実験作にして完成作。じつは意外と遊べるハードが少ない『ヴァルキリープロファイル』
1999年、PS後期に発売された名作アクションRPG。開発は『スターオーシャン』シリーズなどで知られるトライエース。
スマートフォン版は、ムービーなどを追加して2006年にPSP向けに発売された移植作『ヴァルキリープロファイル -レナス-』がベースになっている。タイトル画面にも「LENNETH(レナス)」の文字が入っている。
じつは、『ヴァルキリープロファイル』はほかのスクエニ名作RPG群と比較して、遊べるハードがやや少ない。PC(Steam)やニンテンドースイッチで出ていないので、いま遊ぼうと思うと現実的な選択肢はPS5/PS4かスマートフォン(iOS/Android)になる。
それがせっかくセールになったのだから、買わない手はない!
『ヴァルキリープロファイル』は、個人的に思い出深いタイトルだ。
オリジナル当時、筆者は小学生だったので、ストーリーやエンディング分岐のしくみが難しくてそのすべてを理解することはできなかった。
しかし、アクション要素の強いダンジョン探索や、パーティメンバー4人を○×△□のボタンでタイミングよく動かす戦闘システムは、「なんだこれ!? 超おもしろい! ほかのRPGもマネしたらいいのに!」と子どもながらに感動した。
実際、ヴァルキリープロファイルの影響を受けたと思われるアクションRPGは、その後たくさん誕生している。
そしてなにより本作は、神話をモチーフにした荘厳なボイスつき戦闘演出がかっこいい!
我とともに生きるは冷厳なる勇者、出でよ!
その身に刻め! 神技(しんぎ)! ニーベルン・ヴァレスティ!
系譜としては、『テイルズ』シリーズや『スターオーシャン』シリーズに通ずるものがあり、そのあたりの戦闘システムや演出が好きな人は高確率で『ヴァルキリープロファイル』も好きだろう。「技をつないでコンボを伸ばして奥義で決めてオーバーキル!」みたいな感じのやつ。みんな好きなやつ。
グラフィックは基本的にPSP版準拠だが、会話などで表示されるキャラクターのイラストは明らかに美しくなっている。
アリューゼ、個人的に脳内にあったイメージよりもすっきりした優しそうな顔立ちで驚いた。
ヴァルキリー、ほっぺもちもちでかわいいね。
なお、操作モードは複数用意されており、スマートフォンでも遊びやすいよう配慮されている。
個人的にはどうしてもオリジナル版の操作が染みついているのでコントローラーを接続したくなってしまうのだが、「Classicモード」の操作はかなりやりやすいと感じた。
注意点として、コントローラーを接続して遊ぶときは、PSで言う○ボタンを決定にする「タイプ1」と×ボタンを決定にする「タイプ2」が選べるが、タイプ1のほうがおすすめ。タイプ2にすると戦闘時のボタン配置も入れ替わってしまうので、直感的な操作が難しくなる。
どこでもセーブができて、セーブデータも複数作れるので、失敗したときのやり直しや、ルート分岐の試行錯誤もカンタン。
オリジナル当時は難しくてAエンディングを見られなかったあなたも、このスマホ版でリベンジだ!
今回のセールで一番「出会えてよかった」と思ったスマホ向けRPGの隠れた名作『ケイオスリングスIII』
結論から言おう。今回のセールで、いちばん「出会えてよかった」と思ったのがこのゲームだ! 『ケイオスリングスIII』!
恥ずかしながら、名前すらまったく知らなくて、「へ~、そんなRPGあったんだ。しかも3作目まで出てるくらい人気なのか。まあ、紹介画像を見る限り雰囲気は悪くなさそうだし、値段もちょうど予算内だし、知見を広げるためにちょっと遊んでみるか」くらいの感じで買ったのだが、いちばんハマった。
まず特筆すべきは、上のほうでも触れたが、その操作性のよさ!
