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「集英社が……ゲームですか?」から「あの集英社の!」と反応が変わった1年。設立から1年が経過した集英社ゲームズに、ぶっちゃけ話を聞いてきた

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 あの集英社がゲーム事業へ進出──。

 ゲーム業界を驚かせたニュースが飛び込んできたのは、ちょうど1年前の2022年3月31日。本格的なゲーム事業への進出を目指し、株式会社集英社ゲームズが設立され、ゲーム開発ならびにゲーム開発者支援を行っていくことが発表となった。

あの集英社が自らゲームを作る!? 「人気漫画のゲーム化」と思いきや、「作家とゼロから新しいゲームを何本も作る」という泥臭いインディー魂がそこにはあった

 2022年7月にはパブリッシング第1弾タイトル『キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の”小”冒険』を発売。年が明けた2023年3月には、集英社ゲームズが制作協力を務めた『ONI – 空と風の哀歌』が発売となり、4月20日には『ハテナの塔』の発売を控えている。また、マンガを原作としたボードゲームブランド『マンガボドゲ』の展開をスタートさせ、『ONE PIECE』『BLEACH』のアナログゲームも発売し、アナログ領域でも存在感を示している。

 そのほか、東京ゲームショウ2022にも巨大ブースで出展するなど、設立初年でこれだけの動きがあった集英社ゲームズ。今回、ゲームメディアとして躍進を続ける集英社ゲームズのキーマンにインタビューを……というのは、じつは建前。本音を言うと、今回インタビューをさせていただいた、集英社ゲームズ執行役員 森通治氏に興味を抱いたからだ。

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森通治氏

 この1年「集英社ゲームズってどうなんですか?」と、興味関心が高まっていたのは事実だが、筆者がもっとも印象的だったのは、集英社ゲームズのメンバーのだれに話を聞いても、じつに楽しそうにしているということだった。

 とくに森氏はそれが顕著で、ゲーム発売直前であろうが、TGS出展中だろうが、集英社ゲームクリエイターズCAMP実施中だろうが、いつお会いしても眩しいほどの笑顔で展望を話されていた。

 「楽しいことを届けるには、まず作り手側も楽しんで臨む」というのはエンタメ業界でよく聞く言葉だが、メディアという外側から見たときに集英社ゲームズが、いまもっともそれを実践していると感じた。

 そこで弊誌は集英社ゲームズの森氏に「電ファミで連載記事を持ちませんか?」とアプローチをかけたところ、「ひとまず一回やってみましょう」と快諾いただき、今回の記事掲載に至った、というわけだ。

 コラム形式にするか悩んだのだが、なにぶん時間的な猶予がなかったため、今回はインタビュー形式で記事をお届けしている。設立からの1年を振り返っていただきながら、集英社ゲームズがなぜこんなに楽しく業務を行えているのかに迫りたいと思う。

聞き手・編集/豊田恵吾
文/夏上シキ


※この記事は集英社ゲームズの魅力をもっと知ってもらいたい集英社ゲームズさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。

予想以上に反響が大きかった集英社ゲームズの設立

──集英社ゲームズの立ち上げからちょうど1年が経過しました。怒涛の1年だったと思うのですが、率直に振り返ってみての感想はいかがですか。

森通治氏(以下、森氏):
 そうですね……いろいろあったんですけど、端的な感想としては「集英社ゲームズを立ち上げて非常に良かった」です。スピード感、仕事の進めやすさという点で、法人化したあとのほうが一気に進みましたね。もちろんたいへんではあったんですが、集英社ゲームズとして法人化して良かったなというのは非常に強く感じている部分です。

──スピード感、進めやすさという点では、法人化してから具体的にどのような変化があったのでしょうか。

森氏:
 ゲーム事業は新規事業開発部としての準備期間が2年半くらいあったんですが、当時の人員の規模は関連部門のメンバーや私を含めて4人前後だったんです。そのため、受けられる案件や数に、どうしても制限が生まれていたのですが、集英社ゲームズが立ち上がり1年経って規模も20名前後まで増えまして、“できること”の幅は大きく広がりました。

──それまでは森さんと関連部門の方で4人だったんですよね。

森氏:
 はい。新規事業として動いていたときは「なんでもかんでも自分がハブにならないと動かない」という状況でしたが、今はゲームの開発部門でいうと山本(山本正美)が責任者として入ってくれていますし、宣伝や広報も専任の担当者がついたりですとか、「採用をしたい!」というときでも人事の方がいてくれたりするので、いい意味で手離れよく組織が回ってきています。

