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元パチプロ、ボロ負けした結果ゲームクリエイターになり、左半身が動かなくなる重病を乗り越えてインディーゲームを作る。『ちびロボ!』『城ドラ』を手がけた森山尋氏の波乱万丈すぎる半生を聞いてみた

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思い出すだけでも涙。ファンの子どもが貯金箱を全部出した、クラウドファンディングのエピソード

──そのPICOTYで作られた『モンスタークリエイト』は、お話を聞く限りだと完全に自己資金で作り切ったタイトルなのでしょうか。

森山氏:
そうですね。ただ、追加要素の開発や品質の向上などを目的にしたクラウドファンディングを今年の1月、CAMPFIREさんで実施しました。

クラファンを始めた時は本当に「1円も入らないのでは」と不安だったんですけど、本当に多くの方からご支援をいただきまして。それもお金だけじゃなく、熱い応援メールもたくさんいただいたんです。それが本当、涙が出るほど嬉しかったですし、エネルギーを貰えましたね。

あと、『モンスタークリエイト』のクラファンの時には衝撃的なことがあって……。先ほども言ったように、始まった時はものすごく不安だったんです。でも、いざはじめてみたら、いきなり100万円の支援が入ったんですよ。

『モンスタークリエイト』森山尋氏インタビュー:パチプロ出身ゲームクリエイターの波乱万丈すぎる半生に迫る_008
※画像は2024年6月時点のものです。
(画像はCAMPFIREより)

──え、始まって間もなくですか?

森山氏:
はい。最初は「ケタを間違えているんじゃないのか?」と思いました。けど、本当にその金額が入っていまして、震えるほど驚きましたし、ユーザーさんからのお金に対する重みを強く感じました。

あと、それほどの金額を入れていただいたひとりが、昔から僕のゲームを家族で遊ばれている方だったんですね。元々、『城とドラゴン』などをたくさん遊んでいただいていて、『モンスタークリエイト』を作っていると知ってからもすごく期待してくださり……。BitSummitの当日には子どもさんと一緒に来てくださったんですね。

──森山さんと、森山さんが作られてきたゲームの熱烈なファンだったんですね。

森山氏:
本当に僕が作ったゲームを何回も周回してくれて、「すっごい面白いです!」って言ってくださって。それでクラファンが始まった時、お子さんたちがお小遣いを貯めた貯金箱を全部親のところに持ってきて、「モンスターコース【※】を買ってください!」って言ってくれたというんですよ。

※『モンスタークリエイト』のクラウドファンディングにおけるもっとも高額(100万円)の支援コース。

──え!?じゃあ、100万円って金額は子どもたちが出したものだったんですか……!?

森山氏:
いや、さすがに子どもたちには100万円って数字の大きさが分からないだろうし、そのお金だけじゃ足りなかったと思うんですけど、そのような気持ちを持って僕のゲームを応援してくれていたのが本当に……嬉しかったですね。最終的には足りない分を親御さんが補って入れてくれたようなんですけど、それほどの金額を入れてくれるほど、僕のゲームに期待してくれているというのが……。

……すみません。まさか話していて泣くとは思わなかった……(笑)。

──いやぁ……しかし、すごいです。それほどお子さんたちは森山さんの次のゲームに期待されていたんですね。

森山氏:
本当に熱い思いを込めたメッセージを頂きまして……今まで頑張ってきた甲斐があったと思いましたね。「ああ、自分が今までやってきたことは間違っていなかったんだな」と、本当に自信を持てたと言いますか……。

もちろん、これはいま応援していただいているユーザーの皆さんに言えることですが、本当にありがたく感じています。感謝してもしきれない、感謝の言葉しか出てこないですね……。

親子や友達と安心して遊べる、基本無料のゲームをスマートフォンで作りたい

──『モンスタークリエイト』の宣伝なんかは森山さんおひとりでやられているんですか?

森山氏:
ええ、メディアの方や知っている方に頭を下げて「扱ってもらえませんか?」とやっています。まあ、昔の仲もあるんですけどね。ただ、メディアだと、知り合いの人たちが編集部の仕事から離れている方が多かったりして、なかなか順調にはいかないこともあるんです。

とは言え、頭を下げるのは簡単ですし、なんといっても下げるだけなら無料ですし(笑)。

──(笑)。

森山氏:
まあ、広告も少しずつ始めていくんですが、すごく親身に、しかも割安でやっていただけることが多くて。もちろん、儲かったらちゃんと払うことありきなんですが、「森山のことが好きだから応援したい」という声をいただいています。

本当にあらゆる人が助けてくれて、知恵に知識、技術を教えてくれました。「これをもう1回やれ」と言われても、難しいと思うぐらい幸運なタイトルになったと思います。

だから、このゲームはきっととても運がいいタイトルなんだろうと思いますね。それに今、遊んでいただいているユーザーの方々が“あったかい”んですよ。これが今までは本当、考えられなかったことでして。

