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初代『ドラクエ』から37年、堀井雄二と伝説の編集者・Dr.マシリトが初めて公の場で語り合う! “鳥山明”という最強のマンガ家を用意したこの人なしに国民的RPGの誕生はあり得なかった…!

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とにかくゲームを考えるのが好きだった、若き日の堀井氏

──(笑)。堀井さんは「バンカース【※】」やスゴロクといったボードゲームから、“ゲーム”というものに興味を持つようになったとお聞きしているんですが、いかがでしょう。

※1960年代に人気を博した、「モノポリー」に近いルールのボードゲーム。

堀井氏:
そうですね。「バンカース」ももちろん好きでしたし、あと電子ゲームだと「ブロック崩し」とか、ゲームも昔からずっと好きなものでしたね。

鳥嶋氏:
 これは僕がさくまさんから堀井さんを紹介してもらったときの話なんですが、「セブンティーン」で年末になると必ず堀井さんがスゴロクを作っているとお聞きしたんです。そしてそのスゴロクがすごく好評だと聞いていたんですが、堀井さんは当時どんなスゴロクを作っていたんですか?

堀井氏:
 あ、「セブンティーン」ではスゴロクじゃなくて、チャート式の性格診断とかを作っていましたね。

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バンカース(画像はハナヤマ公式サイトより)

──なるほど、それは少女誌だと人気が出るのも分かる気がします。

鳥嶋氏:
 そういうのを聞くと『ドラクエ』とかにいたるのも、割とすんなりつながるんだよね。

堀井氏:
 スゴロクは趣味で作ってました。あとは麻雀牌を使って別のゲームを考えたりとか、とにかくいろいろとゲームを作るのが好きでしたね。

鳥嶋氏:
 堀井さんと知り合ってしばらくしたころ、堀井さんの自宅にPCの『スタートレック』というゲームを見に行ったことがあったんです。そうしたら改造されていて、燃料を補給する車がチャルメラのメロディーでやってくるんですよ。それを見たとき、「世の中にはこういう人間もいるのか」って。

 で、これは『ドラクエ』のもとになる『ウィザードリィ』の話なんですが、ゲーム中にすごく貴重でお金になる指輪があるんですよ。ふつうはひとつ手に入るかどうかなんですけど、堀井さんのデータを見せてもらったら何十個も持っている。もちろんこれも改造していて、「これはないんじゃないの」と思いましたよね(笑)。

──なるほど(笑)。それで鳥嶋さんは「堀井さんと同じゲームはやれない、勝てない」と思ったと……。でも、それで言うと堀井さんと同じく「勝てない」のがミヤ王さん【※】ですよね。「暇人には勝てない」とか(笑)。

※ゲームクリエイターの宮岡寛氏。『ドラゴンクエスト』のロト三部作ではシナリオのアシスタントやダンジョンのデザインなどを担当し、のちに『メタルマックス』シリーズを生んだ。

堀井氏:
そうそう。『ウィザードリィ』を遊んでいたころ、僕と鳥嶋さんはキャラクターを育成するのに集中しすぎて、ゲームには「ワードナ」っていうボスがいるんですけど、それを倒すことなんかもう忘れちゃってたんですよね。で、ミヤ王が「ワードナ倒した」って行ってきたんですけど、ふたりとも「誰それ?」って(笑)。

鳥嶋氏:
 堀井さんはライターの仕事がない日も集英社に来ていたんですよ。なぜかって、『ウィザードリィ』のダンジョンのマップをお互いに照らし合わせるためにね(笑)。それぞれが書いたマップを見せあって正しい物を作り、コピーして持って帰るという。

 で、僕らが「エルフ」とか「ドワーフ」とか、ほかにもゲームの中の魔法の呪文の「ハリト」とか「マハリト」みたいな単語を連発しながら会話しているものだから、編集部の人間が「あいつら謎の語学を始めたんじゃないか」って勘違いして(笑)。

一同:
 (笑)。

鳥嶋氏:
 打ち合わせは5分で終わらせて、あとはずっとゲームの話をしてましたね(笑)。

──うらやましい(笑)。でも、それも鳥嶋さんが「ジャンプ放送局」や「ファミコン神拳」にいたからこそですよね。

鳥嶋氏:
 それで言うと、さっき堀井さんも自然とゲームにたどり着いたっていう話をしていたけど……楽しく遊んでいる内に自然と仕事になっていったというか、仕事にしたんだよね。それが大きかったと思います。

──堀井さんが当時ライターをされていた「月刊OUT」に才能が集中していたというお話も聞いたことがあります。

堀井氏:
 いろんな人がいましたね。『ダイの大冒険』稲田浩司さんもいましたし、さくまさんも関わっていたし……。

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(画像はAmazon『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 1』より)

──なので「月刊OUT」と「月刊LOGiN」が当時の最先端を走っていたような。

鳥嶋氏:
 LOGiNね(笑)。僕らもLOGiNの河野くん【※】がいなかったら『ウィザードリィ』遊べなかったからね。

※河野真太郎氏:月刊LOGiNでは河野マタロー名義で活動し、4代目編集長も務めている。

──その『ウィザードリィ』はどのようなところにハマったんでしょうか? 戦闘システムがすごく優れていたというお話は聞いたことがありますが。

堀井氏:
 僕が『ウィザードリィ』にハマったのは「自分のキャラクターが強くなる」っていうところですね。戦ってどんどん成長していくっていう。

鳥嶋氏:
 当時はそういうゲームがまだなかったからね。

──その『ウィザードリィ』がApple IIのゲームだったわけですが、出会ったのはアメリカで?