まったくストレスがなく、むしろ気持ちよさすら覚えるほど! どうしてもクリアまでそれなりに時間がかかるRPGで、「操作が気持ちいい」ということがいかにすばらしいか!
さすが、最初からスマートフォンをメインハードのひとつとして設計されたタイトル。
画面左側のどこかをタッチするとそこがキャラ操作パッド、右側のどこかをタッチするとそこがカメラ操作パッドになるし、どこかを短くタップした場合は決定ボタンを押した扱いになる。もちろん、画面上のボタンをタップすれば、それを押したことになる。
それらの操作じたいは最近のゲームにも広く取り入れられているものではあるが、仮想アナログスティックの感度とボタンの反応がすばらしく、表示も見やすい。
また、画面上のガイドも充実。
次に向かうべき場所はオレンジ色の3D矢印でわかりやすく示され、各種のフォントやフキダシ、仮想ボタンなども気持ち大きめ。さまざまなスマートフォンで快適に遊べるよう、親切に、ゆったりめの画面設計で作られている。
もともと「スクエニのRPG」という時点でストーリーやシステムには一定の信頼が置けるので、ここの抜群の操作性が加わったとなれば、恐れるものはなにもない!
ストーリーは、いわゆるスペースファンタジーもの。
田舎に暮らす主人公の青年が、とあるきっかけから父の遺志を継ぐことを決意し、完全なる楽園「パラディソス」を求める旅に出る。
主人公はすでに両親を失っている境遇ではあるが、育ての母のような存在であるドロシー、妹のように自分を慕ってくれるパティなど周囲の人に恵まれており、グラフィックのタッチも含めて、ゲームとしての全体的な雰囲気は明るい。
戦闘はアクションっぽい見た目だが、純然たるターン制バトル。
モーションが速く演出も派手めなので、のんびり操作できるわりに見ていて楽しい。
難度はそこまで高くなく、基本的にはサクサク進むのだが、ある程度話を進めると独自のシステム「ジーン」をうまく使いこなさないと勝てない場面が出てくる。
このあたりのバランスはさすがスクエニといった感じで、突飛なわけではないが、よくできていると感じる。
基本的には王道スペースファンタジーJRPGなのだが、そのなかでかなり特徴的でおもしろいと思ったのが、「食事モード」というシステム。
ストーリーの要所要所で、食事をしながら仲間たちと話すシーンがあり、そこでは次に話しかける相手をつねに選ぶことができる。どんどん本題を先に進めてもいいし、あまり関係なさそうな相手にあえて話を振ってリアクションを求めてみてもいい。真剣な話も出てくるし、何気ない雑談もたくさんある。まさに「団欒」といった雰囲気が楽しめる。
また、テーブルに置かれている食べ物が毎回いろいろあり、そのどれもがおいしそうなのもポイント。人数に比して量が多めなところもよい。いっぱい食べてみんなかわいいね。
「ドロシー」「パティ」「ヨハネ」などの人名が並ぶなか、なぜか急に登場する「だいすけ」。
急にひらがなでバリバリの日本名。でもこう見えて主要キャラのひとりである。かっこいいぞ、だいすけ。いつかその名の秘密を教えてくれるのか、だいすけ。
細かいやりこみ要素もいろいろありそうだが、メインストーリーは次にやるべきことがつねにハッキリしているので、空き時間にちょこちょこ遊ぶようなプレイスタイルでも迷わず進めていける。クリアまで何時間かかるかはまだわからないが、楽しみだ!
これからのスクエニはミステリアドベンチャーだぜ! 『春ゆきてレトロチカ』
最近のスクウェア・エニックスといえば、ミステリアドベンチャーだ!
……とまで言い切っていいかどうかはわからないが、少なくとも、2023年に発売された『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』が名作だったことは間違いない。筆者もクリアまでプレイした。
先が気になるストーリー、ひとつひとつを深読みしたくなるセリフ、ほどよく難しい謎解き、映像や音ではなく謎と真実でプレイヤーを驚かせるしかけ……「スクエニって、こんなゲームも出せるんだ」と驚いたものだ。
そんな名作『パラノマサイト』発売の1年前、2022年にも、スクエニは本格ミステリアドベンチャーを出していた! それがこの『春ゆきてレトロチカ』だ!