──励ましのメッセージを送ってくれるとか、そういった感じでしょうか。

森山氏:
そうですね。緊急メンテとか、これまでは実施すると大体文句を言われがちでしたけど、そんなことがないんです。「もうおじさんなんですから、休んでください……」「無理しないで」「ちゃんとご飯を食べて」みたいな感じですよ。それがもう、本当にあったかくて。DMも昔は暴言が多かったですけど、今はあったかいものばかりです。

本当にこのタイトルは愛されているんだなと思いますね。遊んでくれた人の心の中に残るゲームになるのではと、徐々に感じてきています。もちろん、まだ全然足りていない部分もあるんですけど、まずはスタートラインに立ててホッとしていますね。

それに運営系のゲームって、「ユーザーから文句を言われながらやる定め」みたいなところがあると思うんです。

──ありますね……。

森山氏:
なので、こういう応援されながらやる感情を続けたいと思っていまして。あと「基本無料」というフォーマットを毛嫌いする方も出てきている時代なので、そこへの提案というわけではないですが、「安心して子どもに遊ばせられるゲームがあることを伝えたい」という思いがあります。

──それは具体的にいうとどのようなお考えなのでしょうか……?

森山氏:
「スマートフォンのゲームは怖い」、「ガチャに課金し過ぎたから辞めた」という方はたくさんいて。僕自身はソーシャルゲームを売っていた側の身分ですけど、だからこそ逆に「基本無料のゲームには危ない面もあるんだよ」と言わなきゃいけないのかなとも思っているんです。もし『ドラゴンポーカー』を作っていた時に息子がいたとして、無茶な課金を繰り返していたら絶対やらせないですからね。

ただ、基本無料で始められるのは、ブランドがない会社にとっては大きな魅力で。「遊んでもらって楽しければお金を払ってもらえる」というシステム自体は本当に素晴らしいものだと思うんです。これをもう一度、素晴らしいものに戻しませんか、というものですね。

──確かに基本無料となりますと、ガチャが完全なビジネスとして定着してしまったところはありますね。

森山氏:
もちろん、どんどん課金してくれる人が悪いというわけではありません。けど、無課金でも不自由なく遊んでもらえる、「安心して子どもに渡せるスマートフォンゲーム」もあっていいんじゃないのかと、示したい気持ちがあるんですね。

僕自身、基本無料に対しては悪いイメージがありませんし、スマートフォンという世界で一番売れている、なんだったらPCより売れているゲーム機を愛していますので。

僕はムキになってゲームに高額のお金を費やしたり、多大な時間を使う必要はないと思っています。なので、僕のゲームはたくさんあるエンターテインメントやコミュニケーション手段のひとつとしてあって欲しい。まさに親子や友達と安心して遊べるゲームをスマートフォンで作りたい。そんな思いを『モンスタークリエイト』には込めているんです。

『モンスタークリエイト』森山尋氏インタビュー:パチプロ出身ゲームクリエイターの波乱万丈すぎる半生に迫る_009

──熱いですね……。

森山氏:
いいことばかり言っているように見えますけど、本気なんです。医者に死を宣告されそうになったからこうなったんですよ。「あれ?もしかして、あと1本くらいしかゲームを作れないのかも?」と。実際、若くして亡くなられるゲームクリエイター、漫画家、映画監督の方って結構いらっしゃいますから。僕も結構な働き方をしてきたので、長くはないと思っています。

そう考えると、恥ずかしくないものを作りたい気持ちになるんです。その思いはユーザーさんにも伝わっているみたいで、そこを応援していただいているのかもしれません。

──ただ、インディーゲームだと基本は買い切り型のものが多く、運営型の作品はなかなか大変なイメージがあります。特にスマホは滅多に成功する作品がなく、まだSteamの方が勝ち筋があるくらいな印象ですが……。スマホの運営型インディー作品がここまで減ってしまったのって、どういう背景があるんでしょうかね。

森山氏:
やっぱり、みんな厳しい現状を目の当たりにして諦めている風潮はありますね。運営型で成功させようと思えば運営費も宣伝費もそれなりにかかりますし、確かに厳しい側面があるとは思うんです。

ただ、宣伝費がなくても無料ランキングで8位まで行ければみんなにチャンスがあるはずでは……とも思いますかね。僕らとしては、もし8位に行けなかったら「無理でした」と言おうと考えていたんですけど、実際のところはうまくいってしまい、「いや、まだまだ可能性はあるんだな……」と。

世間ではスマホもSteamも今はレッドオーシャンと言われていますけど、実はそれも嘘かもしれないって感じています。そもそも、みんなが同じようなことで勝負しようとしているからこそ、レッドオーシャンと呼ばれているんじゃないかと思いますね。同じ列車に満員状態で乗っているからこうなっている気がして。だったら違う列車に乗ればいいのでは、と少し思い始めています。

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。 元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999

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