PlayWayはserious simが開発中のリアルタイム戦略ゲーム『Radio Commander』のKickstarterプロジェクトを開始した。目標金額は7482ドル。7ドル(10カナダドル)以上の支援でゲーム本編が、15ドル(20カナダドル)以上で本編のほかに先行してデモ版も配布される。
ゲームの配信プラットフォームはSteamで、正式なリリースは9月を予定している。対応言語は英語音声とスペイン語、ドイツ語、フランス語、簡体字中国語およびポーランド語。ただし、コミュニティの反応次第でほかの言語への対応も検討するという。
『Radio Commander』はベトナム戦争を舞台にした一人称視点のリアルタイムストラテジーゲーム(RTS)だ。同作最大の特徴は、プレイヤーはあくまで無線機の前に座る司令官であるという点だ。利用できるのは目の前に置かれた無線機と、タグ付けやメモをすることができる地図のみ。戦場の様子は部下からの通信のみが頼りとなるため、地図にユニットの位置も自分で適切に配置しなければならない。
一般的なRTSのように、戦場を上から見下ろす神の視点は存在しない。ゲームにおける戦場の霧(フォグオブウォー)を、現実に即した形で表現したゲームと言えるだろう。
ゲームはシングルプレイ専用だ。1965年から1967年の間に行われた実際の軍事作戦をベースにした9つのミッションを戦う。戦場での敵は、どこに潜んでいるかわからないベトコンだけではない。民間人への対処、胡散臭いCIAの作戦への協力、冷笑的な政治的圧力のような要素が絡んでくるため、戦場に掛かった霧はより濃くなっていく。
ときには司令官として部下を死に追いやるような命令も出さなければならないだろう。ゲームは『プラトーン』、『フルメタル・ジャケット』、『地獄の黙示録』といったベトナム戦争映画の裏で戦っていた人々が、いかに難しい選択を迫られていたかを描く。
プレイヤーに命令を下される兵士もやはり人間だ。異なる個性があり、長所や短所を持っている。彼らの士気や物資、装備には常に気を配らなければならない。ベトナムでは敵兵だけでなく、天候や地形も敵となる。
たとえばもし、派遣したヘリがジャングルの真っ只中に墜落した場合、司令官としてどうするべきだろうか。「Leave No Man Behind」(誰も置き去りにしない)の精神で危険な戦地に兵士を送り込むべきか、あるいはこれ以上の犠牲を出さないために見捨てるか。プレイヤーは司令官として難しい決断をしなければならない。
指揮官として命令を下すことができる対象は、歩兵だけではない。ヘリや野戦砲、攻撃機による支援を命令することもできる。ベトナム戦争の代名詞とも言えるナパーム爆弾も利用可能だ。しかし、強力な兵器の運用は気をつけなければならない。爆撃予定地点に本当に味方はいないのか。敵への損害は兵器を使用するに足るものになるか。あるいは、その方法は果たして本当に正当なのか。このように命令を下す重みを描くことも、このゲームの重要な目標になっている。
戦場で戦う兵士の姿は一部を除きほぼ見ることが出来ない、あまりにも硬派なRTS『Radio Commander』。人を選ぶことは間違いないゲームだが、地図を見ることが好きであったり、兵士たちの無線通信自体が好きだという人にはたまらないゲームになるだろう。
ライター/古嶋誉幸