ケモノ×子供×戦略×激重ストーリー。
その独自すぎる路線でファンを獲得しているゲームシリーズが、『戦場のフーガ』です。
あたたかみのあるキャラクターデザインに目がいきがちですが、本作の凄味はストーリーの憂鬱さ。その内容は強烈で、初代『戦場のフーガ』の冒頭から、問答無用で子どもの命を犠牲にさせられる後味最悪の負けイベントが入れられている徹底っぷり。
それは最新作『戦場のフーガ3』でも例外ではなく、今回先行プレイさせていただいたほんの触りの部分だけでも、既に心が折れそうになるほどのダメージを受けました。
私も、鬱展開は非常に苦手とする派閥のひとりです。
しかし、それらを食らい続けてでも遊び続けたくなるような、翔び越えた魅力が『戦場のフーガ』にはあるのです。
その面白さを構築しているのは、魅力的なキャラクターと戦略性の高い戦闘システム。今回プレイした『戦場のフーガ3』でも、それらの要素が変わらずにしっかりと残されていました。
また、本作は過去作を遊んでいないプレイヤーでも楽しめるような配慮が随所にみられるため、ここからシリーズに入ったとしても問題はないでしょう。
今回は、『戦場のフーガ3』の先行プレイをしての感想と、『戦場のフーガ』シリーズを通しての魅力をあわせてお話させていただければと思います。
強いこだわりが感じられる「ケモノ」のキャラクターデザイン
さて、『戦場のフーガ』シリーズを知らない人であったとしても、このゲームをプレイしてまず最初に目につくのは、そのキャラクターデザインでしょう。
本作に登場するキャラクターたちは、“イヌヒト”もしくは“ネコヒト”と呼称される、いわゆるケモノと呼ばれるキャラクター。

やや深い話になってしまいますが、そもそも『戦場のフーガ』シリーズは、開発を手掛けるサイバーコネクトツーの設立当初から展開されている“リトルテイルブロンクス” と呼ばれる広大な世界観の中で繰り広げられている物語。
余談ですが、同じく“リトルテイルブロンクス” の一遍である『テイルコンチェルト』『Solatorobo~それからCODAへ~』などの作品もオススメです。
今回の『戦場のフーガ3』を見ても、そのキュートなキャラクターデザインの良さはそのまま。過去作で魅力的だった部分は損なわれることなく、1と2の物語を戦い抜いた仲間たちが再登場します。
個人的には、マルト、ジン、ハンナ、シーナあたりのデザインが特に好みです。
また、新キャラクターとして、主人公のマルトを連れ去った謎の軍団も登場。この辺もメチャクチャ好みです。かわいいキャラだけでなく、カッコいいキャラも両方楽しめるというのが良いですよね。
本当に。
マジで。
さらに、過去作を未プレイのプレイヤーに向けた、作中に登場する用語やキャラクターを解説してくれる機能があり、これをただ眺めているだけでも楽しめます。
その名もズバリ “ケモペディア” 。
何を今更という感じではありますが、ケモを押し出していることを隠す気が一切ないこのネーミングセンスには脱帽です。
新要素「弱点コンボ」も追加。完成されたバトルシステム
キャラクターに目がいきがちな本作ですが、RPGとしての戦闘システムのクオリティの高さも魅力的な要素のひとつ。初代『戦場のフーガ』の時点で完成されていた戦略性の高いバトルシステムは、3作目においても大きくは変わっていません。
本シリーズの戦闘システムの面白いところは、一般的なRPGのように仲間を集めてパーティを組んで戦うのではなく、物語のカギを握る戦車 “タラニス” が単騎で敵と戦うということ。つまり、タラニスのHPが0になったら一貫の終わりというわけです。
本シリーズにおいて、プレイヤーは、戦車に乗っている特性の異なる子供たちを配置することで、敵軍の車両と対峙することとなります。
そして、この子供たちの配置こそが、本シリーズにおける戦闘の要。彼らはそれぞれ扱うことができる武器の種類や所有するスキルが異なっているため、敵の弱点や場面に応じた運用が求められます。
しかも、一度子供たちの配置を変えてしまうと、その後しばらくの間は配置の変更ができなくなるため、どのタイミングでどこに誰を配置するのかをじっくりと考えて決断を下す必要があります。
「ああしたほうがいいんじゃないか、こうしたほうがいいんじゃないか」と頭を悩ませるこの時間こそが、『戦場のフーガ』をプレイする中での至福のひとときと言っても過言ではないでしょう。
それにくわえて、『戦場のフーガ3』の戦闘では、新たなシステムも取り入れられており、元々高かった戦略性がさらに高まっています。
新要素のひとつとして登場したのが、連続で敵への弱点攻撃を成功させると発生する “弱点コンボ”。このコンボがつながり続けることで、戦車が敵に与えるダメージも上昇し続けていくため、時にはコンボを意識した配置が必要になることもあり、頭を悩ませる時間がより一層増えていくのです。
