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23年前から変化した“現代のパーティゲームとしての在りかた”とは? 「お邪魔要素」や「逆転要素」をふんだんに取り入れた『スーパーモンキーボール バナナランブル』開発陣が大事にしたのは「プレイヤーの密度感」だった

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逆転しやすく、多くの人にチャンスがあるオンライン対戦

──ここからは、今作の目玉となっている新モードの「バトルモード」についてお聞きしたいです。全部で5つのルールがありますが、それぞれの楽しみ方や魅力を教えていただければと。まず、「レース」はどのようなルールなのでしょうか。

髙畑氏:
「レース」はボールを転がしてゴールを目指すという、初めて遊ぶ人でもすぐにわかるシンプルなルールになっているので、『スーパーモンキーボール』シリーズ初体験の方が最初に遊ぶのにピッタリかなと思います。

なにもギミックがない状態でのレースですと、勝てる人が限られてしまいやすいため、なるべく順位変動が起きやすく多くの人にチャンスがあるようなバランス調整をじっくりと考えました。

──多くの人にチャンスがあるバランス調整とは具体的にどのような?

髙畑氏:
たとえば、「コース上のお邪魔アイテムが時間経過でなくなり、遅れているプレイヤーが進みやすくなる」「順位の高いプレイヤーはコースの外側を大回りして進むなか、遅れているプレイヤーはコースの内側をショートカットのように走れるようになる」などです。

ほかにも、コース上で拾ったアイテムを使って先行している人を邪魔できます。左スティックでステージを傾けて進んでいけばゴールできますから、気軽に楽しんでいただければと思います。

23年前から変化した“現代のパーティゲームとしての在りかた”とは? 『スーパーモンキーボール バナナランブル』開発陣インタビュー_013

──次は「バナナコレクター」について教えていただけないでしょうか。

髙畑氏:
「バナナコレクター」は、空から降ってくるバナナを集めて、たくさん集めた人が勝利というルールです。ステージは広く、バナナもたくさん落ちてくるので、初心者の方でもバナナを拾える機会は多いです。

ランダムで出現する大量のバナナが降ってくる特殊な雲の下に陣取れるか、普通のバナナよりも得点が高い房バナナを拾えるかなどは、運要素のひとつとして関わってきます。

さらに、残り時間が30秒を切るとフィーバー状態になって、房バナナがたくさん降ってくるようになりますし、ラスト10秒になるとバナナが大量にバーーッと降ってきます。

──ものすごい量のバナナが降ってきていますね(笑)

髙畑氏:
後半になればなるほど逆転要素が入ってくるわけです。

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──続いては「ボムパニック」について教えてください。ちょっと名前が不穏なのですが……。

髙畑氏:
「ボムパニック」は、その名の通り、相手に爆弾を押し付けあうルールです。

──これは気心が知れた友人どうしで遊ぶと盛り上がりそうです。鬼ごっこに近いイメージでしょうか。

髙畑氏:
そうですね。食うか食われるかの戦いになるので(笑)。

制限時間が過ぎた時に爆弾を持っていなかった人はポイントをゲット。全部で5ラウンドあって、10点、15点、20点、25点、30点と、ラウンドが進むごとに獲得できるポイントも増えていきます。

──大きな逆転要素があって、最後のラウンドまで勝負が白熱しそうですね。

髙畑氏:
で、爆弾を持ったままタイムアップすると……こうなります。

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鈴木氏:
綺麗な花火ですね。

髙畑氏:
こうなると、ポイント獲得は0です。

鈴木氏:
負けたときにストレスを感じる方がいらっしゃるので、演出面を工夫してみたんです。負けた時に花火みたいに打ち上げられたら、ちょっとは気が紛れるかなと。

髙畑氏:
『スーパーモンキーボール バナナランブル』の全体的な見せ方として、「負けたのでダメだ」ではなく「打ち上げられちゃったー、ハハハ」みたいな、たとえゲーム的には負けたとしても笑いあえて楽しめる雰囲気を作りたい思いがありました。

