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心の疲れたゲーマーへ送る、究極の “癒し系” 鉄道敷設シム。『Station to Station』でこの秋は「チル」しませんか?

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 夏も終わり、少しずつ秋の風が吹き始めた今日この頃。今日もどこかでインディゲームが生まれている。

 今回紹介するのは、オランダが誇る新進気鋭のゲームスタジオ「Galaxy Grove」が開発する鉄道敷設ゲーム、『Station to Station』だ。

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(画像はSteam | Station to Stationより)

 ボクセルアートで表現された美しい田舎町を舞台にシンプルな鉄道敷設シムを楽しめる本作は、鉄道マニアやシム経験者でなくても楽しめるカジュアルで洗練されたゲーム内容とエンドレスにハマれるやりこみ要素など数々の魅力を備えており、まさに初心者におススメしたい一作と言える作りになっている。

 しかし、本作の最大の特徴はなんといっても「まったりとした雰囲気」にあるだろう。
 ゲーム全編を通して流れる穏やかな時間の流れは、最近の若者言葉を拝借するのであれば「チルい」の一言に尽きる体験であり、秋の夜長に一人で静かに遊びたいゲームランキングがあるなら上位に食い込むことは間違いないだろう。
 それでは、そんな『Station to Station』のゲーム内容をまったりとお伝えしていこう。

文/植田亮平


※この記事は『Station to Station』の魅力をもっと知ってもらいたいPrismatikaさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。

線路を繋げて街を発展

 本作のゲームシステムは非常にシンプルだ。ステージ上に点在する建物に駅を設置し、駅と駅を線路を敷いて繋げていく。基本的なプレイ内容は全てこの2つが基点となっているので、難しいルールを覚える必要はほとんどない。操作体系においても、キーボードとマウスであればWASDキーとクリックだけで完結するので、こまごまとしたショートカットに頭を悩ます必要もない。

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 ステージ上の建物には「都市」「工場」「牧場」など多くの種類が存在しており、それぞれの建物には「その建物が生産するもの」や「その建物に必要なもの」が決まっている。上記の画像で説明すると、「都市」はそこに暮らす人々を養うために牛乳、チーズ、家具など特定の物資を必要とする。

 これら物資を生産するための建物の中にも、特定の物資を必要とするものがあり、例えばチーズを生産するためには牛乳が、家具を生産するためには木材と工具がそれぞれ必要となる。こういった「各建物の要求」を、線路敷設に伴う物流によって解決していくのがプレイヤーの目的だ。

 ただし、ただ線路を繋げるだけでは「ゲーム」とは言い難い。本作を「ゲーム」足らしめているのは、線路や駅の敷設にかかる「お金」のシステムだ。本作のマネーシステムはシミュレーションゲームにおける簡単な「コスト」の役割を果たしており、線路をかけるにはその長さや高低差に応じて変動するお金、つまりコストがかかる。

 このお金は、ステージ開始時の初期値以外では建物間の物流を開通させたときにしか獲得することができないようになっている。獲得できるお金の量は開通した瞬間に流れる物資の数によってボーナスがかかるようになっているので、「どの建物をどの順番で繋げるか」が本作のゲームデザインの肝となっている。つまり、やみくもにではなくある程度「賢く」線路を敷く必要があるということだ。

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お金が足りなくなったら詰み。始めからやり直すこととなる。

難易度は緩め、やり込み骨太

 先のゲーム説明だけ見れば本作のゲームシステムは標準的なシミュレーションゲームのように映るが、私の体感では本作のプレイフィールはシミュレーションゲームというよりも、むしろパズルゲームのようなものであった。その理由は主に二つだ。

 第一の理由は、ステージ制となっているうえに1つのステージ自体が非常にコンパクトにまとまっている点。ステージをクリアするだけであれば所要時間10分程度でクリア可能なボリュームとなっており、ステージのクリア条件もそれほど難しいものではない。
 時折お金の管理に頭を悩ませることはあれど、それほどシビアな難易度になっていないので、クリアやリトライが他のシミュレーションゲームより容易に行えるようになっている。

 もう一つの理由は、先ほども述べた通りゲームプレイ自体がとてもシンプルな点。プレイヤーの操作が線路を敷くという一点に集約されているので、建物や車両の管理が必要なく、非常に気楽にプレイすることができる。どっしりと腰を据えて遊ぶシミュレーションゲームも良いものだが、本作はそれとは別種の、寝転びながらやりたくなるような「ゆるさ」を備えている。

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(画像はSteam | Station to Stationより)

 しかし、本作をやり込むとなると話は変わってくる。本作の各ステージにはそれぞれ資金ミッション特別ミッションの異なるやり込み要素が用意されている。

 それぞれ特殊な条件を満たしてのクリア、例えば「一定額以上の資金を持った状態でクリア」や「川に架ける橋を4本以下の状態でクリア」など、非常にシビアな条件が与えられており、これらを満たしてのクリアはかなり高い難易度になっている。少なくとも頭を使わずクリアすることはできないレベルなので、資金管理に長けた玄人プレイヤーは挑戦してみるのもいいだろう。
 
