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「実際に遊ぶ前と後」で曲の全く印象が変わる、『FF6』の「仲間を求めて」について話したい

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「実際に遊んだことはないけど、曲は知っているゲーム」って、いくつかあったりしませんか? 私はこれが結構ある方で……むしろ、「この曲がどういうタイミングで流れるのか知りたくて、ゲーム本編を遊び始める」なんてパターンもあるくらいです。

そして最近気づいてきたのですが、「実際のゲーム内のシチュエーションを知ると、曲の印象が180度変わる」パターンも結構多いと思っています。もちろん戦闘BGMやフィールドBGMだって、「特定のシチュエーションに対して作られた曲」だから、それは当然のことです。

ただ……実際にゲームに合わせて聞くことにより、「特定のシチュエーションに流れる曲」以上の感動が生まれているとも思います。カッコよく言うと、「ゲームでしか味わえない感動」的なやつです。今回は、そんな「実際に遊んだら印象がガラっと変わった曲」の話をしようと思います。ピクセルリマスター版の『ファイナルファンタジーVI』(以下、FF6)でね!

『FF6 ピクセルリマスター』インプレッション。「実際に遊ぶ前と後」で曲の印象がまったく変わる、「仲間を求めて」について_001

文/ジスマロック
編集/実存

※本稿には『ファイナルファンタジーVI』のネタバレが一部含まれています。あらかじめご注意ください。


FF6をちゃんと遊んで、「仲間を求めて」が好きになる

『FF6 ピクセルリマスター』インプレッション。「実際に遊ぶ前と後」で曲の印象がまったく変わる、「仲間を求めて」について_002

そう、『FF6』「仲間を求めて」です。

この「仲間を求めて」という曲自体は、『FF6』を遊び始める前から知っていました。ただ、私が初めて聞いた時は、実のところあんまり刺さりませんでした。よく「『FF』の中でも一番好きな曲」とか「RPG史に残る名曲」とか言われているけど、私はあまりピンと来ていなかったのです。

ですが、数年前に『FF6』をプレイした時……この「仲間を求めて」の印象が180度変わりました。ダリルの墓を訪れ、彼女との思い出を振り返るセッツァー。崩壊してしまった世界の中、仲間と夢を追い求めて、再度浮上するファルコン号。

「羽を失っちゃあ、世界最速の男になれないからな。また夢を見させてもらうぜ。ファルコンよ」というセリフと共にイントロに入り、水面から浮上するファルコン号に合わせて「仲間を求めて」が流れ始める。この一連の演出を見せられた時に、「これはとんでもない曲だ」と、完全に印象を覆されてしまったのです。

悲壮感と雄大さを同時に感じさせる曲調も、実際の文脈を踏まえると、ちゃんと「意味」があることがわかってくる。そして何より、「崩壊した世界を飛空艇で飛び回る間、この曲が流れ続けている」というシチュエーションと音楽の組み合わせが美しい。文句なしに、「FF6を象徴する曲」と言えると思います。

しかも、「仲間を求めて」は「シチュエーションの曲」でありながら、「フィールドの曲」でもある。つまり、「特定のシーンに合わせて流れる=最初のインパクトがすごい曲」であると同時に、「フィールドで流れ続ける=ずっと聞いていても飽きない曲」になっているのです。

ふつう、フィールド曲は「ずっとフィールドで聞いていても飽きない曲」として作られていることが多いと思います。そして「シチュエーションに対して流れる曲」は、そのシーンをよりドラマチックに演出したり、より印象づけるために作られていると思います。だけど、「仲間を求めて」は、その両方を見事にこなしている。

……と、『FF6』を遊ぶ前に曲単体で聞いた時には「そこまでピンと来ない」と感じていたのに、いざゲーム本編を遊んでみたら、ここまでいろいろ考えてしまうほどの衝撃を受けました。この「実際に遊んでからイメージが変わる曲」として、私の中では「仲間を求めて」が忘れられない存在になっています。

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FF6は、「演出」のゲームかもしれない

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「仲間を求めて」のシーンに合わせて思っていることがあって……個人的に、『FF6』は「演出」のゲームだと感じています。あのドット表現で、映像媒体に引けを取らない「演出」を見せている。

もちろん、『FF4』のラストバトル前にメインテーマが流れ始めるあのシーンも、『FF5』でガラフが敵の攻撃を残りHPわずかのところで耐え続けるシーンも、良い演出だと思うのですが……それ以上に、「ドットの世界の中で描ける演出」を完全に掴んだのが『FF6』だと思います。

