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“ガンダムを知らない人が楽しめる”ことを目指すFPS『GUNDAM EVOLUTION』。そのゲーム性には「強制大縄跳びの恐怖を和らげたい」という“祈り”も込められていた…!?

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  「ガンダムが大地に立った」……もとい、『機動戦士ガンダム』が初放映されたのが1979年。誕生から40年以上が経過した2023年の今なお、「ガンダム」の世界は着実に拡大し続けている。

 その半世紀にも近い年月の間『ガンダム』というシリーズは続き、近日では『水星の魔女』も大いに話題を巻き起こした。アニメ、小説、マンガ、プラモデルなどなど数えきれないほどのコンテンツが生まれてきているが、筆者的に「ガンダムのゲーム」はその中でも欠かせない要素の一つである。アクションからシミュレーションまで、幅広く世に送り出された歴代のタイトルは、多くのガンダムファン、ゲームファンを虜にしてきた。

『GUNDAM EVOLUTION』タイトル

 そして、その「ガンダムゲーム」の新作は彗星のごとく現れた。そして「ガンダムゲーム」からしばらく離れていた筆者を再び、人型兵器が闊歩する戦場へと呼び戻した。その名は『GUNDAM EVOLUTION』、通称「ガンエボ」だ。近年のガンダムゲームにしては珍しい“FPS”で、ゲーム性を端的に表現するなら“チームシューター”である。

 本作をプレイした感想は人によって異なるだろう。歴戦のFPSゲーマーには「ガンダム版『オーバーウォッチ』じゃん」という方もいるだろうし、ガンダムファンからすれば「出てくる機体がマニアック過ぎない?」「ガンダム要素薄くない?」と思った方もいるに違いない。筆者の頭の中にも様々な思考がファンネルのごとく飛び交ったが、それらをひっくるめるなら「今まで見たことがないタイプのガンダムゲーム」である。

 「今まで見たことがないタイプのガンダムゲーム」。『GUNDAM EVOLUTION』のプレイ中に感じる違和感の正体は、本作が“ガンダムのゲームっぽくない”ことだ。

 正確には「ガンダムという強力無比なIPでプッシュする気がなさそう」とでも言うべきだろうか。マッチプレイ中を含む、全体的なUIにも“ガンダムゲームっぽさ”がないし、俗にいう“必殺技”や“覚醒”を使った時のカットインもない。歴代主人公機が勢ぞろいといった機体ラインナップの派手さもない……。

 「あえて“ガンダム要素”を削っているのでは?」と思わせるほどで、どうもゲーム自体が纏う雰囲気が従来のタイトルとは大きく異なっている。ただ、その一方で「これ絶対開発チームに相当詳しいガンダムオタクがいるよ」と思わせるポイントも数多く感じられる、何とも奇妙な作品なのである。

 というわけで、どうにもこうにも気になって仕方がないため、『GUNDAM EVOLUTION』開発チームに話を伺うことにした。今回、快くインタビューに応じてくださったのは、プロデューサーの丸山和也氏、バトルディレクターの穂垣亮多氏のお二方だ。

プロデューサーの丸山和也氏、バトルディレクターの穂垣亮多氏
写真左から丸山和也氏と穂垣亮多氏

 結論から言うなら、筆者の「あえて要素を削っているのでは?」という考えは半分当たっていて、半分外れだった。なぜなら、そもそもゲームが作られる段階から、従来の作品とは真逆の方向を向いて開発されていたからである。

 ゲームの成り立ちから「えっ!それ言っちゃっていいの!?」という内容まで、非常に興味深い話を聞くことができたので、ぜひ最後までお付き合いいただきたい。

文・聞き手/夏上シキ
編集・聞き手/実存久田晴


新時代のガンダムゲームはいかにして生まれたのか

──本日はよろしくお願いいたします。まずはおふたりのプロフィールからお伺いしてもよろしいでしょうか。

丸山和也氏(以下、丸山氏)
 1999年にバンダイに入社後、携帯ゲーム機の『ワンダースワン』の部署に配属されました。当時からゲームプロデューサーを担当させていただいていたんですが、初めて携わったガンダム作品はWindows向けのネットワークシミュレーション『ガンダムネットワークオペレーション2』になります。

 その後、バンダイナムコオンラインが設立されてからは『機動戦士ガンダムオンライン』(以下、ガンダムオンライン)、『ガンダムジオラマフロント』(以下、ジオラマフロント)などのタイトルにプロデューサーとして携わらせていただいて、現在は『GUNDAM EVOLUTION』のプロデューサーを担当しているという形です。

穂垣亮多氏(以下、穂垣氏):
 自身は元々『クロスファイア』というFPSタイトルで世界大会に出場したりしていた競技層プレイヤー……最近の言葉でいうと“プロゲーマー”でしょうか。そのような活動をしていたのですが、そこから就活をして2017年に新卒で入社しました。その後、『GUNDAM EVOLUTION』に携わらせていただいています。現在はバトルディレクターとして、主にゲーム内のバランス面などを担当しています。

