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対馬に30年住む地元民が『ゴースト・オブ・ツシマ』をプレイして、思うこと。「対馬」と「ツシマ」の共通点を実際に取材して調べてみたら、大量に仕込まれた「地元ネタ」にワクワクが止まらない

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ツシマの植物と対馬の植物

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(画像はSteam版『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』のゲームプレイ映像より)
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(画像は対馬の崖沿いを撮影)

『ゴースト・オブ・ツシマ』の崖沿いに生息している小さな白い花は、現実の対馬でいう「ハクウンキスゲ」を彷彿とさせる。この花は6月~7月に開花する陸生のお花なのだが、ほとんどを鹿が食べてしまうため、歩くことすら難しい崖沿いのものしか現在は生き残っていない。

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(画像はSteam版『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』のゲームプレイ映像より)
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(画像は対馬の紅葉街道付近を撮影)

次は『ゴースト・オブ・ツシマ』の美しい紅葉の並木だ。本作における紅葉は、主人公である仁の訓練時代から決闘シーンまで、重要な場面を演出し、本作を象徴するような存在感を放っている。

現実の対馬では、「舟志のもみじ街道」が有名だ。秋頃になると道沿いの紅葉が一気に紅葉し、地元民や観光客にとって人気のスポットとなっている。

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(画像はSteam版『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』のゲームプレイ映像より)
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(写真は浅茅湾崖沿いにて撮影)

『ゴースト・オブ・ツシマ』には「紫の冠」という地名で花畑が広がっている地域があるが、これによく似た色の花である「ゲンカイツツジ」が対馬の浅茅湾に自生している。時期になったら花見も行われるほど地元では親しまれている植物だ。

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(画像はSteam版『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』のゲームプレイ映像より)
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(画像は対馬に自生するヒトツバタゴを撮影)

『ゴースト・オブ・ツシマ』で主人公の境井 仁が習得する必殺技「紫電一閃」のエピソードでは、雷鳴轟く決戦場に白い木がはえている。

対馬で白い花を咲かせる木といえば、「ヒトツバタゴ(別名:海照らし、またはなんじゃもんじゃ)」が有名だ。対馬の北部に位置する鰐浦(わにうら)では、5月初旬ごろには大量に開花してお祭り騒ぎになる。

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(画像はSteam版『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』のゲームプレイ映像より)

『ゴースト・オブ・ツシマ』のフィールドには、ちょくちょく彼岸花も咲いている。対馬でも豆酘に彼岸花が咲いており、季節を感じさせる風景が広がっている。そのほかにも琴のご神木⇒対馬の琴のイチョウなど、紹介したいものは後をたえない。

『ゴースト・オブ・ツシマ』に込められた幻想的な日本

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(画像はSteam版『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』のゲームプレイ映像より)

クソデカ大仏

次は、「これはありえない!」と思えるほど幻想的かつファンタジーすぎる『ゴースト・オブ・ツシマ』の風景を紹介したい。一番最初に「!?」とリアクションをとってしまったのはやはりこれ。もはや説明不要ッ!いくら石材とゆかりのある対馬だとしても、さすがにウルトラマン級の大仏は存在しない。

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(画像はSteam版『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』のゲームプレイ映像より)

続いて、この雪景色だ。青森かな?と一瞬、勘違いしてしまう風景だ。

対馬は日本の中でも九州に近い位置にあるので、来島するお客さんは比較的温暖な地域だと思う方が多い。ところが、対馬は冬になるとめちゃくちゃに寒い。雪国の韓国でキンキンに冷やされた北風がダイレクトに吹いてくるので、本当に寒い。しかしながら、雪はほとんど積もらない。積もるとしても年に一度くらいだ。

そもそも、『ゴースト・オブ・ツシマ』の對馬は南部と北部を行き来するだけで秋模様と冬景色が両方楽しめるというファンタジーすぎる場所になっているので、突っ込むだけ野暮かもしれない。

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(画像はSteam版『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』のゲームプレイ映像より)

お次はこれだろうか……「誰が参拝するんだよこの神社」って位置にあるアクロバティック神社。マジで誰が参拝するの?ここに行けるのはSASUKEの選手くらいだろう。

幸い、仁はゆなの弟であるたかに作ってもらった鉤縄(グラップリングフックのようなもの)と、ちょっとした突起があればつかんで登れてしまう化け物じみたフィジカルがあるので、難なく参拝できてしまう。むしろファンタジーなのは、仁の体力なのかも。

