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『サイバーパンク2077:仮初めの自由』新シナリオは“ドロドロ”なシナリオと「全要素の進化」で“集大成”になる。新パーク「あーしの力」「エッジランナー」をはじめ、気になる新要素をローカライズマネージャー・西尾勇輝氏に聞いてみた

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 2022年に発表され、ついにPS5、Xbox Series X|S、PCにて9月26日に発売することが明かされた『サイバーパンク2077』の大型拡張パック「仮初めの自由」

 本編では圧倒的に“過剰な”情報量で主人公・Vの視点から「ナイトシティ」を紡いだが、新たな物語を描く「ドッグタウン」に訪れると、そこには未だ知らぬ2077年のダークサイドが姿を現すのだ。

 新たに本作を楽しめる喜びと先の読めない不穏な物語、そしてリワークされた戦闘や追加されたサイドコンテンツにより、『サイバーパンク2077』は発売から約2年半の歳月を経て更なる進化を遂げることとなる。

 と、仰々しい前口上は、上記の映像を見れば最早不要だろう。むしろ「仮初めの自由」がどのような作品になるのか、非常に気になるところだ。

 そこで、本記事ではCD PROJEKT REDにて『サイバーパンク2077:仮初めの自由』のローカライズマネージャーを務める西尾勇輝氏にお話を伺い、「仮初めの自由」と、同作の日本語ローカライズに関する詳細をお届けする。

『サイバーパンク2077:仮初めの自由』西尾勇輝氏インタビュー_001

 新シナリオは「レリック」により死期が迫るVが、新合衆国大統領ロザリンド・マイヤーズや彼女の右腕であるネットランナー・ソングバード、7年前の戦争にて諜報員として活躍したソロモン・リードと出会い、陰謀や策略に巻き込まれていく「スパイスリラー」となる。

 先に結論から述べておくと、「仮初めの自由」は「新合衆国」というモチーフをキーに“ドロドロ”の物語を描き、『サイバーパンク2077』のあらゆる要素を発展させる拡張パックになっていた。

 また、アニメ『サイバーパンク:エッジランナーズ』にちなんだ要素として新パーク「あーしの力」「エッジランナー」も実装され、本編を楽しんだプレイヤーも初心者も、アニメを楽しんだファンにも楽しめる字義どおりの「集大成」になるという。

 なお、本インタビューは「仮初めの自由」のメディア向け先行体験会とあわせて実施されている。「仮初めの自由」の概要を知らない方は、下記記事に目を通して頂きたい。

『サイバーパンク2077:仮初めの自由』西尾勇輝氏インタビュー_002

取材/豊田恵吾、りつこ
文/りつこ
編集/柳本マリエ

ドロドロの新シナリオに刮目せよ!本編の魅力に新たな風を引き込む

──本日はよろしくお願いいたします。拡張パック「仮初めの自由」はストーリー、世界観、戦闘、サイドコンテンツなど、『サイバーパンク2077』のすべてを進化させたコンテンツであることが伺えます。西尾さんとして特に見どころはどの要素になるのでしょうか?

西尾勇輝氏(以下、西尾氏):
 見どころはやはりストーリーです。ぜひ新シナリオに注目してください!

 メディア向けのハンズオンでプレイして頂いたのは「仮初めの自由」の冒頭で、これから事件の裏に隠された陰謀や人間関係、登場人物の歴史も描かれます。先行プレイでは冒頭しかお見せできないのが本当に残念です。

──実際にプレイすると「登場人物全員に騙されてるんじゃないか?」と不安になってしまいました(笑)。

西尾氏:
 Vとして本作をプレイするにあたって、この選択が本当に自分のためなのか、疑念を持つと思います。「大義のため」といいつつ「誰かの自己利益のためなのではないか」という葛藤は従来からあるものの、新シナリオはその疑念や葛藤が顕著で、かなりドロドロしていると思います(笑)。

 今回の「仮初めの自由」は、本編を拡張する新しい物語を追加すると同時に、実は本編のエンディングも1つ追加されているんです。また、本編でなかなか描かれなかったジョニーの過去もより掘り下げられ、物語や世界観は正に大きく拡張されました。

