みなさん、「FLASHゲーム」のことを覚えてますか? 00年代を中心としてインターネットの各所を華やかに彩りつつも、2020年にAdobeFlashがサポートを終了したことを受け、惜しまれながら消えていったゲームジャンルです。
さまざまな作品がAdobeFlashを用いて作られましたが、そのなかでも今回思い出していただきたいのは、匿名掲示板的なノリを色濃く反映した作品の数々。実在の人物や出来事を皮肉たっぷりに取り扱う、あの空気。悪趣味とは知りつつも、ついつい楽しんでしまった、あの作品群です。
FLASHゲー無き令和の2025年に、そのノリを全身にまとった怪作が誕生しました。
どこかで見たことがあるキャラクター!
どこかで聞いたことがあるセリフ!
どこかで触れたことがある空気感!
そうだ!これは!!あの頃のFLASHゲームのノリだ!!!
そんな懐かしい気持ちを味わえるゲームが、この記事でご紹介する『圧Q就活』です。
本作のゲームテーマは「圧迫面接」。
パロディ満載のキャラクターたちが面接官として登場し、プレイヤーにあの手この手で圧力をかけてくるというのが本作の醍醐味です。この悪意すら感じる題材にも、あの頃のFLASHゲームっぽさがありますね。
今回は、現在30代のネット民が幼少期にコンピューター室や自宅で楽しんでいたであろう「00年代のFLASH」のような懐かしさにあふれる、“令和に蘇ったFLASHゲー” と評すべき『圧Q就活』の印象的なゲーム性についてお話していきたいと思います。
※この記事は『圧Q就活』の魅力をもっと知ってもらいたいフレンズライトさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
パロディ満載の登場人物。00年代のFLASHゲームが令和に蘇る!
本作の正式なタイトルは、『圧Q就活 そして面接へ…』。
はからずも伝説に思いを馳せたくなるようなそのサブタイトルからも、パロディの多いネタゲーであろうことが容易に察せられる本作。この予感は、最初のステージで確信に変わることとなります。

そりゃ、最初からこれだもん!
「どこかで見たことがあるような気がするような……」というレベルでは済まされない造形の“ゆきひろ” がド頭から登場。
しかも、主人公に向けて放つワードやその言い回しも、どこかで聞いたことがあるようなものばかり。この令和の時代にここまでのパロディキャラクターを見ることになろうとは夢にも思いませんでした。
このステージの敵……もとい面接官がたまたま有名な人に似てしまったというわけではなく、『圧Q就活』に登場する面接官の面々は、ほぼ全員が有名人のパロディキャラクター。

ゆきひろ以外の面接官には、外資系証券会社プラチナマン・サックスのワンマン社長 “レナルド・トランク”。

新都銀行の “大仁田常務”。

美食家として名を馳せる “天原雄地” などなど……。
どれもこれもネットを何かと騒がせたり、おもちゃにされたりしている人物やキャラクターが元ネタであろう面接官ばかりです。
本作のゲームシステムは、面接官からの質問に対して表示される選択肢の中から制限時間内に返答を選ぶというもの。
場面によっては時間経過によって新たな選択肢が追加されたり、逆に選択肢が減らされたりすることもありますが、ゲームとして難しい部分は無く、その中身は非常にシンプル。
そのため、面接官のキャラクター設定やセリフにもふんだんに詰め込まれたパロディがより一層際立つ作りとなっていて、こちらの返答に対する面接官のリアクションをみるというのが、ゲームのキモになっているように感じます。
明らかに特定の人物をパロディしたことが丸わかりなキャラクター。パロディにまみれた悪意たっぷりなセリフ。ゲームに慣れていない人でも秒で理解できるシンプルなゲームシステム……。
『圧Q就活』がまとっているこの空気感には、間違いなく覚えがあります。
それは遥か彼方、四半世紀近く前の記憶に眠る、あの日あの時あの光景……。
そう、00年代を席巻した、FLASHです!
『圧Q就活』には、現在30代の人の少なくない割合が学校のコンピューター室や自宅のパソコンでインターネットを楽しんでいたころに見たであろう、あのFLASH動画やFLASHゲームの空気感が確かに存在しているのです。その魂を受け継いでいるとすら感じます。