 クリアは簡単、やり込みは骨太というのが本作の難易度を評するのにぴったりだろう。
 本作は全てのステージをクリアした後も、自由にルールを決めてステージを生成することが出来るカスタムモードが存在する。ステージの地形は各バイオームによってランダムに生まれるので、本作のシステムに惚れた人は無限にゲームを遊び続けることも可能となっている。

 加えて、ここまで説明した内容のほかに、ステージによってはさまざまな効果を及ぼす「カード」と呼ばれるアイテムを駆使してプレイすることとなる。カードは線路敷設にかかるお金を減らしてくれるものや、大型貨物列車を通して流通による獲得金額を増やしてくれるものまで多岐にわたる。ゲームの難化を防止し、やり込みに深みを与える良いシステムといえるだろう。

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ゲーム後半にはかなり複雑な地形も登場する。

令和の「チルゲー」ここにあり

 さて、ここまでゲーム内容について紹介してきたが、ここからはこの『Station to Station』の本髄(と私が勝手に思っている)部分を紹介しよう。

 本作のグラフィックは地形等の部分を除いてほとんどすべてがボクセル(四角で構成された3D)で描写されており、ステージの規模感も相まって、まるでおもちゃの世界で遊んでいるかのような質感を持っている

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(画像はSteam | Station to Stationより)

 しかし、それらのオブジェクトを包み込む光は非常にフォトリアルなものだ。それぞれのオブジェクトに反射する光や影の描写は息をのむほど美しい。
 この「ボクセルの世界観」と「リアルな光」が合わさった本作のグラフィックが、プレイヤーのゲームプレイへの没入感を最大限高める役割を果たしている。
 
 そして、このグラフィックを最大限味わえる瞬間も用意されている。ステージクリア後の鑑賞タイムだ

 本作ではステージクリア後、すぐにリザルト画面へ遷移することなく「クリア後のステージを眺める」ための時間が用意されている。自分が敷いた線路の上を走る電車を眺める至福の時間だ。

 以前私がレビューさせていただいた鉄道系シム『RAILGRADE』でも同様の機能が用意されていたが、本作の鑑賞タイムも『RAILGRADE』同様ジオラマ模型を眺めるような体験ができるものとなっている。カメラに被写界深度が自動で設定されているのも、おそらく「眺めて楽しんでね」という開発側の思いからだろう。

 ここからはいくつか本作のスクリーンショットをお見せしよう。オランダのスタジオということもあってか否か、水辺と草原の描写に関しては特に素晴らしいものとなっている。

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 まずはゲーム序盤のステージでパシャリ。水面の細かい揺れの描写や淡い夕日のグラデーションがなんとも「エモ」である。野に咲くチューリップや汽車の煙突から出る煙も画面を引き立てるアクセントになっており非常に素晴らしい。

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 次は朝の湿原地帯で撮った一枚。小さな川にかかる橋とその下を通る線路が特徴的だが、もちろんこの橋と線路は私が設置したものだ。画面奥に朝靄のようなぼやけがかかっているのがおわかりいただけるだろうか。このような3Dモデル以外でのリアルな質感は本作のグラフィックの大きな特徴なのでぜひ体験してみてほしい。

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 荒野を進む貨物列車を捉えた一枚。当然この橋は私が架けたものだ。画面左側の崖は地層までドットで表現されており、ブロック状の世界観を上手く演出している。一方で橋の下を流れる川は水面に空を反射しており、谷の間にかかる影も相まって地形の高低差がグラフィック表現のコントラストとして表れている。

 『Station to Station』には、このような美しい情景が多数広がっている。もちろんカメラも自由に動かせるし、箱庭の中では列車が縦横無尽に走り回っている。さらに、ゲーム中には常にバックグラウンドでストリングスとピアノの美しい音楽が流れているので、視覚的にも、聴覚的にも癒されること間違いなし

 まさに、本作は「令和のチルゲー」にふさわしい作品だと言えるだろう。正直言って、タイトル画面で流れるBGMを聴きながらネットサーフィンをするためだけでも十分に有用なゲームだと私は思っている。

 『Station to Station』は、現代社会に疲れ切ったゲーマーたちにぜひともお勧めしたい一本だ。私的には、休日の朝にコーヒーを飲みながらこのゲームで遊ぶというのがベストシチュエーションである。あるいは、仕事の休憩時間や夜寝る前のひとときに、もっと言えば別のゲームの休憩中に遊ぶのもありかもしれない。

 いずれにせよ、何度も述べた通り本作『Station to Station』はこの秋最もおススメしたい最高の「チルゲー」なので、鉄道にあまり興味を持っていない方も、はたまたシミュレーションゲームはあんまり得意じゃないかもという方も、ぜひとも「気楽に」このゲームを体験してみてほしい。このゲームがきっと、あなたの疲れた心をいやす停車駅になってくれるだろう。

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ライター
大阪在住のゲーマー。ゲームに限らずアニメ、映画など気になったものは何でも取り込む雑食系。オープンワールドのゲームやウォーキングシミュレーターなどが大好き。最近はオンラインゲーム『League of Legends』にドハマりしているが、プレイの腕はイマイチ。

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