 一言でいうと「重厚なストーリー」になっているので、期待して頂きたいです。

──ジョニーと再会し、新たな会話ができるのがとても嬉しいです。

西尾氏:
 ジョニーとの会話はローカライズしていてもすごく楽しいですね。「どんな嫌味や皮肉を言わせようかな」と悩みますし、何より単純にかっこいい(笑)。

 やはりジョニーはVにとって寄生虫でありながらバディなんです。今回のシナリオでは特にジョニーの視点が参考になります。そこに“かなり重要な真実”が隠されていることもあるので、「また言ってるよ」と聞き逃さずにぜひ耳を傾けて聞いてあげてください。

『サイバーパンク2077:仮初めの自由』西尾勇輝氏インタビュー_003

──会話がこまかく区分されることや、選択肢によりゲームの展開が変わることで、「油断して話すのはダメ」なことを思い知らされる設計になっていると感じました。

西尾氏:
 その点に関しては一人称視点の妙と言いますか。例えば、本作でロザリンド・マイヤーズに宣誓するシーンではジョニーの方を向かなくても会話ができるものの、ジョニーに視線を移すと結構面白い顔芸をしているんです(笑)。

 ギミックではないものの、状況の解釈がプレイヤーにゆだねられ、プレイヤー次第で受け取り方が変わります。ですので、「会話のなかで視点を自由に動かせる」ことは、本編に続いて「仮初めの自由」の魅力になっていると思います。

──プレイさせていただいた冒頭でも、会話シーンが特に印象的でした。

西尾氏:
 私たちは、新しい体験を提供するのはもちろんのこと「『サイバーパンク2077』にある“魂”を引き継いだまま、いかに新しいことにチャレンジできるか」というコンセプトで制作しています。

 CD PROJEKT REDは「選択と結果」というテーマのもとストーリードリブンなゲームをお届けしたいと考えているので、「仮初めの自由」でもその根本は変わらずに継承されています。

──なるほど。

西尾氏:
 加えて、「仮初めの自由」では会話の細かい選択肢が多くなっているように、新しいアプローチも用意しています。

 とくに今回は「スパイスリラー」という、ゲームとして殆ど描かれなかったジャンルに挑戦しました。その新しい挑戦を『サイバーパンク2077』にいかにして融合させるのか、という点が勝負どころでした。

 テーマの性質上、新シナリオではどんでん返しもあり、裏切りもあり、意外な展開にきっと出会えると思います。

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──今回のDLCで追加されるシナリオでは、7年前に終結した「統一戦争」やこれまで描かれてこなかった「新合衆国」のメンツが登場することで、2077年から見た「過去」に焦点が当てられるのでしょうか?

西尾氏:
 「ナイトシティ」は自由都市という変わった体制を持つ場所であるがゆえに、政府ではなく企業が力を持っています。同時に「新合衆国」という単語はこれまでも出てきましたが、あまり大きく取り上げられることはありませんでした。

 そういった意味で、新たな権力を持つ勢力として「新合衆国」にフォーカスした内容になっています。

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画像は『サイバーパンク2077』より

──キャラクターを介して「過去」が描かれることで、プレイヤーが感じる「ナイトシティ」や「ドッグタウン」のイメージもより立体的に拡張されるように思います。

西尾氏:
 未来から見た過去という点に関しては、これまでに登場したジョニー・シルヴァーハンドの新しい側面を描くことにも繋がります。そのため、「良い機会」になっているとポジティブに認識しています。

──冒頭をプレイすると新合衆国大統領のロザリンド・マイヤーズなど、新キャラクターのバックグラウンドがストーリーの鍵を握っている予感を覚えましたが、そのあたりはいかがでしょうか?

西尾氏:
 『サイバーパンク2077』を最初にプレイした際は、「目に映る全てを知らない状況」でキャラクターと出会っていきます。一方で、「仮初めの自由」のシナリオで登場する新キャラクターたちは、すでに「勝手を知ったる世界」に登場するわけです。

 そのため、世界観にすごくフィットするかたちで、登場人物の過去にもフォーカスできていると考えています。

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(画像はCyberpunk 2077: Phantom Liberty — Official Teaser – YouTubeより)

拡張パック「仮初めの自由」は『サイバーパンク2077』の集大成。これから遊ぶユーザーにも最適

──アニメ『サイバーパンク:エッジランナーズ』の盛り上がりを経て、「仮初めの自由」が9月26日に発売されることが発表されました。これまでの開発はどのようなものでしたか?