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──4つ目は「ゴールハント」。次はこのルールについて教えていただけますか。

髙畑氏:
ここまでは個人戦でしたが、「ゴールハント」はチーム戦になります。

坂道になっているコース上に、10点、20点と数字が書かれたゴールがあり、そのゴールを通って点数を獲得するのが目的です。ゴール後は坂の上からリスタート。制限時間が終了するまでにチームで何点とれるかを競います。

──チーム戦となると「他の人に迷惑かけないかな……?」と、慣れていない状態で参加するのに躊躇しがちですが、ゴールに向かって転がっていくシンプルなルールなので、始めたての方でも遊びやすそうですね。

髙畑氏:
時間経過でランダムなゴールがボーナス状態になり、通常より多くの得点が獲得できるようになります。ボーナス状態のゴールがどこに出るのかはランダムなので、状況を見て臨機応変に目指すゴールを切り替えていくのが大事だと思います。

そして、このルールにもひとつ大きな逆転要素があります。プレイヤーがゴールすると、そのゴールがそのチームの色に変わるんですが、タイムアップ後にそのチームの色のゴールの数×50点が各々のチームに入るようになります。

──なるほど、陣取りの要素もあるんですね。

鈴木氏:
残り時間が少なくなってきたら、キープできていないゴールを埋めに行くのか、果敢に攻めて100点を取りに行くのかっていう駆け引きができるようになっています。初心者の方の場合、とりあえず10点のゴールをキープしにいくことで、チームに貢献ができると思います。

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──最後は「ロボブレイカー」、このルールはどのような遊びかたなんでしょう?

髙畑氏:
『スーパーモンキーボール』シリーズの醍醐味のひとつとして、加速に加速を重ねて「高速で移動できる」というものがあるんですが、その醍醐味をアドベンチャーモードで堪能するのって難しいんです。すぐにステージから落ちてしまうので。でも、「ロボブレイカー」ではステージから落ちる心配がありません。

加えて、ステージ各所にスピードアップできるプレートが設置してあり、加速できます。その勢いのままロボットにぶつかって、ロボットを破壊して得点を稼いでいくのが目的です。

──これはすごく気持ちよさそうですね。

髙畑氏:
勢いよくぶつかるほど得点が高くなるので、うまく加速してロボットを破壊していきたいですね。

チーム内で一定数のロボを倒すと、ボーナス状態に入ってさらに高得点を獲得できるチャンスがあったり、ラスト15秒になると高得点ロボが出現したり、チームでの協力あり、逆転要素あり。複雑なルールも操作もないので、誰でも気軽に楽しめるのではないかと思います。

──確かにルールも簡単ですし、基本的に「転がす」だけなので気軽に参加できますね。

髙畑氏:
新しいお客様には『スーパーモンキーボール』そのものに慣れていただきたい思いがあり、これらのルールはすべて「転がす」という操作だけで遊べるようになっているんです。

そのため、前作にあったミニゲームは今作ではあえて入れませんでした。アドベンチャーで上達した腕がそのままバトルでの上達につながる、その逆も同様になるように意識しました。

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初心者の方には「クリアする達成感」を得てもらいたい

──長く続いているシリーズの新作ですと、過去作をプレイしていない人から敬遠されやすい部分もあるのかなと思います。開発を進めるなかで工夫されたことがあれば、教えていただけないでしょうか。

鈴木氏:
登場キャラクターを入れ替えたり、新要素の16人オンライン対戦を導入したり、全体的にリニューアルすることで、完全新作であることを強く打ち出すというのは意識したことです。

髙畑氏:
ほかにも、このゲームを初めてプレイする方が、躓かないように補助輪的な役割としてアシスト機能は手厚くなっています。

前作から大きく変わったのは、「スローモーション」機能をなくして、失敗したところをすぐにリトライできる「巻き戻し」機能を実装したことですね。

──「スローモーション」機能の代わりに「巻き戻し」機能を実装したのにはどのような理由が?