また、今回の先行プレイでは登場しませんでしたが、過去作の敵や仲間を召喚して手助けしてもらう “アシストシステム” などの新要素もあるため、本作の戦闘の戦略性はかなりのものになっているのではないかと、期待が高まります。
そして、『戦場のフーガ』シリーズの戦闘面における最大の特徴が、戦車の持つ強力な砲撃 “ソウルキャノン”。
使えば敵を一掃できる強力なパワーを持つソウルキャノンですが、その代償は仲間の命。戦車に乗り込む子どもたちの中の誰かが犠牲になることで発動される究極の兵器なのです。
普通の思考回路であれば「誰が使うかっ……!こんなもんっ……!」と感じずにはいられない、まさに最終兵器……なんですが、本作でも最悪の形で強制的にこの兵器を使わされます。
しかも、今回の先行プレイでその場面に出くわすことはありませんでしたが、公式サイトによると、本作では戦況を察して密かに仲間のために犠牲になる覚悟を決めた子どもたちが、プレイヤーの意志とは関係なく、勝手にソウルキャノンの中に入ってしまうこともあるんだとか。
これに近い要素は過去作にもありましたが、やっぱりこういうやり方はえげつないですって。精神的ダメージがデカすぎますって。トラウマになりますって。
こうして、子供たちを誰一人死なせないという大いなる目標を達成すべく、戦車へのダメージを最小限に抑えるために、彼らの配置に頭を悩ませる時間が、さらにさらに増えていくことになるのです。
子どもたちが戦争に巻き込まれていく、激重ストーリー
さて、先ほどのソウルキャノンの設定からもお分かりいただけるかとは思いますが、『戦場のフーガ』シリーズについて話す時に絶対に忘れてはいけないのが、あまりにも重すぎるストーリー。
作品に登場するキャラクターたちの可愛らしさとは裏腹に、憂鬱になりそうなくらい暗いストーリーがシリーズの持ち味であり、今回の先行プレイでも、その部分が嫌になるくらいハッキリと色濃く打ち出されていました。
しかも、そのストーリーの重苦しさは過去作イチ。ソウルキャノンよりも多くの命を必要とするメガソウルキャノンなど、目を背けたくなるようなシーンのオンパレード。
鬱展開の上に鬱展開を重ねて、もうこれ以上気が滅入ることはないだろと思ったところに更に絶望を重ねてくる、鬱展開のミルフィーユ状態。どこまでこっちの気分を下げれば気が済むんですか。なんでよりにもよってここをアッパー調整してくれてるんでしょうか。
本作のキャッチコピー「翔び越えろ。この累々たる絶望を。」に偽りナシです。
とはいえ、今回の鬱ミルフィーユ展開は、今後起こりうる可能性がある未来の中でも最悪の世界線だった場合の顛末です。実は子どもたちは全員生存しているのですが、わずか数十分でメチャクチャ精神的に疲弊しました。
こういう気分が暗くなるような話はかな~り苦手で、特に、かわいいキャラがそういった状況に陥ってしまうシナリオにはなるべく触れないようにして生きてきた身からすると、地獄以外の何物でもありませんでした。
それでも私が『戦場のフーガ』シリーズに強く惹かれ、タイトルをプレイする手を止めることができないのは、これまでにお話してきたようなキャラクターの魅力や戦闘の面白さがあるからこそ。
ケモノ×子供×戦略性×激重ストーリー。本シリーズでしか味わうことのできないマリアージュを楽しむことができる『戦場のフーガ』は、他のゲームにはない確かな魅力を持つ作品なのです。
こういった独自の魅力を持つ本作ですが、今回先行プレイの範囲はプロローグで終わってしまいました。
続きが死ぬほど気になるシーンで物語は区切りを迎え、「何も話が進んでないじゃないかこんなの!」というこちらの叫びも虚しくプレイは強制終了。期待感を高めるだけ高めておいてからの寸止め。そんな……。
そんな本作の発売予定は、5月29日。残り数か月というところですが、今から胸の高鳴りが止まりません。
なお、過去作のストーリーはタイトル画面からも確認可能であるため、『戦場のフーガ3』は、これまでにシリーズ作品をプレイしたことがない方であっても楽しめるようなタイトルだと感じます。
ただ、軽くストーリーに触れた感じだと、『2』はプレイしておいた方がより楽しめるような気もするので、『3』発売前のこのタイミングで、前作たちをプレイしてみるのも良いのではないでしょうか。
もっと言えば、『3』発売と時を同じくして『1』『2』のパッケージ版も発売予定となっているため、こちらを購入してシリーズ作品を一気にプレイしていくのもオススメです。
『戦場のフーガ』は、どのタイトルからでもその世界観を楽しむことのできる良シリーズ。ぜひとも、3つの入口のいずれかから、その世界の中に足を踏み入れてみていただければと思います。