──「良かった」という手応えの中で、想定内で進んだことや想定外だったことはどのようなものがありましたか。

森氏:
 想定外のこととしては「予想以上に業界の方々からの反響が大きかった」ことです。集英社ゲームズ立ち上げをメディアさんで取り上げていただいたこともあり、一気に会社としての認知が広がりました。

 集英社ゲームクリエイターズCAMPの立ち上げのときもそうだったんですが、法人化についても「小さくスタートして少しずつ拡大していこう」という計画を持っていましたが、反響の大きさもありお声がけいただけるパートナーさんとか、デベロッパーさんとか、国内外のゲームのパブリッシャーさんも含めて、一気に会社を知ってもらえて、本当にありがたく思っています。

 想定していたというより、設計してうまくいった部分でいうと、東京ゲームショウ2022への出展ですね。じつは東京ゲームショウ2022で「集英社ゲームズとしてドンと出そう」というのは会社発表の反響を受けて決めたのですが、ゲーム業界に新参者として入る以上、「インパクトを残し、認知を取って、人、企画、企業ブランドを一気に押し上げる」というのは目標として設計した部分なので、そこはうまくハマったといいますか、想定していた動きが出来たかなという感想です。

──たしかに、TGSへの出展はブームも広く、大きなインパクトを残されたと思います。手掛けられたゲームに関してはいかがでしょうか?

森氏:
 成功という観点ではまだまだなのですが、事業計画上ではある程度想定内でうまくいっています。ただ、当初に想定していた内容だけではなく、まったく違う方向性から企画が立ち上がったりもしていますね。

 たとえば「アナログゲーム」ですね。昨年末に『マンガボドゲ』というレーベルを立ち上げたんですけど、これは事業計画にはなかったもので、採用した社員が立てた企画から始まったものなんです。おかげさまでかなりのヒット企画になりました。

 加えて、デジタルゲームも1年目に関しては「デベロッパーさんからお声がけいただく」というのは想定していなかったんですが、実際には国内外さまざまな会社さんから声をかけていただきました。そこからいろいろな企画が生まれつつあるので、そこを含めて“広がり”という面では非常に良かったと感じています。

──デベロッパーから来る連絡の件数ってどれくらいの数なんでしょうか。正直、もう見きれないくらい来ているんじゃないかなと思うんですが(笑)。

森氏:
 そうですね。TGS2022出展以降の12月くらいまでは本当に多くのお問い合わせをいただきました。申し訳ないことに、人的リソースの問題からすべてお断りしていたくらいなんです。
 今は人も増えたので「一度お話をうかがわせてください」といったパターンは増えてきています。延べでいうと、海外からのお話を含めて数十件はご連絡いただいたような感じです。直接の問い合わせもありますし、ゲーム業界出身のメンバーが多いので、その繫がりからお話が来たり。

 イベントなどに足を運んだときにも「あの集英社の!」という反応をいただけるようになったという実感もあります。新規事業開発部にいたときは、名刺をお渡ししても「集英社が……ゲームですか?」という反応でしたから(笑)。

──どうしても出版社のイメージがありますからね(笑)。

森氏:
 今は「集英社ゲームズ! 知ってます!」と言っていただけるようになったのは大きな変化ですね。

 あとはデベロッパーさんやクリエイターさん、ゲーム業界の方々が、初対面でも「集英社ゲームズがやろうとしていることをあるていど知ってもらえている」という状況は、この1年で大きく変化したと感じています。

──僕も周囲のゲーム関係者から集英社ゲームズのことをよく聞かれますし、ブランドが浸透している感じはありますよね。

森氏:
 会社としてのブランドを確立する、そのために仕掛けるという部分は意識していたことなので、1年目でそれを実現できて良かったなと。

TGS2022出展の裏側

──先ほど話題にあがったTGS2022への出展についてですが、設立1年目の会社としてみると、異例の規模感でしたよね。言葉を選ばずに言えば「よくあの規模で出したな」と思ったのですが、その裏側はどのようなものだったのでしょうか。

森氏:
 出展を決めた段階での社員数は4、5人で、開催タイミングでも10人はいなかったんですね。「とりあえず小間だけ取って、あとは腹を括ってやろう」という感じで(笑)。若くて優秀なPR担当がいるのですが、「40小間、取っていいですか?」っていきなり言うんですよ(1小間は3m×3m)。「40小間かぁ……けっこうお金かかるけど……出展するからには本気でやるか!」と判断し、社内でも承認をとって「ひとまずは場所だけを取って、何を出すかはそれから考えよう」となったんです。

