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なぜその男は「小規模PvP」で“強さ”を求め続けるのか? 小勢で強くなっても無価値な宇宙MMOで戦い続ける孤狼のプレイヤーに、ひりつくほどの現場に身を起き続ける理由を聞いた【EVE Onlineプレイヤー取材記】

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※【『EVE Online』プレイヤー取材記】は、宇宙MMO『EVE Online』の歴戦プレイヤーである藤田翔平氏が、同作をプレイするさまざまなプレイヤーたちに取材する連載企画です。


 星雲の瞬きのなかに二十隻の宇宙船が整列し、レフェリーがカウント・ダウンを始める

なぜその男は「小規模PvP」で“強さ”を求め続けるのか? 小勢で強くなっても無価値な宇宙MMOで戦い続ける孤狼のプレイヤーに、ひりつくほどの現場に身を起き続ける理由を聞いた【EVE Onlineプレイヤー取材記】_001
実際の仕合ではない、参考としての画像。「EVE Online- 公式ゲームプレイトレーラー」より。

 無重力の虚空に微弱なシグナルが飛び交い、それぞれのチームの全員が、即興で編み出された勝利への道筋を確かめる。仕合が始まり、パイロットたちがマニューバを始める。

 二百天文単位彼方の太陽光に照らされた二十隻の鋼鉄の怪鳥が、互いの喉元にむけて砲門を開き、アフターバーナーに点火し、ワープ・スクランブルを交換する。その模様は、遠くから見ると、行き先を見失った渡り鳥たちの群れのように見える

 すぐに片が付くこともあれば、十分間の試合時間ぎりぎりまでもつれ込むこともある。一隻、また一隻と、精鋭たちの船が轟沈していく。三次元のグリッドのなかに描かれた二十隻の軌跡が折り重なり、時間によって編まれていく織物となる。

 十分間が経過し、レフェリーが艦種別に割り振られたポイントを計上し、勝者が宣言される。
 彼らのほかには誰もいない、神々の実験場であるUUA-F4コンステレーションのどこかで、大破した宇宙船とそのパイロットの魂、そしてなによりも仕合の相手を称えるかのように、「グッド・ファイト」の言葉が交わされる

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本年のオープン・シリーズの模様。日本代表のPlatinum Sensitivityと、老舗小規模PvPアライアンスDarkSideの仕合。

 これが、アライアンス・トーナメントの仕合である。その名が示す通り、複数の企業によって設立される同盟(アライアンス)が自らのうちから精鋭を選び、選ばれたプレイヤーはその名を背負って戦う

 この宇宙で生きている者なら誰でもその名を知っている巨大企業連合から、この大会のためだけに急造されたペーパー・アライアンスまで、今年は総勢70以上の企業連合がブラケットに名を連ねた。

 大会の歴史は古く、2005年より16年にわたって、中断を挟みつつ、ほぼ一年ごとに開催されている。

※Platinum SensitivityとDarkSideの仕合映像。今回取材するのは、このPlatinum Sensitivityのリーダーである。

 日系コミュニティとアライアンス・トーナメントの関わりは、2015年に遡る。古の企業連合Vox Populi.が日系としてはじめて出場し、24位。その衣鉢を継ぐSAMURAI SOUL’d OUTは以後三年にわたって出場し、2018年の第十六回大会では12位に入賞した。2019年度から大会は休止したが、二年の時を経て、本年より再開されることとなった。

 この記念すべき第十七回アライアンス・トーナメントには、ふたつの日系企業連合が出場している。2012年に設立された老舗、Caladrius Allianceと、本大会のために設立されたペーパー・アライアンス、Platinum Sensitivityである。前者は過日に行われた予選にて惜しくも敗退したが、後者は突破し、本戦にむけて今日も演習を続けている。

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第十七回アライアンス・トーナメント予選番組表。縦長。

 このPlatinum Sensitivityのリーダーが、Kentlarquis氏である。

 氏と筆者とは、もう七年の付き合いになるだろうか。2013年ごろに頭角を現して小規模PvPの第一人者となったが、そのたぐいまれな操船技術にはいつも驚かされてきた。その彼が長年の研鑽を経て、この宇宙でいちばん強いパイロットを決める武闘会に、日系コミュニティの長として出場するのである。