……えっ!? これ、実写なんだ!? 『街』とか『428』とかみたいな感じ!?
ほぼ前情報なく、「スクエニのミステリアドベンチャー」というだけで買ったので、データダウンロード画面からさっそく驚いてしまった。
この「実写系ミステリアドベンチャー」というのは、過去にも複数のメーカーが出しているジャンルではあるが、本作はよくある写真+テキストの形式ではなく、ほぼ全編が映像である、という点がまず異なる。
たまにムービーが差し込まれるのではなく、本当にほぼすべてがムービーで、ごくまれに推理中などに静止画が挟まるくらい。
感覚としては、「いつでも途中で止めたり情報を確認したりしつつ、自分の発言や推理を展開に反映させられるドラマや映画を観ている」という感じ。なにそれ? 最高では?
会話パートでは選択肢がたびたび出てくるが、これらを選んだ結果もその後の映像やセリフにちゃんと反映される。登場人物がそれをしゃべるし、当然ながら相手のリアクションも変わる。
感心するとともに、「撮影めちゃめちゃ大変だっただろうな……」という心配が出てきてしまう。
推理編では、そこまでに観た場面および出てきたキーワードを「手がかり」として、謎にそれをくっつけることで「仮説」を作り出していく。
組み合わせは有限なので、わからなくても最終的には総当たりでいける形式。ただ、少なくとも序盤はそこまで難しくないので、ちゃんと観ていればわかるだろう。スパッと一発でピースがハマって解決編に突入したときの気持ちよさが醍醐味なので、よく考えよう。
また、本作はスマートフォンとの相性がかなりよい。
ジャンルやUIの性質上、コントローラーやマウスよりも画面タップのほうが快適に操作できるし、気になるシーンをスクリーンショットして見返すこともカンタンなので、むしろスマホこそがベスト端末とすら言ってよいほど。
シビアな操作も要求されないので、この夏休みシーズンで言えば、新幹線や飛行機などの長時間移動中にプレイするのにちょうどよさそう。「なんの映画観てるの?」「これ、じつはゲームなんだよ」「ゲーム!?」みたいな雑談のネタにもなるかもしれない。
100年にわたって起こる、4つの殺人事件。
それぞれの時代に生きる人々や、起きた謎は、じつはすべてつながっていて──
まだクリアしたわけではないが、かなりおもしろい。もっと世間の認知度が高まってほしい作品だ。
おそらく、クリアまでの所要時間は、おおよそ15~20時間といったところだろうか。映画を観たり小説を読んだりに近い気分を味わいつつゲームを遊びたい欲求も満たせるよくばりエンターテインメントアプリとして、ぜひ。
えっ、そういうゲームなの!? 謎多きSLG+ADV『結合男子』
タイトルだけは聞いたことがある。ただし、舞台作品として。「女性向け2.5次元作品」のイメージだ。
セールラインナップを見ていて、「へえ、『結合男子』ってもともとゲームなんだ。ちょっと知りたさはあるし、やってみるか」ということで気軽に購入。
基本的に女性向けADVだと思うので、男性である筆者はターゲットから外れているはずだが、以前、ブロッコリーの女性向けADV『ジャックジャンヌ』を遊んでけっこうおもしろかったので、もしかしてこれもいけるのでは、という期待がある。
で、結論としては……
いける! おもしろい!
乱暴なたとえであることを承知で、個人的感想を率直に言えば、セガの超名作『サクラ大戦』にある程度近いプレイ感覚がある!