 そういうやり方はあまりないとは思うんですけどね(笑)。「新しい会社だけど本気でやっている」という企業ブランディングはもちろん、「僕らは真剣にゲームを作っている」というのを見てもらいたいというのもありましたし、「こんなに大きく押し出してくれるんだ!」というクリエイターさんたちへのアピールもありました。

 加えて裏テーマとしては人材の採用というのもあったんです。「いくら集英社のグループ会社とはいえ、転職して大丈夫?」という人たちは大勢いると思っていたので、ゲーム業界の方々が多く集まる場で大きく打ち出すことにより、「あ、この会社、面白そうだな」「転職しても良いかもな」と思ってもらえたらいいなと。

──森さんはさらっとお話されましたが、その人数であの規模のブースを出す、運営をまわすというのは、相当苦労されたと思うのですが……。

森氏:
 正直、体力的にはかなりたいへんでした(笑)。とくにビジネスデーは食事をとるタイミングすらなくて、3分休憩したら呼び出される、という感じでしたね。全社員が休憩室に入ってはすぐ出ていくという(笑)。

──10人規模によるTGSでの40小間のブース運営だと、そうなりますよね。

森氏:
 あまりの多忙ぶりに、途中で「もう挨拶を受けるのをやめませんか?」という話も出たんです。ですけど、「新参者の僕らにわざわざご挨拶に来ていただいた会社さんに対して失礼なことはできないから、みんな限界まで受けてください」という指示も出したり。平均年齢が高めのベテランチームだったので、TGS後の1週間は皆燃え尽きていましたね(笑)。

 また、BitSummit、gamescom、TGS2022と連続で出展していたので、私自身もずっと家にいなかったなぁ、と(笑)。ただ、それぞれのイベントの特性であったり、海外からどのような目で見られるかとか、1年目で多くの学びを得られたので、その経験は2年目以降にしっかりと活きると思っています。

──新規事業開発部のころから、森さんは各地のゲームイベントに精力的に足を運ばれていましたよね。

森氏:
 正直、「ゲーム事業を始めようかな」と考えていたときの視察の参加と、ゲーム事業をスタートさせてからの「出展する側」での参加では、雲泥の差がありますね。見ているものも違いますし、見えているものも違いました。新規事業開発部のころはとりあえずウロウロして「面白かったな、疲れたな、帰ろうかな」くらいの感じだったんですけど、立場が変わると「このブースはどんな目的があるのか」、「人の集まり具合はどうか」、「このゲーム、面白そうだからスカウトできないか」、「どういう展示をすると人が集まるのか」など、見方が180度変わった感じです。

──なるほど。ちなみに、TGS2022の出展費は先んじて予算をとられていたのですか。

森氏:
 全体の年間予算はもちろんあるのですが、TGSへの出展費用は入れていませんでした。ですので、改めて代表取締役、取締役に説明をして「予算をください」と(笑)。

──それができるのもすごいですし、それで通るのもすごいですよね(笑)。現場が「40小間を取りたい」と考えても、明確な理由はもちろんですが、数値的な費用対効果などの詳細な説得材料がないと、ふつうはOKしてもらえない規模の話ですよね。でも、集英社および集英社ゲームズは、その判断ができる。ここはほかの会社にはない明確な強さだと思います。

森氏:
 集英社ゲームズの経営陣は集英社の経営陣と同じこともあり、「1年目はとにかく積極投資をしていく」という言葉をもらっていました。その文脈で「発表の反響がとてもよくて、会社として成長の仕掛けの起点となる流れを作りたい。そのためには大きな予算が必要となるけど、チャレンジさせてほしい」と伝えたら、二言返事くらいで「よし、やろう」と言ってもらえたのはありがたかったですね。

 僕が集英社に入社してからずっとレポートラインとしてついている茨木(茨木 政彦。集英社専務取締役)という取締役がいて、かなり“攻め派”の取締役なんですよ。本来であれば、身の丈に合うブースのサイズだと10数小間とか、大きくて20小間くらいだと思うんですが、その規模で出したときに「なんだお前、ビビってんのか」と言われるのがわかっていましたので(笑)。長い付き合いですから「本気でゲーム事業をやるって偉そうに言っておきながら、小さく縮こまっているのか」と怒られる気がしたので、「茨木が逆にドン引きするくらいのことをやったほうがいいんじゃないか」と。

──実際の反響はどうだったのですか?