堀井氏:
 向こうへ行って、帰ってきてからだよね。

鳥嶋氏:
 アップルフェスに出向いたとき、「ジャンプ」で特集するためにゲームをいろいろ買ってきたんですよ。

 さかのぼって話すと、まず堀井さんがエニックスの主催したゲームコンテストを「ジャンプ」のライターとして取材したんだけど、そのとき堀井さん自身もコンテストに出品して、しかも入選するっていう。

堀井氏:
 もともとコンテストがあること自体は知っていたんだけど、応募方法が分からなくて。それでたまたま取材の依頼と一緒に応募一式がもらえたから、ついでに応募しちゃった(笑)

一同:
 (笑)。

鳥嶋氏:
 もっと元をたどると、当時のエニックスはPCソフトの流通をやろうとしていたん
 ですね。ところが、肝心の売るソフトがないと。そこで「これからはゲームだろう」ということでなけなしのお金を使って賞金付きのコンテストを開いたわけです。その流れで『ドラクエ』のプロデューサーである千田さん【※】が僕のところに来て、そのとき「面白い!」って思ったんですよ。

 当時は堀井さんとジャンプでPCの特集をやっていたんだけど、それも少し行き詰っている感じがあって。で、その企画は「ジャンプで独占するから、ほかのところは持って行かないでね」と。もし集英社で捕まえていなかったら、小学館にでも行っていたのかな(笑)。

※千田幸信氏:元スクウェア・エニックス・ホールディングス取締役。2000年ごろまで『ドラゴンクエスト』シリーズのプロデューサーを務めた

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Apple II(Image by All About Apple. Licensed under the terms of cc-by-sa-3.0.

”隠しコマンド“の特集から「ファミコン神拳」がスタート

──今、目の前に「ファミリーコンピュータ」がちょうどあるんですが、ファミコンと「MSX」が発売されたとき、どちらが良いのかという特別アンケートを取られたんですよね。結果はファミコンが圧倒していたそうですが。

鳥嶋氏:
圧倒的でしたね。僕らも遊んでみたんですが、ぜんぜん違うんですよ。一番の優れものはファミコンのコントローラーだと思っています。それまで、コントローラー上で「止まれ!」と操作したとき、ちゃんとゲーム内のキャラクターもピタッと止まるような代物はなかったんです。
 子どもが踏んでも壊れない、っていうところも良かったよね。デコボコが少ないから壊れないし、ケガもしない。

堀井氏:
 あと、とにかくゲームが面白かったよね。最初に『ドンキーコング』の画面を見た時なんか、「これが家で遊べるんだ! すげえ!」ってなりましたよ。

──当時は「コロコロコミック」がファミコン関係のネタで人気を集め、部数を伸ばしていたんですよね。それで「ジャンプ」でも似たようなものをやりたい、という相談が鳥嶋さんのところへいったとか。

鳥嶋氏:
 副編集長から「最近、コロコロが急速に売り上げを伸ばしている」という話が出てきたんです。販売に聞いてみると、どうやら冒頭にある2色の袋とじが理由らしいので、これを研究して「ジャンプ」でもやれるかどうか考えてみてくれ、と言われました。

 それで堀井さんを呼んで研究してみたら、「これは隠しコマンドだね」とすぐに分かりました。そのときはハドソンの『スターフォース』というゲームでやっていたんだけど、コロコロの構成ではタイアップでちょっとずつ掲載していたんですね。

 「ならジャンプでは隠しコマンドを一気に出せばいいじゃん」となったんだけど、そうするとメーカーからクレームが来るし、広告も載せられなくなってしまう。だから「コロコロが2色ならジャンプは4色だ」ということになったんですが、その代わりに小さくなっちゃった(笑)。お金の関係であれ以上は大きくできなかったんだよね。

堀井氏:
 最初に『ゼビウス』の隠しコマンドを袋とじにしたら、大人気だったんです。

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(画像はアーケードアーカイブス『ゼビウス』公式サイトより)

鳥嶋氏:
 でも隠しコマンド単体の袋とじだと小さすぎるから、後ろの方に「ゲームのミシュランをつけよう」っていう話になりまして。それが「あたた神拳(ファミコン神拳)【※】」になった……というわけです。

※あたた神拳:ファミコン神拳ではゲームの採点をマンガ『北斗の拳』のパロディで「あたっ」「あたたたた」などの擬音で表現していた

堀井氏:
 当時のゲームは4000~5000円くらいの値段がしながらも、遊ぶまで中身が分からなかったからね。

鳥嶋氏:
 いい加減につけているように思われたかもしれないけど、僕らとしては1本あたり何時間もかけて遊んで、真剣に採点していたんです。ミヤ王くんも入れて3人で討論しながら、まじめにディスカッションして点数をつけていました。

──あの『北斗の拳』をパロディするアイデアは堀井さんのものとお聞きしたんですが。

堀井氏:
 そうですね、当時は『北斗の拳』が人気だったので。

──ゆう帝(堀井氏)は秘孔を突くという設定で、鳥嶋さんが土居さん【※】に「指をデカくかけ」と指示されていたとか。

※土居孝幸氏:『桃太郎伝説』『桃太郎電鉄』などのキャラクターデザインで知られるマンガ家・イラストレーター。

鳥嶋氏:
 そうそう(笑)。デフォルメしろと伝えていました。

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