れないルートがあってもアイコンが表示されるためわざわざ覚える必要はなく、「???」が出ているうちは条件を満たしていないのでいったんスルーしておけばOK!

アイテムを取得したときやスキルを解放したときにルートを開拓する方法が表示されるため、そのタイミングで戻るなどすれば無駄なく効率的に進むことができます。

また、やるべきことをコンプリートしたゾーンは「色」ですぐにわかるようになっていて、これもかなり便利。どうやらこのマップの親切設計の一部は前作から引き継がれているみたい。こういうところが評判のよさにつながっているのでしょうね。

つづいてバトルについても紹介させてください。筆者はどんなゲームでもだいたいバトルが苦手です。とくに、ガードやパリィなど攻撃以外にもやることが多いバトルや、見るべきゲージがやたらたくさんあるバトルは混乱しがち。そのため「とにかく剣をブンブン振り回す」といった通常攻撃だけでゴリ押して倒すことが多かったりします。

ですが、本作のバトルシステムはシンプルで助かりました。調律したホムンクルスたちが持つさまざまな技(スキル)をスロットにセットするだけでOKです。

たとえば、□ボタンのスロットにノラの近接攻撃「スレイヤー」をセットすれば□ボタンを押すだけでいつでも剣による素早い攻撃が可能に。□ボタン連打でコンボ攻撃もできちゃいます。シンプル。

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スキルのスロットは4種(4体のホムンクルスのスキルをセットできる)

どのスキルもわりと攻撃範囲が広いため、けっこう雑に攻撃してもちゃんと当たってくれます。この「雑に攻撃しても当たる」がかなり爽快で、効果音もズシャズシャ鳴るので気持ちいい。

なかでも使い勝手がよかったのは「ヨルヴァン」というホムンクルスの「バラージショット」。なんと自動で近くの敵に向かって銃を撃ってくれます。これが本当にありがたい of ありがたい。

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少し高い位置から攻撃すると、自動で斜め下の敵に向かって撃ってくれる

バラージショットはけっこう遠くからでも当たるので「ある程度の距離を保ちながら銃で遠距離攻撃→ダウンさせる→火力の高い近距離攻撃で倒す」みたいなやり方をすると、たいへん気持ちよく進めます。

上記のボタン操作としては、○ボタン押しっぱ(銃)→自動で敵に当たる→敵ダウン→□ボタン連打(剣)みたいな感じ。めっちゃシンプル。各スロットにセットしたスキルは同時に発動できるため、ボス戦のときなどは△ボタンやR1ボタンにセットしているスキルも使って攻撃をしていきます。

あとは、回復アイテムを飲み忘れてHPが少なくなるとエフェクトでわかるようになっていたり、うっかり死んでしまってもデメリットがほぼないところもありがたい。死んでもアイテムが消えてしまうということはなく、直近のレストポイント(回復・セーブ・スキル変更などができるポイント)に戻されるだけなので痛くもかゆくもありません。

そもそもレストポイントの数が多く、ボス戦となる場所の近くにはほぼほぼ設置されているため、手強いボスに負けても数秒あれば再戦できます。心が折れる要素がないので、あっという間に時間が溶けてしまいました。

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レストポイントではホムンクルスたちが寄り添ってくれる(癒)

いいところが多すぎてもうひとつ伝えたいのですが、本作は難易度調整が可能です。筆者はプライドが皆無なので難易度を変えられるゲームは基本的にいちばん低くして遊ぶ派。

本作は、「ハード」「ノーマル」「イージー」「カスタム」から選ぶことができたので、カスタムですべての数値を最大限に低くしました(イージーより少し低くできる)。

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ここで声を大にして伝えたいのが、難易度は限りなく下げたものの「遊びやすさについては親切設計によるもの」だと思っています。「ぬるい=おもしろい」ではなく、本作はかゆいところに手が届くようちゃんと配慮されているからおもしろい。そんなふうに感じました。

暴走しているホムンクルスたちがとても苦しそう

先ほど書いたとおり主人公のライラックは「ホムンクルスを救済する力」を持つ調律師。暴走したホムンクルスとの戦いに勝ち、ライラックの手で魂を解放するとそのホムンクルスの身に起きた記憶の一部を辿ることができます。