西尾氏:
 アニメの反響は我々の予想をはるかに上回るものでした。そのおかげで『サイバーパンク2077』のゲームに戻ってきてくれたプレイヤーの方々も多かったですし、アニメをきっかけに多くの新規のプレイヤーにプレイして頂いたことは嬉しい限りです。

 不安定なローンチを行ってしまった事実はあるものの、地道にバグの修正、クオリティーオブライフの改善、ゲームプレイのバランス調整、コミュニティの皆さまから頂いた要望の実装などを約2年半ほど地道に行って来ました。

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(画像はエッジランナーズアップデート(パッチ1.6)- パッチノート – サイバーパンク2077 ― ウィッチャーシリーズの開発会社による最新RPGより)

 そのようにコツコツと改善を行ってきたからこそ、アニメのヒットによる『サイバーパンク2077』の再燃も起きたと思っています。努力を積み重ねてくれた開発チームには本当に感謝しています。

 そういったアップデートやアニメ人気の裏で、ずっと「仮初めの自由」を仕込んでいたというのが、今日に至る道のりです。さまざまな意味を含めて、やはりこれが「集大成」であって、我々が皆さんにプレイしていただきたい『サイバーパンク2077』がここにあると思っております。

──『ウィッチャー3』でも驚かされましたが、今回の拡張パックも“凄まじい”ことになっていると感じました。いわば“真・サイバーパンク”といったようなクオリティに仕上がっているなと。

西尾氏:
 そうですね。本当にできることを“全てやってみました”というような感じです(笑)。いろいろあってここまでようやくたどり着けました。

 ただ、これほどの大型コンテンツになると、どうしても何かしらの問題は発生してしまいますので、今後もアップデートはある程度続くかたちとなります。しかしながら『サイバーパンク2077』というタイトルに関しては、「仮初めの自由」が集大成になると思っていただきたいです。

 拡張が「仮初めの自由」のみであることは去年正式に発表していますが、我々は今後、『サイバーパンク2077』の続編となるプロジェクト「Orion」の方に注力していくかたちとなります。

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(画像はCD PROJEKT REDの公式Twitterアカウントより)

──「仮初めの自由」では新たなエンディングやシナリオが追加されますが、クリア後ではなく、従来の物語から分岐するように新ストーリーが追加されるのでしょうか?

西尾氏:
 現時点で新ストーリーを楽しめる具体的な時期は公開していないのですが、「仮初めの自由」では、Vとジョニーの関係性が既にある程度出来上がっている段階になります。

 ゲームをある程度進めた状態で「仮初めの自由」はプレイ可能です。いずれにせよ、新規のプレイヤーも、既に本作をプレイしているユーザーも問題なく混乱せずに遊べるようになっています。

 メディア向けの先行プレイでお見せしたコンテンツ以外にも「仮初めの自由」にはさまざまなリワークが施されます。プレイする際には随時チュートリアルの役割を持つポップアップが表示されるため、プレイフィールの変化にもスムーズに導入できるようになっていると思います。

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(画像は『Cyberpunk 2077』公式Twitterアカウントより)

──なるほど。本編を未プレイでも、「仮初めの自由」を機にプレイしても問題なく遊べそうですね。

西尾氏:
 そうですね。初心者の方でも「仮初めの自由」がリリースされるタイミングは本作を始めるには凄く良いタイミングだと思っています。もしかしたら情報が多すぎて頭がパンクしちゃうかもしれませんが(笑)。それぞれのペースで世界観や物語、登場人物の理解を深めて頂きたいです。

気になる新要素を一挙に紹介。新たな生態系を持つ新マップ「ドッグタウン」に『エッジランナーズ』ファンも嬉しい戦闘のリワーク

──『サイバーパンク2077』では、舞台となる「ナイトシティ」は「街が生きている」ような感覚がありました。「仮初めの自由」の舞台となる新マップ「ドッグタウン」はどういった場所なのでしょうか?