お次は“温泉”だ……こんな所あったら、行ってみたいよね。

残念ながら、ここまで源泉があふれ出ている所は対馬には存在しない。数か所、銭湯やお湯にはいれる施設は存在するが、特に序盤に出てくる「日吉の湯」というものはない。

ないのだが、対馬は約40年前までイカ漁が盛んで、港町である厳原町には日本全国から出稼ぎにきた漁師が殺到し、一時期は銭湯や旅館繁華街がバブリーな時代もあった。

現在では漁獲量も減少傾向にあるが、その名残りとして飲み屋街が今でも対馬には残っている。

地元民が『ゴースト・オブ・ツシマ』をプレイして、思うこと

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(画像はSteam版『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』のゲームプレイ映像より)

作中で、仁は歌を詠む。対馬の城山でも、日本を守るべく城山にとどまっていた防人(さきもり)たちが、故郷を思う歌を詠んだ。その中のいくつかは、「万葉集」に残っている。

筆者はここまで書いてみて、正直に言うと「まだまだ入口ほどしか対馬を紹介しきれていない」と感じる。これまで私を育ててくれた対馬のさまざまな先輩方が、「なんで野鳥を紹介しないんだ!」「爬虫類は!」「偉人は!」「モンゴル人のことは? なんでせめてきたのか説明しないの?」「歴史・交流は!?」と、スタンドの如く背後に立ち叫んでいるかのような幻覚さえ覚えている。

強いて付け加えるとしたら、元寇の船を沈めたと言われる神風伝説だろうか。さまざまな専門家が研究対象としているものなので、詳細は専門家の方々におまかせするが、地元に住んでいる人間としては対馬の韓国側と福岡側の海に台風が通過するのはよくあることなので、時期が合致すればありえなくはないのかも、と感じる次第だ。

作中で、“風”は仁を導く案内役として登場する。ミニマップなどみなくても風が優しく導いてくれる、オシャレな神演出だと感じた。

あらためて、本作を通じて風光明媚な日本の原風景に対する浪漫と情熱を強く感じた。やはりプレイしてみて、対馬ネタがふんだんに取り込まれていると実感する。対馬を、ひいては日本や時代劇が相当好きでリスペクトしていないと、ここまでのものは作れないだろう。

極めつけにはクレジット映像まで力が入っている。プロダクションは製作、ライティングは脚本。隅々までカッコいい。スタッフロールで役職名を全部筆文字の漢字表記にするゲームなんて、日本にもなかなかないんじゃないか?

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(画像はSteam版『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』のゲームプレイ映像より)

さて、さすがにキリがなくなってしまうので、今回はここまでとする。

最後に、本記事を執筆するにあたって協力してくれた皆様、ゲームコードを提供してくれたSIE様、「書いてみないか」と提案してくれた電ファミニコゲーマー編集部の方、そして、ここまで諦めずに読んでくださった画面の前の皆様に、深く感謝申し上げます。

私がこの度プレイした『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』は2024年5月17日(金)よりSteam及びEpic Gamesに向けてPC版が発売され、グラフィックオプションの制限が解除。スペックにもよりますが、より美麗な画質で遊べるようになっています。

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(画像は対馬西沖でとれた穴子を焼いたもの)

日本の中世鎌倉時代の浪漫が詰め込まれた本作、ぜひ一度手にとって遊んでみてほしいです。そして、対馬に興味が出たら一度遊びにきてください。食べ物は。対馬の西沖の深海200mでとれた特別な穴子がおすすめです。肉厚で美味しいです。

ここで対馬にまつわる歴史について興味をもってくださる方が一人でもいたら幸いだし、ぜひ、現地に来てみてほしい!ネットにのってない情報がたくさんあるので。

▲「対馬」と「ツシマ」の景色を比較してみた動画も公開中。合わせてご覧ください

参考文献

小野, 尚志. 八幡愚童訓諸本研究: 論考と資料. 三弥井書店, 2001.
英賀, 千尋. 元寇と対馬の歴史. ビジネス教育出版社, 2021. 
竹崎, 季長. “日本古典籍 所蔵資料解説: 蒙古襲来絵詞.” 九州大学附属図書館, 31 March 2023

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ライター
MOTHER2でひらがなを覚えてゲームと共に育つ。 国内外問わず、キャラメイクしたりシナリオが分岐するTRPGのようなゲームが好き。 Divinity: Original Sin 2の有志翻訳に参加。 ゴーストオブツシマの舞台となった対馬のガイドもしている。 Xアカウント(旧Twitter)@Tsushimahiro23
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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