髙畑氏:
「スローモーション」機能は、使用することで全体の動きが遅くなって細かい操作が可能になります。この機能を使えばステージをクリアしやすくなるのですが、通常時の操作が上達するものにはなっていないんですよね。

私たちとしては、「クリアする達成感」を得てもらいたいと考えています。ですので、スローモーションは廃止にして、最終的には通常速度でクリアしてもらえるよう、その上達に繋がってほしいという思いから生まれた機能になっています。

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──確かに、失敗したところを何回でもリトライできるので、上達しそうです。

髙畑氏:
細かい部分にはなるのですが、前作までは、ステージから落ちてしまうとリプレイでその瞬間を流す演出がありました。ただ、「落ちる瞬間を何回も見させられると心が折れる」っていう声がありまして……今作ではオプションでこの演出のオンとオフを切り替えることができるようにしました。

──これで何度も失敗を重ねられますね(笑)。

鈴木氏:
過去シリーズを遊んだ方にしか伝わりにくい部分ではあるのですが……今作ではカメラ操作の速度がデフォルトでかなりマイルドになっています。その点も初めて触る方にとって遊びやすい調整になっていると思います。

髙畑氏:
前作まではカメラ操作の速度がかなり早めでして、今作では「クイック」設定が前作に相当するスピードになっています。

鈴木氏:
シリーズに慣れてる方ですと「クイック」のほうが手に馴染むかもしれませんが、初心者の方はまずはデフォルトの速度で慣れていって頂ければと思います。

──初心者へのお助け機能の充実具合がすごく伝わってきました。加えて、今作では新機能として「スピンダッシュ」が実装されていて、こちらはどちらかというと熟練者の方向けの要素なのかなと。

髙畑氏:
そうですね。「スピンダッシュ」は、とくに熟練者の方の遊びかたに深みを持たせてくれる新アクションになっていると思います。

鈴木氏:
今作にはオンライン対戦があるので、企画開始当初から「ユーザーが介入できるテクニック」を増やしたいと考えていました。

『スーパーモンキーボール』シリーズの魅力は、ステージを傾けて転がすシンプルさなのですが、それゆえにユーザーが瞬間的に介入できる要素がありませんでした。ですので、ゲーム内に影響を与えるワンアクションを追加したいなと。

操作もシンプルで、あくまで転がる延長線上にある効果ですが、「スピンダッシュ」のおかげで、遊びの幅が広がったと思います。

プレイする方にはとにかく叫んでほしい

──もう少しで発売日を迎えるわけですが、鈴木さん髙畑さんおふたりの業務としてはひと段落しているのでしょうか。

髙畑氏:
いえ、サーバーの設定や監視体制などの最終準備を今まさにしている最中です。正直なところ、ひと息つく間もないくらい忙しいですね。

鈴木氏:
昔の家庭用ゲームの場合は、マスターアップが終わるとひと区切りがついたんですが、今作含めて最近のゲームの場合は、アップデート、運営、ネットワーク、追加DLC……など、発売してからもさまざまな展開があるので、「作って終わり」というわけにはいかないんですよね。

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──ここからが本番というわけですね。プロモーションも含めて、『スーパーモンキーボール バナナランブル』発売後の動きについて、お話しできる範囲でお教えください。

鈴木氏:
いろいろ仕込んでいるのですが、お話できる範囲ですと、6月30日【※】ににじさんじさんのライバーが16人集まってのカジュアル大会が配信されます。ぜひとも、ライバーさんたちの楽しそうに遊んでいる姿を見てもらいたいなあと思います。

※インタビューは発売前に実施。

──これは楽しみです。現代において、オンラインで大人数でわちゃわちゃ遊ぶゲームを作る際に、配信者界隈での楽しまれかたというのはすごく大事になってきますよね。

鈴木氏:
そうですね。ゲームのコンセプトを固めた段階で、念頭に置いていました。ですので、髙畑さんには、配信時におもしろい画になりやすいよう「プレイヤーの密度が高い状態」になるよう、意識してもらいました。

──と言いますと?