森氏:
 代表含めて役員はスケジュールを空けて全員視察に来てくれて「おぉ、思ったよりデカいな、お前本当にこんな規模で出したのか」という反応でしたね(笑)。

 外へのアピールという面もあるんですが、当時は集英社の内部にも「集英社ゲームズって何をやってるの?」という認識が多かったんですね。TGSではお付き合いのある会社さんも出展されているので、『少年ジャンプ』だったり『Vジャンプ』だったり、ライセンス部門のメンバーも別の仕事で来ているんですよ。現地で「会場のMAPを見たらデッカいブースがあるなと思って来てみたよ。びっくりしたけど、意外とちゃんとやってるんだね」といった、社内的なコミュニケーションが生まれたことも面白かった話のひとつですね。

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(画像は会場MAP + フードコート | 展示 | TOKYO GAME SHOW 2022 – 東京ゲームショウ2022より)

 あと、集英社ゲームズにはSIE ジャパンスタジオ出身者が多いので、ブースがSIEさんの同窓会場みたいになっていたことも面白かったです(笑)。「集英社ゲームズのブースに行けば誰かいるらしいぞ」という口コミがあったらしくて、ある意味でそういった場を提供できたのは良かったと思っていて。僕らもSIEジャパンスタジオのゲームやスタジオの方々の考え方が好きでしたし、憧れの対象でもあったので、そうした方々に「いいブースだね」と仰っていただけたのはうれしかったですね。

──森さんのSIEに対する憧れとは、具体的にどういった部分なのでしょうか?

森氏:
 まさに集英社ゲームクリエイターズCAMPがそうなんですが、この企画は「PlayStation C.A.M.P!」を今の時代に再現したいという思いで始めました。当時の尖ったゲームがたくさん出ている時代、その尖ったゲーム性を活かしつつ、今だからこそできることが多くあると思っていて。マルチプラットフォームや少人数での開発という部分もそうですが、「時代、環境、状況が変わっても、大事にしていることは一緒」ということをやりたかったんです。SIEの吉田(吉田修平)さんにもいまだに応援していただいていますし、そういったリスペクトは大事にしています。

──TGS2022には、「集英社と付き合いのあるゲームメーカー」も多数出展されているわけですが、そうした会社さんからの声はどういったものだったのでしょうか?

森氏:
 いろいろな視点があると思うのですが、直接聞いた話だと「本気ですね」というご意見が多かったですね。あとは「いい意味で集英社さんらしいブースですね」というものもありました。すでにあるIPを前面に押し出すのではなく、新しいチャレンジをしているとか、見たことなさそうなゲームの企画が並んでいるとか。

 とくにKONAMIさんのブースでは『ONI – 空と風の哀歌』のパッケージ版の販売をお願いしていたこともあって、特別にステージイベントを組んでいただいたりもしました。よく知っている関係だからこそ、お互いにやりやすかったです。CECAの役員の方々にもスムーズに受け入れていただいたので、外から見た壁みたいなものは思っていたよりないんだなと感じましたね。

──TGSへの出展により、「あ、集英社ゲームズはこういったゲームイベントに出展するんだ」と認知されましたし、「今後どのイベントに出すのかな」など、ゲーマーが気にするようになったと感じています。

森氏:
 我々としてはイベントは「コミュニケーションの場」であると考えています。そのうえで、ユーザーさんとのコミュニケーションはもちろん、関係会社さん、パートナーさん、クリエイターさんといった方々と「どういったことを伝えたいのか」という部分が重要なんですね。その過程でイベントブースが必要であればやりますし、必要ないのであれば別の方法を考えますし。

 ちなみに、TGS2023に関しては、出展自体をどうしようかと検討している段階です。さきほどお伝えしたように、TGS2022では「我々は本気です」というメッセージを伝えるという目的がありました。「会社名は知っているけどタイトルは知らない、あの会社はどんな会社なのか」という部分はいまだにあると思っていますので、よりゲームタイトルを知っていただくためのコミュニケーションは今後も強化していく必要があると考えています。

今年の集英社ゲームズは何を目指す?

