中世ライフでは処世術が問われる。自分の評判や相手の立場が成功率に影響する会話システム
自分の見た目が交渉やシナリオの行く末に影響するという、なんとも世知辛い装備システムを紹介しましたが、こうした絶妙な生々しさは、本作の会話システムにも見て取ることができます。
本作では、クエスト中に成功判定のある選択肢が出現します。その選択や成否によって、クエスト内容が変化したり、交渉事を優位に進めたりすることができるわけです。
![『キングダムカム・デリバランス II』レビュー・感想・評価:盗賊に襲われ、糞尿をぶっかけられ、晒し台の刑に処されるRPG_033](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/image_033.jpg)
本作では、会話の成功判定に関係する、いわゆる「話術スキル」が細分化されており、「説得力」「強制力」「印象」「支配力」「存在感」「脅迫」という6つのパラメーターとして独立しています。
つまり、「説得のうまさ」「脅迫のうまさ」といったように、会話選択肢の方向性によってそれぞれ得手不得手が存在するということです。
これらに加えて、相手の立場や自分の評判などの要素が関連することによって、「RPGの会話シーン」どころか、まるで「処世術シミュレーター」の様相を呈しているんです。
現実世界でも「うさんくさいけど話がうまい人」もいれば、「口下手だけど、人柄や印象が良いから慕われている」といった人もいますよね。あまり関わりたくはありませんが、「暴力をチラつかせて言うことを聞かせる」ような人も……。
本作ではそうした「話し合いで解決する」場面において、どういった人物として振るまうかというロールプレイを楽しむことができるわけです。
![『キングダムカム・デリバランス II』レビュー・感想・評価:盗賊に襲われ、糞尿をぶっかけられ、晒し台の刑に処されるRPG_035](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/image_035.jpg)
さらにおもしろいのが、これらの話術パラメーターは、単純に数値が高ければ成功率がアップする、というわけではないこと。本作では、話し相手との立場関係、自分の見た目や評判が会話の成功率に影響するんです。
会話システムのチュートリアルでも「ならず者の群れを相手に、たった一人で脅迫をしても大抵相手にされない」と説明されます。
自分のパラメーターだけでなく、相手との立場を考慮して選択肢を選んでいく必要があるんですね。
![『キングダムカム・デリバランス II』レビュー・感想・評価:盗賊に襲われ、糞尿をぶっかけられ、晒し台の刑に処されるRPG_036](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/image_036.jpg)
筆者がこのシステムを実感したのは、ストーリーの途中、いろいろあってお城に不法侵入したときのこと。
衛兵に見つかって追い回されていたのですが、あえなく捕まってしまいました。こうしたシチュエーションでも交渉が発生し、うまくいくと見逃してくれる場合があるのですが……。
最初は数値の高い「脅迫」の選択肢を選び、「俺に敵うと思っているのか?」と脅しをかけたのですが、あえなく失敗。
何度かリトライをくり返したのですが、まったく成功しませんでした。
そこで今度は「説得」を選択してみました。
すると「女の子に呼び出されて下心丸出しで忍び込んだんだけど、騙されてたっぽい。恥ずかしかった~」と嘘八百を披露することで、笑って許してもらえたんです。
数値的には「脅迫」よりも低い「説得」なのに!
よくよく考えてみれば、相手はお城を守る衛兵。暴力的な態度に出る相手に対して屈するわけにはいきませんが、おバカな理由で忍び込んでしまった相手であったら、「まあしょうがないか……」という気分にもなりますよね。
このように、本作の会話選択肢は、単純なパラメーターの数値だけでなく、相手の立場や顔色を伺って立ち回る必要があるわけです。
……たしかに、現実でもお巡りさんに職務質問された時「もう一度言ってみろ!」などと挑発的な態度をとったら、なかなか穏便には済まないでしょう。それと同じことがゲームの中で体験できるわけですね。
さらにはこの会話選択肢、成功率には「評判」システムも影響してきます。「評判」というのは文字通り、良いことをすれば上がり、悪いことをすれば下がるパラメーターです。
![『キングダムカム・デリバランス II』レビュー・感想・評価:盗賊に襲われ、糞尿をぶっかけられ、晒し台の刑に処されるRPG_044](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/image_044.jpg)
「説得」や「印象」といった選択肢は評判が良いほど成功率が高まりますが、逆に「強制」「脅迫」などの選択肢は、評判が低いほど成功しやすいという仕様になっています。
つまり、悪人プレイをしている人は、おのずと悪人っぽい選択肢が有効になっていくし、普段悪いことばかりしているのに、肝心な時だけ良い人ぶっても信用してもらえないわけです。
「普段の行いが肝心な時に表れる」という人生の教訓のようなシステムまで盛り込んでいる『キングダムカム・デリバランス II』恐るべし……。
![『キングダムカム・デリバランス II』レビュー・感想・評価:盗賊に襲われ、糞尿をぶっかけられ、晒し台の刑に処されるRPG_045](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/image_045.jpg)
今も昔も、お金を稼ぐのはひと苦労。コツコツ金策を重ねる中世騎士の姿に、現代人も感情移入してしまう
