UbisoftとEpic Gamesは、3月15日に発売予定の『Tom Clancy’s The Division 2』(以下、The Division 2)について、PC版をEpic Games StoreやUbisoft Storeなどで販売する方針を発表した。
あわせて海外メディアPolygonやVarietyによるUbisoftへの取材により、Steamでは同作が販売されないことが明らかとなっている。すでに存在していたSteamの『The Division 2』製品ページは今回の発表とともに消滅している。
今後、UbisoftはEpic Gamesといくつかのタイトルでパートナーシップを結ぶ予定で、詳細は来年度中に発表されていくという。ゲーム業界の巨人のひとりUbisoftが、PCゲームの販売プラットフォームとして一大勢力を築くSteamを脱し、昨年サービスが始まり対抗馬となるか目されていたEpic Games Storeへと一歩踏み出した。
PCゲームのオンライン販売プラットフォームでは、長らくValveのSteamによる一強時代が続いてきたが、昨年12月に『フォートナイト』とゲームエンジン「Unreal Engine」を有するEpic Gamesがストア事業へ参入。Epic Games Storeを開設し、いくつかのインディーゲームやアドベンチャーゲーム版『The Walking Dead』の独占販売を打ち出していた。
Epic Games Storeの特徴は、業界の慣例だった販売プラットフォームと開発者の利益の取り分「70:30」を大幅に変更し、「88:12」とした点にある。対するSteamは「70:30」に準じており、同ストアが開設される直前には一部制度を変え、売り上げが5000万ドルに達した大ヒット作品の利益配分は「80:20」としている。
脱Steam、「Epic Games Store」でインディー系の独占タイトル続く。「88:12」と無料ゲーム配布で攻勢仕掛ける『フォートナイト』の成功者
ただし、利益配分に差があるとはいえ、Steamにおけるプレイヤー数と販売タイトルは現在も増加の一途を辿っている。今年1月6日には同時接続プレイヤー数のピークが1800万人を突破、月間アクティブユーザー数は9000万人規模で、2万作以上の販売コンテンツは日々増加中だ。すでに築き上げられたプレイヤー数とコミュニティ、作品層の厚さは、他のPCゲーム販売プラットフォームの追随を許さず、それゆえに一強の地位を保っている。
それだけに、最新作をEpic Games Store“でも”販売するのではなく、Steamから脱し準独占で販売するというUbisoftの一歩は、業界にとって大きな一歩と写ることになるかもしれない。同社はほかにも『アサシンクリード』や『レインボーシックスシージ』、『ファークライ』といった人気シリーズを抱えており、これまでPC版はSteamおよび自社ストアを中心に販売してきた。
Epic Gamesには全プラットフォームでプレイヤー数2億人を突破した『フォートナイト』があり、PC版をプレイするにはEpic Games Storeも表示されるランチャーを導入する必要がある。Unreal Engineを利用する全世界の中小デベロッパーを支援する包括的な制度によって、開発からの信頼も厚い。販売タイトルの認可をシステム化するなどして依然として一強を誇るSteam。しかし前述した大ヒットゲームを優先する利益配分にて、小規模デベロッパーの反感を買う動きがあるほか、近年は不透明な審査制度が議論を招いてきた。
さまざまな要因が天秤に掛けられるなかで、今後もPCゲームの販売プラットフォーム界隈では、各社がどう動くのか注目が集まることになるだろう。
文/ishigenn