舞台は、結倭ノ国(ゆわのくに)の首都・燈京(とうきょう)。
キャラの服装や、映画のことを「活動写真」と呼ぶことなどからある程度の察しがつくが、大正時代の日本がモチーフになっているらしい。
おおよそのストーリーは、こんな感じだ。
結倭ノ国は、すべてを侵蝕する脅威の生命体「デッドマター」の侵略を受けていた。
それに唯一対抗できるのは、「元素」の力を持つ「志献官(しけんかん)」のみ。
主人公(プレイヤー)は、その中でもさらに特別な「結合術」を使える触媒の志献官として、仲間たちと絆を深めながら、激化するデッドマターとの戦いに臨んでいく。
世界のすべてがデッドマターに侵食されてしまうまで、あと50日――
これは、「デッドマター」を「降魔(こうま)」、「元素」を「霊力」、「志献官」を「帝国華撃団」と読み替えてみると、だいぶサクラ大戦っぽくなる。我々男性ゲーマーにも親しみやすい。奇しくも、大正時代がモチーフなことや、舞台作品に派生してそれが大人気になったことも同じである。
ちなみに筆者は人生にベストゲームに『サクラ大戦3 〜巴里は燃えているか〜』を挙げるくらいのサクラ大戦ファンである。
そのうえで、本作の優れている点を挙げると、「男性キャラ同士の関係性の掘り下げが深い」ことと、「デッドマターがちゃんと怖い」ことが挙げられる。
前者は、女性向けADV全体の特徴でもある。
男性向けADVは、主人公と女性キャラの関係性、平たく言えば恋愛の掘り下げに重点が置かれることが多いが、女性向けADVは主人公を介さない男性キャラ同士の友情の掘り下げもしっかりめに描かれることが多い。
それは本作でも例外ではなく、キャラのビジュアルや性格に興味が持てれば会話を聞いているだけでけっこう楽しい。
後者は、さすがスクウェア・エニックスだな、という感じ。
迫力あるイラストや不穏な専門用語、いきなりピンチに陥るイベント戦闘などを絡めて、いかにデッドマターが得体の知れない恐ろしい存在であるかを序盤のかなり早い段階でわからせてくれる。
筆者はいまのところ安酸 栄都(やすかた えいと)が好きだ。
明るくて元気だぞ。たぶんご飯もいっぱい食べるぞ。かわいいね。
ちなみに、最初に出てくるデッドマターも、怖いけど見た目はおっきくてちょっとキュートだぞ。侵食で空間をいっぱい食べるぞ。かわいいね。
女性向けADVということもあってか、ゲーム性はかなりシンプル。難度も低い。
ただ、世界設定やキャラクターに多少なりとも興味が持てるのであればストーリーに引き込まれる可能性は高く、性別問わずやってみる価値はあるタイトルだ。
筆者は大正浪漫が好きなのと、キャラ同士の関係性の掘り下げを見るのも好きなので、継続的に楽しんでいる。あと数日でクリアできそう!
懐かし枠もチャレンジ枠も買おう! おすすめは全部! と言いたいが
6作ぜんぶおもしろかったので、ぜんぶおすすめ! ぜんぶ買おう!
……と言いたいところだが、さすがにそれは締まりがなさすぎるので、あえて個人的にとくに「買ってよかった」と思った3作に絞る。
過去に遊んだことがある「懐かし枠」から『ファイナルファンタジーVI』、初めてプレイした「チャレンジ枠」から『ケイオスリングスIII』と『春ゆきてレトロチカ』だ。
これらは単純にゲームとしておもしろいのはもちろん、スマホでの操作性もかなりよかったのでとくにおすすめの作品としておく。
「自分がメインターゲットではないにもかかわらず驚くほど楽しめている」という新鮮な体験ができた点では、『結合男子』もかなりよかった。
でも、それ以外もぜんぶおもしろかったので、ちゃんとこの夏にぜんぶクリアするぞ。
ええっと、仮に1本あたりのクリアタイムを20時間として、6本で……120時間!?そんなに!?1日2時間遊んだとしても2ヶ月かかる! でもぜんぶ遊びたい! 9月まで夏休み取らなきゃ!