──gemescomにも出展されていたわけですから、E3にも出していただいて、世界3大ゲームショーを制覇してほしいですね(笑)。

森氏:
 ちょっとシンドいかもしれないですが……夢は大きく持たないといけませんね(笑)。2023年は海外に力を入れつつも、全体としては仕込みの期間になります。新しいアイデアは豊富に出てきているので、大きなチャレンジをしていきたいですね。講聴ではなくビジネスミーティングが目的ですが、GDC(Game Developers Conference)やPAX Eastにも参加する予定です。

──なるほど。海外にもアンテナを張っていくわけですね。

森氏:
 BitSummit立ち上げメンバーのアメリカ人の方にジョインしてもらったほか、海外系に強いプロデューサーも入ってくれたので、GDCでは彼らと一緒に海外のパブリッシャーさんやPR会社さんと意見交換をしたいなと。彼らはアジアのパブリッシングに悩んでいますし、僕らは北米のパブリッシングに悩んでいる。お互いに協力できる部分があると思っているので、幅広く情報のやり取りをしたいと考えています。

──集英社ゲームズとしては専門の海外事業部はあるんしょうか?

森氏:
 まずは北米の窓口を今年から立ち上げています。PR担当も兼ねていますが、ネイティブのスピーカーが入社してくれて、4月からはアジアの専門担当者も入る予定です。集英社ゲームズタイトルを宣伝、プロモーションしていくチャレンジはもちろん、パブリッシャーとして海外の優れた企画を持っている人たちのスカウティング、投資のチャレンジ。そのふたつの役割を持たせたいと思っています。

 日本のアニメが好きとか、日本のゲームで育ってきたとか、「日本のパブリッシャーと手を組みたい」という方は実はかなり多いんだと今年は実感しました。昨年はそういったお話は人的リソース不足からお断りせざるを得なかったのですが、今年は体制が出来上がったのでいろいろとやっていきたいですね。具体的な内容は今後発表する予定です。

──集英社ゲームズが手がけるタイトル、パブリッシャーとしてのイメージとして、誤解を恐れずに言うと、「集英社ゲームズ=インディーに出資する会社」という印象が現状はあるんじゃないかなと思っているのですが、そのあたりはいかがですか?

森氏:
 たしかに、そのあたりを改めて説明したほうがいいですね。現状としては「あらゆる選択肢を持っているからこそ強いし、あえて選ばずにやる」という方針があります。1年間やってみた経験からいろいろな可能性を感じていますが、たとえば「小規模なチームの方々と尖ったゲームを作る。そのために積極投資する」というのは引き続きやっていきますし、イベントでのスカウトなどもしっかり行っていきます。

 また、デベロッパーさんからお声がけいただくことも多いので、企画の持ち込みであったり、弊社のプロデューサーもベテランのキャリアの方が揃ってきたので、たとえば「一緒に仕事をしたい」などあれば企画次第ではありますが「やりましょう」と対応できます。規模感が大きいものにも投資ができる資金力もありますので、いわゆるパブリッシャーとデベロッパーという、ゲーム業界的には一番分かりやすい関係性からも独自のタイトルを生み出していければと思っています。日本のゲーム会社さんには世界で戦っていける強みが多くありますので。

 あとは大手のゲーム会社さんとの協業です。昨年、NetEaseさんとの協業を発表させていただきましたが、それに勝るとも劣らないような大きな会社さんからの企画の問い合わせもあるので、そうしたものを集英社グループが培ったクリエイティブ能力を活かしてやっていく。資金力もありますし、漫画家さんとコラボするということも事例ができてきましたので、規模を問わずに積極的にチャレンジしていきたいですね。

──集英社のIPを使った作品はどうでしょうか。

森氏:
 『マンガボドゲ』では集英社のIPを使った企画をやりました。その事例も出来たこともあり、編集部からは「○○の作品でゲーム企画をやれないか?」と連絡をもらうことも増えてきました。ライセンス作品含めて既存のパートナーシップとはきちんと棲み分けたうえでですが、「せっかくグループ内にゲーム会社があるならIPを活かしたビジネスモデルを構築したい」という話は集英社内からもあがっているので、そうした企画は引き続き仕掛けていきたいですね。

 とにかく「何でもできる」というのは強みだと思います。グループの中にいるからこそ持てる情報の力、精度の高さであったり、交渉の窓口にもなれる強さもあります。外の会社さんからは「今まではどこに相談すればいいか分からなかったけど聞いていいですか?」とご相談を受けたり、内部からは「あの会社さんとこういうゲームを作れないか?」という話をもらったり、集英社ゲームズがハブになって集英社グループとして総合力で新しいエンタメを生み出していけるのは面白いかなと思います。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
ライター
『アマガミ』に脳を破壊された結果、フリーランスライターに。FPSやTPSをメインに遊ぶトリガーハッピーだが、ノベルゲーやレトロゲーも好む雑食ゲーマー。美味しいご飯とお酒もゲームと同じくらい好き。
Twitter:@Shiki_Natsugami

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