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4歳から『グランツーリスモ』を始めた男の子は、F1が走る現実のサーキットも駆け抜けてしまった

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 今回で3回目の開催となる、デジタルからアナログまで古今東西のゲームが集まる日本最大級の“ユーザー参加型”ゲームイベント“闘会議”。2017年2月11日(土)、12日(日)に開催される“闘会議2017”は、「ゲームと一緒に、生きてきた。」というテーマを掲げている。

 電ファミ編集部では、この「ゲームと一緒に、生きてきた。」というテーマを体現し、ゲームを通して人生を謳歌している人々に、インタビューを行っている。

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 今回登場するのは、“GTアカデミー by 日産×プレイステーション(R)2015(以下、GTアカデミー2015)”の日本大会代表として、イギリスでの最終選考会に臨んだ高橋拓也(たかはし・たくや)さんだ。“GTアカデミーとは、ドライビング・シミュレーターの人気シリーズ『グランツーリスモ』のトッププレイヤーが、本物のプロレースドライバーとしてデビューするチャンスを獲得できるという、まさに夢のような企画である。

 このGTアカデミーの最終選考会に挑んだ高橋さんは、F1イギリスGPの開催地として知られるシルバーストンサーキットで、実際にレーシングカーを操縦し、他の候補生と激しいレースを繰り広げた。その結果、惜しくも優勝を逃してしまったが、日本の代表として確かな実績を残したのだ。

 ゲームの中で最速を極めた人間が、いきなりサーキットでレーシングカーを操縦するということが、本当に可能なのか。そして、そのためにゲームでどんな特訓を重ねたのか。

 ゲームの先にある現実の世界で、夢に向かって疾走した本人に、これまでの活動とチャレンジの全容を語ってもらおう。

4歳から『グランツーリスモ』を始めた男の子は、F1が走る現実のサーキットも駆け抜けてしまった_001

取材・文/伊藤誠之介


『グランツーリスモ』を遊んだおかげで、本物のクルマに興味を持つようになった

――まず最初に、高橋さんと『グランツーリスモ』との出会いは?

高橋拓也さん(以下、高橋):
 4歳の頃、父方の祖父母の家に、初代のプレイステーションがありまして。そこでたまたま最初に遊んだソフトが『グランツーリスモ』【※】の1作目だったんです。

※『グランツーリスモ』 1997年にSCE(現・SIE)から発売された、プレイステーション用のドライビング・シミュレーター。レーシングカーからファミリーカーまで、多種多様な実在のクルマをリアルな挙動で再現し、大ヒットを記録した。以後シリーズ化されており、最新作のプレイステーション4用ソフト『グランツーリスモSPORT』が、2017年発売予定となっている。
※『グランツーリスモ』
1997年にSCE(現・SIE)から発売された、プレイステーション用のドライビング・シミュレーター。レーシングカーからファミリーカーまで、多種多様な実在のクルマをリアルな挙動で再現し、大ヒットを記録した。以後シリーズ化されており、最新作のプレイステーション4用ソフト『グランツーリスモSPORT』が、2017年発売予定となっている。
(画像はグランツーリスモ・ドットコムより)

――ほかのゲームには興味がなかった?

高橋:
 いくつかソフトがあったなかで、有名なタイトルというと『バイオハザード』『電車でGO!』『グランツーリスモ』の3つだったんですけど。そのなかで、たまたまプレイステーション本体に入っていたのが『グランツーリスモ』だったので、じゃあこのままやってみるかって。

――さすがに4歳の子どもが『バイオハザード』を遊んでいたら、ご両親もドキドキしますよね(笑)。

高橋:
 そうですね(笑)。父親がモータースポーツ好きで、その影響もあって『グランツーリスモ』を一緒にやるようになって。そこからだんだん自分1人でのめり込むようになったんです。

――ということは『グランツーリスモ』を遊び始める前から、お父さんと一緒にレースを見に行かれていたのですか?

高橋:
 ゲームよりも先に、実際にサーキットに連れていってもらったと聞いているんですけど、どうもその時は興味がなかったらしくて。『グランツーリスモ』を遊ぶようになった後に、またサーキットに連れていってもらったら、そこでハマった感じですね。

――実際のモータースポーツに興味を持つよりも、『グランツーリスモ』のほうが先だった?

高橋:
 そうなりますね。現在は“SUPER GT【※】と呼ばれている、市販車ベースのカーレースがあるんですけど、そこでは当時スカイラインGT-Rが、サーキットを走っていたんです。そのレーシングカーのベースになっているGT-Rが、『グランツーリスモ』に入っていて。「ゲームと同じだ」って思ったところから、実際のレースにもだんだん興味を持つようになりました。

※SUPER GT
市販車ベースの車両によって行われる、日本最高峰のカーレース。2004年まではその前身となる“全日本GT選手権”が行われていた。

――『グランツーリスモ』を遊ぶことを通じて、本物のクルマに乗ってみたい、本物のレースに出てみたいという気持ちが生まれてきた?

