美しいビジュアルとピアノの調べに乗せて、失われた生命を再生させていく、ポストアポカリプス(終末後の世界)を描いたスマホ用の創世ミニアドベンチャーゲームが公開されています。
『World for Two』です。
個人作成のゲームですが、雰囲気が最高に良く、それだけで一見の価値があります。
水面や床にドットグラフィックの風景が映り込んでいる様子は『Kingdom: New Lands』に似ていますが、それよりさらに幻想的で美しく、メインテーマのピアノソロ、さらに各エリアのBGMはとても優しい曲で、プレイを通して心地よい気分にさせてくれます。
ゲームの目的も自然や生物から「DNA」を集め、滅びに向かう世界で生物を創り出していく、壮大で感傷に浸れるもの。
一目ですぐ「あぁ、これは評判になるな」と思えた作品です。
しかもこれでアプリは無料。広告もありません。
あるのはカンパ(制作支援)の課金のみ。
中盤から作業感が強くなるのが難点ですが、登場してすぐにダウンロード上位となったのもうなずけます。
主人公はアンドロイド。
誕生してすぐ、最後の人類である博士から、生物創造の手伝いを頼まれます。
この世界がどうして滅びているのか、過去に何があったのかは、ほとんど語られません。
研究所や荒野に点在する遺物から、何となく察することしかできません。
まずは外に出て、器のような装置から「自然エネルギー」を採取します。
これを研究所の「DNA生成装置」に使うと、「人工DNA」を作り出せます。
生成した人工DNAを「生物創造装置」でかけ合わせると、最初の原始生命体「アメーバ」が誕生します。
生み出された生物は外をふよふよ漂っているので、探し出して調査。
これで「生物DNA」を得られます。
生物からDNAを採取する際には、ちょっとした遺伝子のパズルを行います。
といっても、いくつかの選択肢の中から正解を選ぶだけの、とても簡単なもの。
プレイヤーを悩ませるようなものではありません。
以後は「生物DNA」と「人工DNA」をかけ合わせ、進化先の生物を生み出していきます。
どういう組合わせで新生物が誕生するのかは、やってみないとわかりませんが、最初は使えるDNAの種類が少ないため苦労することはないでしょう。
また、メニューの「BOOK」で進化系統図を確認できるので、どの生物から枝分かれするのかを予測できます。
生物を増やしていくと、博士から新たな地域に行くのを進められます。
最初の沼地では水棲生物しか作れませんが、昆虫が生息していた「森」や、爬虫類や両生類が生きていた「砂漠」に行くことで、新たな自然エネルギーを得られ、より多くの生命を創造できるようになります。
他の地域へは、エリアの端からいくことができます。
そんなに広くはなく、ダンジョンのように入り組んでいるわけでもありません。
また、移動済みのエリアには「MOVE」のコマンドでワープできるため、移動の手間はかかりません。
ただし、作り出せる人工DNAや、生み出した生物のDNAが増えてくると、組合わせを探すのが大変になってきます。
組合わせが違っていた場合、DNAは無駄に消費されてしまいますが、生物から採取できるDNAは一個体あたり3つまでで、3回採取した生物は「死」を迎えます。
足りなくなった場合、またその生物を生み出して探しに行かなければなりませんが、それを生み出すのに必要な生物のDNAがない場合、その前提の生物から作り直さなければなりません。
これは正直、めんどくさい。
アンドロイドに「死」を見せるためか、DNAの採取で減少した生物の体力は回復することはなく、繁殖することもないのですが、これでは無駄に手間がかかるうえに、生命が再生していく実感も乏しいです。
DNAの組合わせについては、ある場所で得られる情報によりかなり絞ることができるのですが、やはり回復や繁殖は取り入れて欲しかったのが本音です。
クリアまでは2時間ほど。そんなに長いゲームではありませんが、雰囲気を楽しむ作品はダラダラ続くのも良くないため、このぐらいで丁度よいと思います。
スマホで遊べる雰囲気の良いドットグラフィックのミニアドベンチャーとして、『マジョのシマ』や『Strange Telephone』に並ぶ秀作だと思います。
なにより、これをタダで最後まで遊べるのはとてもお得。
ぜひ体験して欲しい作品です。
World for Two
失われた生命を創り出していく終末世界のアドベンチャー
・アドベンチャー
・Shinichi Nishimori(日本、個人)
・無料
文/カムライターオ
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