それこそ、「オペラ」のシーンはその最たる例と言えるのではないでしょうか。

こちらもファルコン号と同じく、『FF6』の名シーンとして話題に挙げられることが多いのですが……ドット絵という性質上難しいと思われる「舞台的な演出」を、完全にモノにしているシーンだと思います。舞台に上がったセリスが「アリア」を歌い、花束を投げる。デフォルメされたドット世界の中に、そのまま「舞台」が生み出されています。

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しかも、ピクセルリマスター版では「アリア」にボイスがつき、各演出も立体的な表現に進化しています。正直遊び始める前は「まぁピクセルリマスターといっても、少し綺麗になったくらいかな?」と思ったりもしたのですが、オペラのシーンは本当に「今のドット技術でFF6を作ったらどうなるのか」を実践していると思います。

何気に、私の中では「オペラ」も、「実際に遊んでみて印象が変わった」シーンだったりします。
「FF6はオペラがすごい」とは事前に聞いていたけど、それでも「曲がいい」とか「ストーリー的に面白い」とか、そういった感じのイベントだろうと。

でも実際に遊んでみると、「どこかの要素がいい」のではなく、「オペラ」というイベント全体の完成度が高いことに気がついてくる。ドット表現、音楽、演出……すべてが一体となり、あの舞台を生み出している。実際に遊んだことで、「これはたしかに語り継がれるだけはある」と思わされました。

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この「オペラ」のシーンを筆頭に、『FF6』は「ドット表現の極地」に辿り着いたタイトルだと思っています。ドットのキャラが飛んだり跳ねたりする感情表現、緻密な背景やフィールド……。もちろん同じSFCでのシリーズでもある『FF4』や『FF5』のドット表現も素晴らしいのですが、やはり『FF6』は卓越した描写だと感じています。

特に、「ドットでキャラに演技をさせている」ところがすごい。
オペラでの花束を投げるシーンもさることながら、「驚く表情」「飛び跳ねる」「後ろを向く」といったわずかな動きだけで、キャラクターに「演技」をさせている。デフォルメされた表現なのに、そこにはしっかりと「キャラの心情」が込められている。

今作が「SFC期のひとつの到達点」と言われるのは、間違いなくこういった「表現の巧みさ」も寄与していると思います。

FF6は「バトル曲」もすごい

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ここまで「音楽」を中心に紹介してきましたが、そうなってくるとやっぱり外せないのは「バトル曲」。

そう、『FF6』は戦闘曲も素晴らしいのです。
何気に私は通常戦闘曲の「戦闘」が一番好きです。個人的には『FF』シリーズの通常戦闘曲だと「The Man With the Machine Gun」と「戦闘(FF6)」がツートップですね。この軽快なメロディと、気持ちが引き締まるような植松サウンド……段々とクセになってきます。

そんな通常戦闘曲もフィールド曲と同様に、「ずっと聞いていても飽きない曲」として作られていることが多いと思います。そして、個人的には今作の「戦闘」が、「シリーズの中で一番飽きない通常戦闘曲」だと感じています。

深い理由は全く説明できないけど、この軽快なテンポ感に全然飽きが来ない。正直この曲よりもカッコいい通常戦闘曲はいくつもあるけど、「飽きの来なさ」で言えば割とぶっちぎっていると思います。何度戦闘していても、「そろそろ別の曲が流れてほしい」とは全然思わない。なんだか不思議な中毒性のある曲です。

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しかも、『FF6』のバトルって基本的にテンポが良いんですよね。

FC~SFC期の『FF』シリーズは、やっぱり現代の感覚からすると結構バトルが難しい局面もあったりするのですが……『FF6』の戦闘や難易度は、かなりテンポよく遊べるように作られていると思います。

序盤~中盤はエドガーのオートボウガンやマッシュのオーラキャノンでどうにかなるし、終盤はソウルオブサマサを装備したティナのアルテマ4連発や、げんじのこてと皆伝の証を装備したロックの8回攻撃でどうにかなる。だから、個人的に『FF6』のバトルは「爽快感がある」という印象が強いです。

それを盛り上げる軽快なテンポの「戦闘」。
そして屈指の名曲と名高いボス戦BGMの「決戦」。

ちなみにこれらのBGMはピクセルリマスターだと、今回のために用意された「アレンジ版」を聞くこともできます。植松伸夫さんが完全監修したそうです。元の良さを活かしたものから、意外と印象が変わる曲まで……すべてアレンジ版が用意されています。もちろん、「いや原曲こそが至高!」という方のために、原曲に切り替えることもできますよ。

