NetflixやHuluのようなシステムで2017年6月にスタートした、月額10ドルで最新ゲームも遊び放題となるサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」。先行してサービスが始まった「PlayStation Now」や「EA Access」といった同系列のサービスは複数のプラットフォームでサービスを展開しているが、マイクロソフトも今後はXbox以外へのXbox Game Pass提供に前向きのようだ。
マイクロソフトのゲーム事業の指揮を執るフィル・スペンサー氏は海外メディアGeekwireのインタビューにて、「Project xCloud」をXbox Game Passに含める構想を示唆している。2018年10月に発表されたProject xCloudは、スマートフォン上でXboxゲームがプレイできるゲームストリーミングサービスのプロジェクトだ。もしこの構想が実現すれば、サブスクリプションの加入者が『Halo』のようなXbox向けの最新作をスマートフォンやスマートテレビ、あるいはほかのプラットフォーム上でプレイするような風景も一般的なものになるかもしれない。
なお、すでにマイクロソフトは2018年10月の業績報告会にて、Xbox Game PassをPC向けにも展開するプランがあることを明らかにしている。
この他にもGDC 2019にて講演予定のセッションの解説文より、マイクロソフトがXbox Liveについてもマルチプラットフォームでの展開を狙っており、実績やフレンド情報などをプラットフォーム間で共有したいことが明らかとなっている。これが実現すれば、たとえば『Warframe』をNintendo Switchで遊んでいても、Xbox Liveにログインしていればフレンド情報の共有や実績の解除までできるようになると予想されている。
なお、すでに『Minecraft』では他プラットフォームでもXbox Liveアカウントでゲームにログインできるサービスを行っている。これを利用するとXbox上のフレンドの共有だけでなく、プラットフォームの枠を超えたクロスプレイも実現できる。
このようにマイクロソフトはサブスクリプションサービスやゲームストリーミングサービスを通じて、XboxのゲームをXboxだけでなく、PCやスマートフォンでリリースし、Nintendo Switchといった他企業のハードとの垣根も取り払った動きを見せつつある。一方で、Xbox自体のセールスはどうなるのだろうか。スペンサー氏は、コンソール事業とマルチプラットフォームでのゲームサブスクリプションサービスは矛盾するものではないとインタビュー中でコメントした。コンソール事業はお金を儲ける場所ではなく、さまざまなコンテンツを多くの人に届けることが事業の規模を拡大し利益を生むと話している。
実際にマイクロソフトは、2018年第4四半期の決算報告にてXboxコンソールの売上が前年比で19%減ながら、ソフトウェアとサービスの売上は32%増加したと発表している。プラットフォーム事業のみに固執するより、サービスやソフトウェアといったゲームコンテンツ事業としてユーザーに触れるメインの枠組みで、マイクロソフトのエコシステム構築を目指しているようだ。
News from @mattbooty: Microsoft Studios is now Xbox Game Studios. https://t.co/eha2RWfsAz pic.twitter.com/gFkH37tHxU
— Xbox (@Xbox) February 5, 2019
これらの野心的な取り組みを実現するため、まずは自社のソフトウェアの充実をはかるようだ。Microsoft StudiosからXbox Game Studiosとなり、ブランドとしてのXboxを反映し名称を変更したマイクロソフトのゲーム開発部門だけでなく、2018年だけでもObsidian EntertainmentやNinja Theoryなど多数のデベロッパーを買収している。傘下に加えたデベロッパーのゲームであれば、Xbox Game Passへの登録も比較的容易に行えるだろう。
コンソール機を取り巻く状況は、Xbox Oneが発売された2013年より大きく変化しつつある。マイクロソフトは、マルチプラットフォーム化がプラットフォーマーへ利益をもたらす側面もあることに注目しているようだ。2020年までに20億人になると言われているビデオゲーム人口。成長を続けるビデオゲーム市場の全てにリーチするためには、前時代的な独占合戦やプラットフォームならではの特徴は、長所ではなく足かせになるときが近づいているのかもしれない。
ライター/古嶋誉幸