鈴木氏:
たとえば、レースゲームで1位を独走している場合、周りに他のプレイヤーがいなくて密度感が薄くなりますよね。

その状態よりも、周りにたくさんのプレイヤーがいてわちゃわちゃしていたほうが、おもしろそうに見えて配信映えしますし、実際にプレイしていてもおもしろい。ものすごい上手い人がいて独走状態になるのは仕方ないんですが、なるべくそうならないようにプレイヤーの密度が高い状態を維持できるように意識しました。

── なるほど。にじさんじさんの大会は、配信をする側、視聴する側、それぞれで本作の楽しみかたを感じられる配信になりそうです。

鈴木氏:
他にも、複数の配信者さんやライバーさんによるイベントを用意しておりますので、楽しみにしていてください。

じつは先日、配信者4人のプレイ収録に立ち会ってきたのですが……ひたすら奇声があがっていて、もう本当にすごかったです。「仲がいい人たちで遊ぶとこうなる」というのを生で感じることができて「(我々が目指したのは)これだよこれ!」と。

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髙畑氏:
「みんなで遊ぶことの先にあるもの」って「感情を出すこと」なんじゃないかなと思うんです。最近は、ゲームをプレイしながら「アー!」や「ギャー!」と大声を出す機会はなかなかないじゃないですか。ですから今作をプレイする方にはとにかく叫んでほしいですね。

私の友人の話なんですが、ゲームセンターのレースゲームでいい記録を出せる直前でミスってしまったとき、筐体を殴りたい衝動に駆られたらしいんでけど、それをすると出禁になってしまうので、咄嗟に床を殴ったんです(笑)。

──それは……その友人の拳が心配です(笑)。

髙畑氏:
逆に言うと、友人はそれほどまでにゲームに熱中していたっていうことなんですよね。

喜怒哀楽を出してもらえるっていうことは、それだけお客様のハートに刺さった証拠だと思うので、今作も、そういう喜怒哀楽が溢れるゲームになればいいなと思いながら作りました

鈴木氏:
もちろん、ひとりで遊んでも、顔の見えない世界のどこかにいる誰かと遊んでも楽しいゲームですが、僕としては友人や家族など気心の知れた仲間と一緒に楽しんでもらえると一番嬉しいです。

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インタビュー時は発売前だったこともあり、実際にプレイするのを見せてもらいながらお話を伺った。

今回は、『スーパーモンキーボール バナナランブル』の開発者のおふたりに、本作のコンセプトやカジュアル層へ間口を広げるための工夫、製品版完成までの背景についてお話を伺った。

家族や友人、気心の知れた仲間と共にわちゃわちゃと楽しく遊ぶことをコンセプトに開発された本作では、最大16人でオンライン対戦ができる新モードを導入するだけでなく、従来のシリーズ作品で見られた難易度の高さが見直された。

その一方で、ショートカットやスピンダッシュなどを使ってゲームに深みを与えることによって、過去作でやりこみ続けている熟練者にも楽しめるようになっており、幅広い層が楽しめるゲームとなっている。

操作のシンプルさとクリアした時の達成感をシリーズ不変の良さとして残し、ワイワイ楽しむハチャメチャパーティゲームという 「表の顔」 と、難易度が高いムズゲーという「裏の顔」を変わらずに保つ『スーパーモンキーボール バナナランブル』は、Nintendo Switch専用ソフトとして2024年6月25日より発売中。ぜひとも家族や友人と奇声をあげながら楽しんでみてはいかがだろうか

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サブデスク
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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