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その記憶は胸をしめつけられる内容ばかり。ホムンクルスたちが受けてきた扱いがだんだんと明らかになるのですが、どれもこれも残酷。断片的に描かれるため多くは語られないものの、ひとつひとつの言葉に悲痛な思いが凝縮されていて自然とその背景を想像してしまいます。

ストーリーについては詳しく書いてしまうとこれから遊ぶ方の楽しみを奪ってしまうかもしれないのでこのへんでやめておきましょう。

そういった残酷なストーリーをさらに際立たせているのが、音楽グループ「Mili」による楽曲。なんと全曲をMiliが手がけているとのこと。物悲しく幻想的な楽曲はこのゲームの世界にバッチリ合っていて、聴覚からも没入できます。

ゲームをやめると楽曲がふんわりと耳に残り、ホムンクルスたちに思いをはせてしまいました。

「ゲームBGMがいい」というとあまりにもあるあるすぎて伝わりにくいかもしれないですが、『エンダーマグノリア』(『エンダーリリーズ』)×「Mili」は大正解。

ビジュアルにおける “儚さ” はどこからくるのか

最後にビジュアルについても紹介させてください。世の中に「ビジュアルがいいゲーム」はたくさんあると思います。本作もそのひとつで、ビジュアルがたいへん美しい。

とは言っても、でも先ほどのBGMと同じで「ビジュアルがいい」は抽象的すぎて「まあそうだね」で終わってしまう気がします。じゃあ具体的になにがいいのかというと、

・キャラクター造形がいい
・背景が美麗に描かれている
・細部まで作り込まれている

上記は前提のうえ、筆者はとくに「ホムンクルスの姿」が刺さりました。たとえば下記。

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上記は動かなくなってしまったホムンクルスです。動かなくなってしまったのであれば、横たわって倒れている姿でもいいわけですが、このホムンクルスは違います。

このホムンクルスの生い立ちが詳細に描かれることはないものの、「無念さ」「悲痛さ」みたいなものが伝わってきました。筆者はこういう描写から “儚さ” を感じます。この1枚だけでも「美しくも残酷な世界」のイメージが膨らみました。

「ストーリー」「楽曲」「ビジュアル」の一貫性も本作の大きな魅力のひとつだと思います。


『エンダーマグノリア』は、「ストーリー」「楽曲」「ビジュアル」がバッチリ合っていて、その世界にどっぷり没入できるゲームでした。でもそれはその3つがただ揃っているからではなく、大前提としてバトルや探索の「遊びやすさ」が丁寧に設計されているからだと思います。

最後なのでちょっとだけ個人的な話をさせてください。本作は、筆者が小学生のとき初めて自力でクリアしたゲーム『カエルの為に鐘は鳴る』と同じ類の親切さを感じました。

上記記事で書いているのですが、『カエルの為に鐘は鳴る』は迷子になりにくい配慮や不満を感じにくい配慮を感じるゲームです。でもそれは決して「道順の答えが書いてある」というようなことではなく「ユーザーにひらめかせる工夫」や「ご褒美」などモチベーションが上がる設計になっているから。

『エンダーマグノリア』も開始直後から遊びやすさを感じたので、ちゃんと細かいところまで計算されているのだと思います。

そして肝心の、前作『エンダーリリーズ』をまったく遊んでいない筆者が果たして続編『エンダーマグノリア』についていけるのかという問題について。

もしかしたら前作から登場しているキャラクターや要素があるのかもしれませんが、それらがわからなくても、筆者は本作に胸を打たれました。最初の4~5時間はぶっ続けで遊んでしまい、序盤からガンガン引き込まれてしまったので自分でも驚いています。

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ちょうど驚いているライラックの場面があったから貼っておきましょうね

続編から始めても困ることはひとつもなかった。そしてめちゃくちゃ感情移入もしてしまった。ということで、筆者の結論としては続編『エンダーマグノリア』から始めてもまったく問題ないです。

もちろん前作を知っているに越したことはないでしょう。しかしながら筆者は思っていた以上に楽しめたのでその事実を伝えたい。前作を気にして本作を見送ろうとしていた方に届いたらうれしいです。

 

編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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