高橋:
 そうですね。『グランツーリスモ』を遊ぶことで、“自動車っていいものだな”という思いが生まれてきて。それからサーキットに行くことで、本物のクルマは速くてカッコイイという憧れを持つようになりました。

こちらの質問にハキハキと答える、高橋さん。とても印象の良い好青年だ。
こちらの質問にハキハキと答える、高橋さん。とても印象の良い好青年だ。

ゲームの中なら、免許がなくてもクルマを運転できる

――プロのレーサーになりたいと思うようになったのは、どれぐらいから?

高橋:
 『グランツーリスモ』を始めて1、2年ぐらい経ってからだと思います。幼稚園の卒業アルバムに“将来の夢はレーサー”と書いているので。そこから何も変わらないままに、レーサーになりたいっていう夢をずっと持っていて。

――モータースポーツにあまり詳しくない人間からすると、レーサーになるにはかなりのお金が必要だというイメージなのですが。

高橋:
 モータースポーツの世界に入るには、本当は小学生ぐらいから始めるのが普通なんです。でもジュニア向けのレーシングカートでも、全日本選手権に出場するとなると、年間で1000万円ぐらいかかるんですよ。さすがに一般の家庭にはムリですよね。

 だから、最初はお金のかからないゲームで自分の腕を磨いて、いつかは本物のレーシングカーに乗れたらいいな、というふうに思いながら、ずっと『グランツーリスモ』を練習していました。

――ではその頃は、レーサーになりたいという夢を、『グランツーリスモ』のなかで叶えていた感じですか?

高橋:
 まずなにより、その年齢だと免許が取れないので(笑)。でもクルマを運転したいっていう気持ちはとても強くて、そうすると『グランツーリスモ』しかないですから。もしも本物の車でサーキットを走る機会があった時には、すぐに乗れるんだぞっていう(笑)。

 だから『グランツーリスモ』をいちばんやり込んでいたのは、中学生の頃かもしれないですね。将来の夢に向かう過程としてプレイしていたので。少しでも時間があったら、ほかのことは何も考えずに、とにかくゲームだけに集中していました。

――その当時、勉強のほうは?

高橋:
 勉強は学校でしかやってなかったですね。本当にもう、時間が空いたらすぐ『グランツーリスモ』って感じで。

――それに対してご家族は、どんな反応でした?

高橋:
 まぁやっぱり、「いつまでやってるんだ」っていう感じでしたね。夜の9時とか10時ぐらいになると、「もうやめなさい」って、日々言われていました。

――『グランツーリスモ』をプレイする時は、やっぱりハンドルなんですか? それともコントローラで?

高橋:
 オフィシャルのステアリングを使っています。自宅のテレビを1台、完全に占領してる形で、そのテレビの前に常に固定してあるんです。

――その環境は、いつ頃から?

高橋:
 小学校低学年の頃に、クリスマスプレゼントで買ってもらったのが最初です。それで2台目が発売されたらまた買ってもらって、みたいな感じで、だんだんと代替わりしてますね。

――たしか、専用のコックピットみたいな製品もありましたよね? 

リアルシミュレーターを志向するシリーズだけに、ステアリングやシートにこだわった周辺機器も登場していた。 (画像はセクトインターナショナル ホームページより)
リアルシミュレーターを志向するシリーズだけに、ステアリングやシートにこだわった周辺機器も登場していた。
(画像はセクトインターナショナル ホームページより)

高橋:
 ありますね。でも正規品を買うと高いので、ネットを調べてみたら、自作している人が意外にたくさんいて。それを参考にしながら、ホームセンターでパイプを買ってきて自分で組み立てたものを、今でも使っています。

――『グランツーリスモ』を意識してプレイするようになってから、別のレースゲームや、他のジャンルのゲームに興味を持ったことは?

高橋:
 気分転換に『ウイイレ』とか『パワプロ』とか、他のスポーツゲームもちょっとだけやってみるんですけど、それまでに『グランツーリスモ』ばっかりやってたので、それに比べると他のゲームはぜんぜんできないんですよ。だから結局、『グランツーリスモ』に戻ってきちゃうんです。

 スマホのゲームとかも、ぜんぜんやらないですし。だから本当に『グランツーリスモ』がなかったら、ゲームの世界にはぜんぜん触れてなかったのかなって思いますね

――そうなんですか。では、そのいちばんやり込んでいたという中学生の時期に、『グランツーリスモ』が他の人よりも上手いという自覚はありましたか?

高橋:
 その時はまだオンラインの世界を体験していなくて、友だちとか、自分の身近な人たちの中だけでやっていたんです。だからそこでは自分が一番になって当然だと、天狗になり始めていたというのはありますね。

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