穂垣氏の経歴
穂垣氏はオンラインFPS『クロスファイア』で活躍したクラン『Vault』の元メンバー。当時は穂垣氏の他に、林祐人(YamatoN)氏、yukishiro氏といった、現在もeスポーツシーンの最前線に携わる面々が所属していた。

──本作はそもそも「ガンダムのゲームを作る」というコンセプトから始まったものなのか、それとも「バンダイナムコとしてPvPのオンラインゲームを作る」というコンセプトから始まったものなのか、どちらなのでしょうか。

丸山氏:
  「次の新たなガンダムのオンラインゲームを作る」というコンセプトからスタートしたものです。当時の試作であったり技術研究であったり……というところが発端でしょうか。

 「次のガンダムのオンラインゲーム」というのを考えた時に、チャレンジとして「ワールドワイドに展開する」というミッションが大きくありまして。『ガンダムオンライン』も中国、台湾、香港といったアジア地域ではサービスを行っていたのですが、より幅広い地域にはチャレンジが行えていなかったので、そこを含めてターゲットにしていこうと。

 とくに欧米地域ではガンプラであったり、アニメーションなどから『ガンダム』という作品に触れていただく機会は増えているのですが、まだまだ浸透はしていないというのが現状です。そこで「ガンダムのゲーム」を通じて、『ガンダム』という作品をより海外に広めたいという思いもありました。そうした検討の中で、FPSというジャンルが上がってきまして、現在に至ります。

──新たなターゲット地域として選んだ、北米や欧州といった地域からの反応はいかがでしたか。

丸山氏:
 我々もいきなりこのタイトルを発表したわけではなく、まずは国内でクローズドベータテストを開催し、その次に国内と北米を対象にしたネットワークテストを行った経緯があります。その際のフィードバックとしては、ガンダムをすでに好きな方からは「海外でも遊べるガンダムのゲーム、待ってました!」というような反応をいただくことが多かったのですが、逆に「ガンダムは知らないけどFPSだから遊んだ」というようなプレイヤーの方もおられたんですね。そうした方々からのフィードバックも非常に良く、我々の目指していたところを受け取ってもらえたかなというのが体感でした。

 「企画段階から欧米を意識したガンダムゲーム」はほぼ前例がなく、今まではやはり多くのお客様がいる国内だったり、アジアを主としている部分もありましたので。

──逆に国内からの反応はどうだったのでしょう。

丸山氏:
 「もう少し原作に近づけなくていいのか」というような声もいただきました。我々としてはワールドワイドを狙っているので、“あえてそうしている”という部分もあります。

──大変失礼な質問で恐縮なのですが、市場のいちユーザーからすると「ガンダムのオンラインゲーム」といえば「課金しないと実質的な戦力が揃わない、もしくは途方もない時間がかかる」という印象が強くて。

 本作は課金要素がキャラクターの早期入手や装飾がメインと、ペイトゥウィンではないマネタイズですが、導入にあたっての課題などはあったのでしょうか。

丸山氏:
 現在もサービス中のタイトルなので、完全に課題を解決できているというわけではないです。今も手探りでやっているような状況ですが、同ジャンルの他社さんのタイトルや、昨今の時代の流れは意識しています。

 『ガンダム』ユニバースの様々な機体の設定を再現して出すと、どうしても性能差、ゲーム内でいう「強い弱い」が出てしまって、仰っていただいた通りに「いかに強い機体を手に入れるか」という状況になってしまう。それが海外で広まらない要因の一つとも認識していましたし、そもそもガンダムを知らない方からすれば、「この機体はどういうスペックで、どういう特徴を持っているのか」も分からないわけですよね。

──確かに。

丸山氏:
 なので、各機体が持つ特徴は活かしつつ、全体的な強さは可能な限り均一化する方向に振り切っています。機体ごとの性能差が少ないこの状況に違和感がある原作ファンの方もおられるとは思うんですが、ゲームを楽しんでいただくための意図的なバランスです。

なぜ「6vs6のFPS」なのか?