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そしていろいろな意味で思い出深いのが、ラストバトルで流れる「妖星乱舞」です。

なんと約17分に渡る超ロング戦闘曲で、ゲーム内では「ケフカの形態変化に合わせて曲が切り替わっていく」というギミックが仕込まれています。ただ、私が初めて『FF6』をプレイした時は、この曲を堪能しきる前にラスボス戦が終わってしまったのです。そう、ティナのアルテマとロックのバリアントナイフが一瞬で戦いを終わらせたのだ……

後になってフルver.の第四楽章を聞き、「もっと上手く戦ってバトル中にフルで聞きたかった……」と、ものすごく後悔しました。「妖星乱舞をフルで堪能できなかった」という思いを抱えたみなさん、ピクセルリマスター版でケフカにリベンジしてみてはいかがでしょう。

FF6を遊んで、新しく良さに気づいた曲

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ここまではある程度「遊び始める前から知っていた曲」を中心に書いてきましたが……逆に、「実際に遊んでから新たに良さを知った曲」もありました。

それが、「運命のコイン」という曲です。

エドガーとマッシュがパーティ内にいる状態で、フィガロ城に泊まると発生するイベントなどで流れる曲なのですが……この曲の存在は、ちゃんと『FF6』を遊ばなければわからなかったかもしれません。

「運命のコイン」はフィガロ城などで流れている「エドガー、マッシュのテーマ」のアレンジとなっているのですが、勇壮さを感じさせるアレンジ元とは大きく変わり、こちらは切なさや寂しさを感じさせる曲調となっています。

『FF6 ピクセルリマスター』インプレッション。「実際に遊ぶ前と後」で曲の印象がまったく変わる、「仲間を求めて」について_011

「10年か…あのチビがこんなにデッカくなっちまいやがって。」
「兄貴こそ国王様が板についてるぜ。」
「マッシュよ……俺は…親父が恥じないような王か?」
「きっと親父はあの世で鼻高々さ。」
「10年か…。長かったな。」
「…長かったな。」

「2人とも大人になっちまったとこで1杯やるか。飲めよ。」
「乾杯だ…親父に。」
「…おふくろに。そして…フィガロに。」

このイベント、「メインストーリーを遊ぶだけでは発生しない可能性のあるイベント」なのが良いんですよね。そもそもパーティーにマッシュとエドガーを入れる必要があるし、その上でフィガロ城に泊まる必要もある。だから、たまたま見られた時の特別な感じがちょっといい。

こういう言い方をしてしまうと陳腐かもしれませんが……このイベントはまさしく「大人」な雰囲気が素敵だと思います。ふたりの回想シーンに合わせて「運命のコイン」が流れ、亡くなった父と母への乾杯を捧げる。このイベントの存在は、まさしく『FF6』を遊ばないと知り得なかったと思います。こういう「意外な発見」ってなんか嬉しい。

このフィガロ兄弟を筆頭に、『FF6』はとにかく多彩なパーティーメンバーも魅力的。なにか特定の主人公がひとりいるわけではなく、それぞれのパーティーメンバーの視点が入れ替わる「群像劇」的なストーリーになっているのも、印象的なタイトルです。

だから、「キャラのテーマ曲」もたっぷり用意されています。
ほとんどメインテーマのような扱いの「ティナのテーマ」から、オペラで流れる「セリスのテーマ」、いろいろな意味で耳に残りすぎる「魔導士ケフカ」など……キャラごとに合わせたテーマ曲も多彩を極めています。個人的には「シャドウのテーマ」が好き。

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……と、今回は「FF6の曲」を中心に書いてみました。
本当に趣味全振りですね。
こんなに言いたいことだけ言って終わる記事でいいのかな?

「FF6で何を書こう?」と思った時、真っ先に浮かんだのが「曲」でした。『FF』シリーズは名曲が多いけど、ゲーム全体を通して「曲」が一番印象に残っているのは『FF6』だったんです。

「あ、なんか仲間を求めて聞きたくなってきた……」と思ったそこのあなた、ピクセルリマスター版で、もう一度あの感動を味わってみてはいかがでしょうか。そして「そこまで言うならFF6の曲が気になってきた……」と思ったそこのあなた、サブスクだけでなく、どうか実際のゲーム内で『FF6』の音楽を体感してみてください。では……行け! 世界を守れ!

© SQUARE ENIX

LOGO & IMAGE ILLUSTRATION:© YOSHITAKA AMANO

ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog

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