『圧Q就活』は言うなれば、 “令和によみがえったFLASHゲー” 。
本作にあるのは、インターネット掲示板や動画サイトの黎明期にあった懐かしの味。
小学生の頃に覚えたてのインターネットを使い、流れ着いた先にあった動画サイトでゲラゲラ笑っていたあの頃が思い返されます。
当時の私が大好きだったFLASH動画やFLASHゲームでは、ブッシュ大統領(当時)や小泉純一郎首相(当時)がフリー素材かのように使われていて、パロディで手垢だらけになっていたという印象があります。
あれから年号も平成から令和に移り変わり、時代の流れも変わってきましたが、『圧Q就活』が突き進む方向性は、あの時と変わっていません。
痛みに耐えてよくパロディした、感動した!
……なお、本作には “泉 進太郎” なるキャラクターも登場します。ご紹介までに。
これはすごいパロディだと思っています。だからこそ、『圧Q就活』はすごいパロディだと思っている。
そして、「現代に蘇ったFLASHゲー」という視点から改めて本作を見つめ直してみると、“圧迫面接”という攻めたテーマも、00年代のころの味に感じられてくるのですから不思議です。
インターネット黎明期、動画サイト創業当時のあの味が好きな人にとって、本作は絶品なのではないでしょうか。
「え、これで面接受かるの!?」ステージクリアの基準すらよく分からないカオスっぷり。ある意味面接のリアルかも(?)
さて、そんな『圧Q就活』の最初のステージ、面接官ゆきひろとの面接をしている中で、次第にある感情が湧き上がってきました。
「……それにしても、嫌すぎるな……。」
もちろん、このゲームがネタゲーであることは百も承知です。
しかし、それにしたってこの不快感は凄い。こっちが何を言ったとしても秒速で嫌味ったらしくネチネチとディスられ続けるし、好印象を与えられているという手応えも一切ありません。おそらく、この圧倒的な不快感は天然ではなく狙って作られた養殖のものなのでしょうが、そうだとしてもアッパレです。こんなところに気合い入れてゲーム作るやついねぇって。
こんなことを喋っていたら、ゆきひろから「それってあなたの感想ですよね?」とでも言われてしまいそうですが、なんにせよ、真面目に受け答えをしているのがバカバカしくなってきました。
仮にこの会社の面接に通ったとして、その先に待っているのがゆきひろとの日々だということを考えると、いっそ不採用になって就活へ戻った方が幸せなのではないかと思えてなりません。
面接……というよりも、ゆきひろとの会話にだんだんと飽きてきてしまいました。ゆきひろも飽きてきてるので、おあいこですね。
面接の後半では、椅子の背もたれに思いっきり背中を預けて片膝を立てた状態で、ゆきひろの発言は脳内に入れずに右から左に受け流し、普段の私であれば絶対にしない喧嘩腰な返答を繰り返していました。
どう考えても面接ではありえない態度ですが、仮に現実世界でこういった面接に出くわしたとしたら、こんな言動をする度胸はないので、ゲームの世界だからこそできる貴重な経験をさせてもらえたようにも思います。
最終的には、「僕があなたの上司になったらどうします?」という質問に対し、「秒で辞表を出します……」と秒で答えたところに、「ですよね。私もあなたが部下だったら面倒くさそうなので、珍しく意見が一致しましたね」とカウンターを返されるという言葉の殴り合いを繰り広げたところで面接が終了。
それにしても、いくら打っても響かないですね、この人は。精一杯の嫌味をこんな感じで流されてしまってはたまりません。もう全然いいわ、言うことねぇわ。やっぱこいつ強ぇわ。もうだめだ強い。
こうして、『圧Q就活』での最初の面接が終了。
色々と嫌な思いはさせられましたが、普段は言えないようなことも言えたので、スカッともしました。まぁ、面接には落ちたでしょうけど。
なんでだよ!
まさかの採用メールに困惑している私のもとに追加で届けられたのは、今回の面接の評価がSランクであるという通知。おそらくですが、これはこのゲームの中で最高クラスの高評価なのではないでしょうか。
……いや、採用なんだとしたら、あの不快でしかなかった時間はなんだったんですか。こっちに好印象持ってるんだとしたら、もっと言い方ってものがあるでしょうよ。本当にこれでステージクリアで間違ってないですよね?
しかも、よくよく合格通知メールを見てみると、「人畜無害な中庸精神」だの「毒にも薬にもならない」だの「凡庸で事なかれ主義的なメンタリティ」だの、イラッとさせる文言がズラリ。不快感の演出に余念がないですね。「どうせ不快にさせるなら、徹底的に不快にさせる」というこの精神、素晴らしいと思います。
不思議なもので、まったく会話が弾まず、一切の手応えがなかった面接だったこともあり、ステージをクリアしたぞという爽快感や実感がありません。
クリア基準でさえもハッキリとは分からないこの感じ、このカオスっぷりこそが、本作の特徴の1つと言っていいでしょう。「こんなげーむにまじになっちゃってどうするの」という声も聞こえてきそうなほどです。
こんな感じで、本作では、圧迫面接という言葉を聞いたときにぼんやりと思い浮かぶ嫌なイメージがそっくりそのまま具現化されています。実際に受けたことこそありませんが、おそらく圧迫面接はこんな感じなのでしょう。控えめに言って最悪ですね。