──なるほど。少し話を戻しますが、先ほどのお話からすると、本作の初期段階はFPS作品ではなかったのでしょうか。

丸山氏:
 試作期間はかなり長くて、現在の“FPSで6vs6”という形になるまでは時間を要しました。最初はTPSだったんですよ。

──ガンダムのアクション系ゲームタイトルは過去の作品を見ても、全体的にTPSのものが多い気がします。

丸山氏:
 やはり「自分が操作しているモビルスーツを見たい」というところからも、TPS作品が多かったという部分はあります。しかし、それでは本作の差別化ができないですし、昨今のeスポーツ、競技シーンの盛り上がりという点もあって「FPSにチャレンジしよう」となりました。

 双方にメリット・デメリットがありますが、FPSはやはり「自機の姿が見えない」というのが大きなデメリットです。たとえば自機の外観をカスタマイズしても、プレイ中はほぼ見えなくなってしまうわけで。

──逆にメリットはどういった点なのでしょう。

丸山氏:
 スピード感であったり、臨場感といった部分です。同じスピードで動かしたとしても、FPSとTPSでは体感速度が大きく違うんですね。総じて没入感という点では明確な違いが生まれることが、検証の中でハッキリと確信できました。

 そこに競技性であったり、6vs6のチーム戦という面を考慮すると、FPSの方が面白いだろうという判断です。ただし、機体の変形であったり、Gマニューバの使用時など、“機体の個性を象徴するシーン”はTPS視点で全身を見せる仕様を入れています。

ペイルライダーのGマニューバ「HADES」
ペイルライダーのGマニューバ「HADES」。まさに機体の個性を象徴するシーンだといえる

──なるほど。FPS視点とキャラクター(機体)スキンって、正直あまり相性がよくないよなぁとは常々思っていました。

丸山氏:
 売る側としては、間違いなく“本人から見えていたほうがいい”んです(笑)。もちろん、他人に見てもらいたいという部分もありますが、やはり自分から愛機が見えていたほうが嬉しいじゃないですか。ただ、そのデメリットより、ゲームプレイ面でのメリットのほうが上回るだろうと。

──なるほど。「相性があまりよくない」なんて話をしつつ、更にほぼ見えないというハンデはありますが、“所有欲”みたいなものがあるのも事実ですよね(笑)。見えないし、能力に影響があるわけでもないけど、「持ってるだけで嬉しい」「使ってるだけで嬉しい」というような。

丸山氏:
 はい(笑)。もちろんコレクション要素としてのアイテムもそうですが、やはり他プレイヤーに見せたいというニーズもありますのでそちらも充実させていく方針です。

 “知っている人だけ分かる原作シーンを再現したエモート”は一例ですが、そうした部分で原作ファンの方の満足感を高めていきたいと思っています。一方で「ガンダムはよく知らないけどFPSだから始めた」というような方に手に取っていただけるアイテムも必要ですし、そこを両軸で進めていくのは開発として意識している部分です。

 一方で、過去のガンダムゲームではこのようなことはやってきていないので、サンライズさんとも相談しながら「ここまではやっていいよね」「これはやらない方がいいよね」という感じで、今も手探りで進めていますね。

『GUNDAM EVOLUTION』ガンダム
「FPSが好きな人」と「分かる人には分かる」アイテムの両立

──ゲームシステムについてお聞きできればと。率直に言いますと、「全体的に『オーバーウォッチ』に近いよね」というような反応が市場からあったと思うんです。実際にTwitterでは“ガンダムOW”なるワードがトレンドに入っていたりもしました。この仕様は何か明確な目的があるのか、それとも試作を重ねていく内に辿り着いたものなのでしょうか。

丸山氏:
 今回のジャンルを作るにあたり、プレイヤーレベルが競技層とカジュアルなプレイヤーでは差が激しいと考えましたので、双方のプレイヤーに満足していただけるゲームにしなくてはならないと考えました。

 そのため、開発スタッフも穂垣をはじめとする元プロゲーマーや、それに近いスタッフにも入ってもらっています。そうした環境の中で『オーバーウォッチ』が好きなスタッフも非常に多く、どうしても影響を受けていたり、参考にしている箇所はありますね。

 とは言いつつ、他のタイトルも“AAA”と呼ばれるようなタイトルはすべて研究しています。我々としては「国産でこのジャンルに挑戦する」という意味で、まだまだ経験が豊富ではないと捉えていますので、スタッフ自身の経験も活用して開発を行っています。

──開発自体はいつ頃からスタートされたんでしょうか。

丸山氏:
 試作、技術研究といった少人数でのチームから数えれば2015年頃です。その時はFPSではなく、先ほど述べさせていただいたようにTPSでしたね。現在の形に落ち着いたのは2018年の3月頃だったと思います。それまではブースト方法も大きく異なっていたり、もっと重厚感のある操作感も試していたりしていて。

──まったく異なるゲームになっていた可能性もあると。では「6vs6」のチームはどのような経緯を経て採用されたのでしょう。

丸山氏:
 それこそ「9vs9」とか、多いものだと「18vs18」などもテストしました。その中でチームで協力しあうという要素であったり、一人あたりの責任のバランスであったりを検討し、最終的に「6vs6」という仕様になっています。

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ライター
『アマガミ』に脳を破壊された結果、フリーランスライターに。FPSやTPSをメインに遊ぶトリガーハッピーだが、ノベルゲーやレトロゲーも好む雑食ゲーマー。美味しいご飯とお酒もゲームと同じくらい好き。
Twitter:@Shiki_Natsugami
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a
ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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