 この原稿はインタビュー記事ではあるが、その体裁は採らない。というのも、筆者自身がこのPlatinum Sensitivityに籍を置き、夜ごとの練習にチームの一員として参加しているためだ。一人称の形式で、徒然と語っていこうと思う。

※公式映像の三分十秒からは、アクティビティとして本作の戦闘の模様が紹介されているので参考にされたい。

取材・執筆/藤田祥平
編集/ishigenn


※この記事は、『EVE Online』をもっと多くの方に遊んでほしいCCP Gamesさんと、電ファミニコゲーマー編集部のタイアップ連載企画です。執筆は同作の歴戦プレイヤーである藤田祥平氏が担当しています。

『EVE Online』における「小規模戦闘PvP」という“異質の遊び方”

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Kentlarquis氏のKillboard(生涯撃墜成績を表すサードパーティー・ウェブサイト)。見る人が見れば分かるが、小規模PvPメインとしてはえげつない成績。

 アライアンス・トーナメントたる催しの性質は、過日に掲載した原稿で詳しく語った。それは要約すれば、新規プレイヤーがプレイをはじめて三ヶ月後に離脱する確率が98パーセントを超えている、非常にニッチなMMOにおける催事である

 くわえて、ここで要求される技術は、同作品の内部の貨幣価値に、ほとんど結びついていない。時にゲームの外にまで聞こえてくる大戦争の趨勢を、一名から数名の小規模PvPで動かすことはできないためだ。

数が圧倒的正義の宇宙戦争が繰り広げられるMMOで「七機のサムライ同士が御前試合のように死狂う銀河一武道会」に参戦した件【『EVE Online』転生】

※日本代表が予選通過を決めた仕合。HereticsとVengeanceがグリッドの中央という「ボクシングアリーナ」に登場し、そののちの序盤のにらみ合いからのアマー帝国巡洋艦Mallerによるベイト、グリッドが乱れてからのロジスティクスへの差し合い、タンク差による勝利。細かいところを言えば、Garmurを堕としたのも大きい。

 記念すべき第十七回アライアンス・トーナメントは、本年11月6日と7日に開催される。日本代表となったPlatinum Sensitivityの仕合の模様はtwitch.tv/ccpと、日本語キャスターのsyouryu Razgriz氏によって生放送される。その日、この銀河系すべてが、大きな尊敬をこめて唯ひとつのグリッドに注目することだろう。

■連載企画 『EVE Online』 転生(完結)

第一回:「9割のプレイヤーが離脱する過酷な宇宙MMO」で企業連合の元会長が初心者に転生しようとしたら速攻身バレして艦隊司令官になった件

第二回:数が圧倒的正義の宇宙戦争が繰り広げられるMMOで「七機のサムライ同士が御前試合のように死狂う銀河一武道会」に参戦した件

第三回:PR企画の展開にどんづまって酒に酔っ払い前世の貯金を使って宇宙艦隊戦を始めてみたら帝国軍と国連軍に挟撃されて全滅してしまった件

■連載企画 『EVE Online』 プレイヤー取材記

第一回:現実世界の過労でうつ病をわずらった「元社長」が、宇宙MMOの世界でふたたび企業の経営者を二度も務めた話。58歳のプレイヤーになぜゲームをプレイし続けるのかを聞いてみた

第二回:なぜその男は「小規模PvP」で“強さ”を求め続けるのか? 小勢で強くなっても無価値な宇宙MMOで戦い続ける孤狼のプレイヤーに、ひりつくほどの現場に身を起き続ける理由を聞いた

なぜその男は「小規模PvP」で“強さ”を求め続けるのか? 小勢で強くなっても無価値な宇宙MMOで戦い続ける孤狼のプレイヤーに、ひりつくほどの現場に身を起き続ける理由を聞いた【EVE Onlineプレイヤー取材記】_015
1991年大阪府生まれ、文筆家。
Twitter : @rollstone
Website : https://github.com/rollstone1/fujitashohei/wiki
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ニュースから企画まで幅広く執筆予定の編集部デスク。ペーペーのフリーライター時代からゲーム情報サイト「AUTOMATON」の二代目編集長を経て電ファミニコゲーマーにたどり着く。「インディーとか洋ゲーばっかりやってるんでしょ?」とよく言われるが、和ゲーもソシャゲもレトロも楽しくたしなむ雑食派。
Twitter:@ishigenn

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