向き合わなければいけない現実……ライブを開くにはとってもお金がかかる
ライブが始まるとマネージャーが出る幕はない。本当にただ見守っていることしかできない。これまでの苦労のすべてが成果になる瞬間だ。
ライブでは、アイドルの実力が楽曲に見合っていなかったり、メンタルのステータスが低いとパフォーマンス中にミスをしてしまうことがある。
UIに表示が出るほかメンバーの表情が青ざめるという演出がある。見ていてひやひやする。

しかし、1回や2回のミスは問題ない。多少のミスは他のメンバーがカバーしてくれる。
それでも、ミスが重なりすぎるとどうにもならない。失敗が重なるとライブは失敗となってしまう。
残念ながら初めてのライブは失敗に終わった。夢の始まりはあまりにも非情だ。
しかし、夢を追ったことがある人ならわかるはずだ。最初から成功できるなんてことは稀だ。阻む壁はたくさんある。それでも続けるか、続けないか。選べる道はそれしかない。
彼女たちの失敗は通過点でしかない。これを成長の糧として夢は続くのだ。
とは言いつつも、当然向き合わなくてはならない現実がある。
なんといっても赤字だ。ライブを開くにはとってもお金がかかる。認知度が少ない、実力が足りない、グッズも充実していないと収益が上がらないのだ。
収容人数MAXだったとしても、ただの一見さんはグッズを買ってくれない。チケット代だけでは会場費すら賄えない。
これは後から気づいたことなのだが、人気グループになっていれば失敗しても黒字だったりする。成否はもちろん売り上げに影響するが、広報や育成や会場選定の方が大事ということになる。
最初は「なんで? なんで?」と戸惑っていたが、理屈がわかれば難しいことではなかった。リアル!
出費が大きいライブは、ファンの反応にハラハラさせられてしまう場面であると同時に、プロデュースしているアイドルの輝く姿を見れるご褒美の場でもあった。正直、このご褒美があったからこそ、がんばれたんだと思う。
15人のアイドルたちのメンタルケアで忙殺される。このゲーム、難しすぎる
そんなわけで、想像以上に硬派なシステムに苦戦しつつも、アイドルたちのライブに元気をもらって1年目は問題なくプロデュースが進んでいった。
加えて、その硬派なシステムにも徐々に慣れていく。2年目以降、赤字だったライブも黒字化できるようになった。クラスアップを重ね、2000人規模の池袋サンシャインシティ噴水広場でライブができるまでにグループは成長していた。
自分が手がけたアイドルが大会場でパフォーマンスをする姿を見るのはとてもいい。なにせライブパフォーマンスのクオリティはとても高い。ただただ楽しい時間だ。
しかし、その裏では苦戦を強いられていた。このゲームの「難しさ」が本格的に襲ってくるのは2年目、3年目になってからだった。
本作では3年目まで毎年オーディションを開催する。つまり、2年目には2グループが、3年目には3グループが同時に事務所に所属することになる。
結果、15人のアイドルたちを並行してプロデュースするわけで……。15人分の夢だぞ? 当然、簡単な道じゃない。


アイドルをプロデュースするうえで大事なのが、彼女たちの不安を取り除いてあげることだ。
所属メンバーは以下の条件で不安を抱いてしまう。
1.ライブができていない
2.クラスアップができていない
3.交流ができていない
この3つだ。これらの不安は、都度解消してあげなくてはならない。
そして、この不安はすべて個別のものだ。ライブだけをしても成長がないことへの不安はぬぐえないし、成長できても交流がなければ悲しませることになる。
3年で武道館を目指そうという無茶のまっただ中にいるのだから、彼女たちが不安を抱くペースはなかなかに早い。
もしケアが足りずに不調に陥ってしまうと、メンバーのメンタルは0になってしまう。メンタルはパフォーマンスの失敗の歯止めとなるステータスなので、0となると本番では壊滅的だ。
不調は、特別にケアしてあげないかぎりずっと続く。そして、不安の元を断つことがなければ、そのグループのメンバーは連鎖的に不調に陥ることになる。
ここで、本作が「激ムズ」と呼ばれているゆえんを実感する。しかもこれを3グループ同時(3年目)に行っていく。
「……詰ます気満々ですよね?」
そう思った。初見プレイ時は誰もがそう感じるところじゃないだろうか。
夢破れる。破産して事務所は消滅、借金返済のためにカニ漁へ
3年目の中盤、私の事務所はまだ耐えていた。
自分の中では1期生に対して思い入れが強かったので、武道館をあきらめて解散させるなんてことは眼中になかった。目指すは武道館、その一心だ。
だから2期生、3期生へのケアがおろそかになってしまうし、それが巡り巡って1期生に跳ね返ってきてしまう。ギリギリの状態だ。
本作は、プレイヤーの価値観を問われるゲームだと思う。全員を幸せにしようとすれば、全員にしわよせがいく。経営はどんどん大変になる。何度も心をえぐられた。
気づけば1期生も日比谷野外大音楽堂でのライブをこなせるまでに成長していた。しかし、それでも武道館に挑むにはあらゆるものが足りなかった。
そして、ここから終わりまでは一瞬だった。
3年目の夏、武道館ライブの予約期間の期日が迫る。
期間内に予約できなければ、グループの夢はその時点で終わる。なぜなら3年で武道館に立てなければ解散という決まりだからだ。
しかし、今のメンバーでは武道館に挑戦できるクラスに届いていなかった。となると、そもそも予約をすることさえ許されない。
焦った私はクラス4最大規模の幕張イベントホールでのライブを敢行する。間に合う候補がここしかなかったのだ。
そして、メンバーはなんの問題もなくパフォーマンスを成功させてくれた。会場は湧いていた。ライブ成功だ。
……そして、1800万もの赤字を計上することになる。
破産だ。
なんで??????????
本当にわからなかった。ただ呆然。メンバーも最高のパフォーマンスだったじゃん。ファンも盛り上がってたじゃん。
なぜか。
結局のところ、ひとつの見落としと、ひとつの見誤りだ。広報不足で動員できるファンが少なすぎた。そのため、ライブの成否に関わらず赤字は確定していたのだ。そのうえで、会場費があまりにも高額すぎたのがトドメだった。
ちなみに、愚かさの重ね掛けだが、クラスアップに必要なのは5曲だったのに、焦りすぎていてセットリストに4曲しか入れずにライブを始めてしまっている。曲数が増えれば収益が上がるので、もしかしたら……ということもあったかもしれない。
すべて自分が悪い。