西尾氏:
 「ドッグタウン」は治外法権に近いような独立した地区になっており、ナイトシティの法律が及ばず、NCPDも介入できない。さらにはコーポも介入しない、かなり特殊な地区になっています。

 その代わり独裁政権が敷かれているのですが、コーポに追われ「ナイトシティにいれば殺されてしまう」といった事情を持つ人を結果として救う場所にもなっています。雰囲気も「ナイトシティ」と異なり、廃墟を住民が再利用したり、放棄されたコンテナを勝手に積み上げてアパートにしたりとユニークな建築物も多いことが特徴です。

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 これまで登場した「ナイトシティ」のさまざまな地区にもカラーがありますが、「ドッグタウン」も固有の特色を持ち、同時に密度の高い独自性を持っていると思います。

 また、“最も危険な地域”とされることで、物騒さは更に増していて、同時に貧困に苦しむ人も多いという点も特徴かなと思います。

──実際にプレイすると、「ドッグタウン」のなかだけでも凄まじい情報の密度を感じさせられました。

西尾氏:
 そうですね。探索だけでなく依頼やサイドジョブを介して、「ドッグタウン」の独自の生態系に触れていければより楽しく遊べるかと思います。

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──「仮初めの自由」より移動でスタミナを使わなくなったことで、存分に探索が楽しめそうですね。

西尾氏:
 そのぶん射撃でのスタミナ消費が追加されていたりしますが、スタミナ消費を抑えるパークを取得したりと、ビルド次第で自分にマッチしたVで戦えると思います。

 ただ、「あっちをとればこっちをとらず」というのがスキルツリーの醍醐味というか、常であると思うので、そこは悩みながら構築していただきたいですね(笑)。

──本作の戦闘やビルド要素といえば、アクション要素を使いこなし「本当に同じゲームをプレイしているのか」と思うようなゲームプレイをするユーザーも印象的です。

西尾氏:
 特に近接系が上手い人の“見せプ”は凄いですし、射撃においてもヘッドショットしかしないような人もいて驚きました(笑)。

 今作もさまざまなパークでプレイできるようにサポートをしており、これまでに存在したビルドをさらに強化するようなコンテンツも用意しています。プレイする際にはいろいろ試してみてください。

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──先行プレイでは「カタナ」を使用するビルドでプレイしましたが、かなり気持ちよく戦えるように進化している印象でした。

西尾氏:
 キャラビルドによっても印象は変わると思いますが、やはり「カタナ」を使っている方は、弾丸を弾く新アクションなどが特に気持ちが良いと好評でした。スレッジハンマーを使えるビルドも「衝撃波」を与えることが出来たりと、プレイして頂いた方には近接戦の爽快さを感じて頂けたように思います。

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──アニメ『サイバーパンク:エッジランナーズ』を踏まえての開発となることで、アニメのファンからの声が活かされているところはありますか?

西尾氏:
 『サイバーパンク:エッジランナーズ』ファンの皆様からの声を反映させた訳ではないのですが、本作より登場する新パーク「あーしの力」が登場し、アイコンがアニメ版のキャラクター「レベッカ」になっている点などが挙げられますね。

 あとは、アニメの主人公・デイビッドがアイコンになっている新パーク「エッジランナー」が登場します。

 いままでは「サイバーウェア」を限度無くインストール出来ましたが、「仮初めの自由」ではレベルに応じて限度が用意されます。この容量は超えられず、限度はレベルアップと同時に増えていくのですが、「エッジランナー」を取得することで、この限度を超えることができるんです。

 『サイバーパンク:エッジランナーズ』にて、デイビッドはゴリゴリのサイバースケルトンを装備し、最終的にはサイバーサイコに成りかけます。それにちなんで、サイバーウェアの装備上限を最大で50ポイント超えることが出来るようになりました。
 
 ただ、超過ポイントひとつにつき、HPがどんどん減るようになってしまいます。必ずしもファンの要望に応じて実装されている訳ではないのですが、アニメのエッセンスを取り入れた新要素になっています。

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編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。
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幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto

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