いいことを知りました。評判はお金で買える。
「よっしゃ、金さえあれば評判も回復し放題だ!」
と、思ったそこのあなた……! 甘いです。そんな人生イージーモードへの道をキングダムカム・デリバランス II』が許してくれるはずがありません。お金。簡単に稼げると思ったら大間違いです。
こういったゲームでの「金策」と言えば、いわゆる「クラフト」要素をまず思いつきますよね。大量の安い素材を買ったり拾ったりして、武器やポーションに変換して高く売る、というのはある種のセオリーかと思います。
本作でも同様に、安い素材を入手して、それを加工することでお金儲けをすることが可能。道端で拾った薬草からポーションを作ったり、安く購入した鉱石を加工して剣を作ったりして、お金を稼ぐことができます。
ただ、本作がひと味違うのはその「過程」です。
必要な素材さえあればボタンをポチッと押せばOK! ……なんてことはありません。本作では、剣1本、ポーション1個を作るためにも、1回ごとに手順(ミニゲーム)をこなす必要があるんです。
たとえば、簡単なポーションを作るレシピがあったとしましょう。普通なら素材を集めたら、あとは所定の場所なりでボタンを押すだけで、自動で、いくらでもボーションを作れる設計ですよね。
ところが本作では、ポーションのひとつひとつに詳細な調理手順が設けられています。例をあげると、「大釜にワインを沸かし、カモミールをふたつかみ加え、砂時計1回分の時間ゆでる。その後、ひとつかみのセージを乳鉢ですりつぶし、大釜に加える」といった感じ。
大釜の火加減や、薬草を加工・投入する手順を正確に再現することによって、初めてポーションを作ることができるんです。
![『キングダムカム・デリバランス II』レビュー・感想・評価:盗賊に襲われ、糞尿をぶっかけられ、晒し台の刑に処されるRPG_047](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/image_047.jpg)
その様子はさながら、「錬金術師シミュレーター」のようなゲームが始まったかのよう。手順をしくじると、効果の弱いポーションができてしまうこともあります。
金策のために、大量に素材を用意したとしても、1回ごとにこの工程を踏む必要があるため、「素材をたくさん集めて、一気に変換すれば大儲け」といった裏技は通用しません。
![『キングダムカム・デリバランス II』レビュー・感想・評価:盗賊に襲われ、糞尿をぶっかけられ、晒し台の刑に処されるRPG_048](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/image_048.jpg)
もちろん、鍛冶に関しても同様です。剣1本、斧1本を作るのにも、鍛冶場で鉄を熱して叩いて成形して……といった工程を踏む必要があります。
個人的にこういった作業をするのが好きなのもありますが、それを差し引いても、こういったクラフト要素は、本作のスケール感を象徴するシステムになっていると感じました。
結婚式にふさわしい衣装を用意するのも、会話選択肢で自分や相手の立場を考慮しなければならないというシステムもそうですが、こういったところって「ゲームだから」という理由で省略されてしまったとしても許容される部分だと思うんですよね。
本作では、そうしたポイントをあえて描くことによって、「中世ヨーロッパの世界を忠実に再現する」というリアリティの上に、「人間生活のリアリティ」を重ねあわせています。
![『キングダムカム・デリバランス II』レビュー・感想・評価:盗賊に襲われ、糞尿をぶっかけられ、晒し台の刑に処されるRPG_049](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/image_050.jpg)
筆者は21世紀の日本に暮らす現代人で、あいにく世界史知識にも乏しいのですが、「結婚式なんだから、ちゃんとした服は用意しないとね」とか、「お金稼ぐのって大変だよね……」といった共感を経て、縁もゆかりもない15世紀、ボヘミア王国の騎士の物語を、どこか自分の人生のように感じるようになっていきました。
散々な目にもあうし、生きていくのは大変だし、難易度ハードコアの中世ライフは世知辛さしかありません。ただ、それがあるからこそ主人公のヘンリーに感情移入できる手触りになっているのが、独特な居心地の良さ・生活感に繋がっている作品だなと感じました。
正直なところ、今回紹介した序盤部分をプレイしている間は「いつまでハードモードなんだろう」という思いもありました。ただ、一連の騒動が解決した際には、「ああ、俺、がんばったな……」という、しみじみと深いカタルシスを感じることができたんですよね。
親友のハンスに関しても補足しておくと、記事中の紹介では序盤のトラブルメーカーな部分が強調されてしまいましたが、受けた恩は忘れない義理堅さもあるし、貴族として、良い意味での高潔さやプライドも持ち合わせている好青年です。
![『キングダムカム・デリバランス II』レビュー・感想・評価:盗賊に襲われ、糞尿をぶっかけられ、晒し台の刑に処されるRPG_051](https://news.denfaminicogamer.jp/wp-content/uploads/2025/02/image_052.jpg)
行く先々で大変な目にあうし、世知辛い世の中だけど、苦労しただけ得られるものが大きいのもまた人生。そんな起伏に富んだ中世ライフが堪能できる本作で、さんざんな目に会いながらも奮闘するヘンリーの人生を追体験してみてはいかがでしょうか。
『キングダムカム・デリバランス II』は、2025年2月5日より発売中。PC(Steam、Epic Games)、PS5、Xboxにてプレイ可能です。