「人生って、世知辛い……」
これが『キングダムカム・デリバランス II』をプレイした際の第一印象でした。
本作は、15世紀のヨーロッパ、ボヘミア王国(現在のチェコ)を舞台に、騎士の「ヘンリー」を操作して、次々と訪れる困難に立ち向かっていくオープンワールドRPGです。
そんな本作の特徴は、なんと言っても「ストーリー序盤のスーパーハードな展開」と「リアルに再現されすぎている中世ヨーロッパの治安」。
水浴び中に盗賊に襲われ、裸で逃げ回ることになるし、命からがら逃げ延びたと思ったら、衛兵に物乞いと間違われて糞尿まみれにされる。ひたすら踏んだり蹴ったりな展開が続きます。
システム面でも、自分の身なりに応じてNPCの態度が変わったり、人と交渉する際には、自分の評判や相手の顔色を伺って話し合わないといけなかったり……。
剣を1本作るにも、ボタンをポチッと押して完成……なんて甘えは許されません。自分の手で鉄を叩いて鍛冶をする必要があるので、めちゃくちゃ手間がかかります。
いわゆるRPGの「ロールプレイ要素」の部分が作りこまれすぎていて、リアリティを通り越して「生きていくのって大変だな……」としんみりしてしまうくらいなんです。
これだけ聞くと「ひたすら大変な思いをするゲームなの?」と思う方もいるかもしれませんが、これが意外とクセになる楽しさなんです。
中世社会の荒波に揉まれる主人公に対しては、「今も昔も、生きていくのって大変なんだな……」と、不思議と感情移入をしてしまいますし、いささか起伏が激しすぎる人生を体験できるからこそ問題を解決できたときに得られる喜びはひとしお。
「人生ってままならないものだけど、それでもがんばっただけ得るものがある」という、しみじみとしたロールプレイの楽しさが感じられる作品になっています。
じつは本作、「歴史考証がガチすぎる」として話題になっていたゲームなんです。
15世紀の街並みや文化を再現するために、フルタイムの歴史考証班が常駐しており、その再現度の高さから、チェコの大統領が視察に来たほどだそう。
ただ、そんな本作の「リアリティ」は、歴史や文化のみにとどまらず、そこに暮らす人間の営みにまで及んでいて、数百年前の異国の地でのお話を、一人称的な共感を持ってプレイできるようになっているんですよね。
というわけで今回は、そんなハードモードな中世ライフRPG『キングダムカム・デリバランス II』をご紹介。ひたすら散々な目に会う序盤のストーリーから見ていきましょう。
※この記事は『キングダムカム・デリバランス II』の魅力をもっと知ってもらいたいPLAIONさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
裸で盗賊に襲われ、命からがら逃げ延びたと思ったら、衛兵に糞尿をぶちまけられる……。「トホホ」じゃすまない序盤のストーリー
『キングダムカム・デリバランス II』の主人公は前作から続いて「ヘンリー」という青年。鍛冶屋の息子として育ち、今は騎士をしています。
物語は冒頭、ヘンリーは自身が護衛として仕える貴族である「ハンス」と、敵対関係にあるトロツキー領の貴族へ手紙を届ける任務についていました。
本作では、登場人物の描き方も魅力的です。全体的に乱暴で粗野な印象はあるけど、それぞれ苦労や悩みも抱えていたりして、すっごく人間くさいんですよね。
そして、序盤のストーリーで本作のそうした「人間くささ」を象徴する人物がこのハンス。基本的には「良いヤツ」なんですが、若干偉そうで「おぼっちゃま感」のある人物です。貴族だから実際に偉いんですけどね。
少々乱暴なたとえになりますが……ハンスはいわば「ラノベでよく見るトラブルメーカーなヒロイン」です。ハンスが騒動を起こして、それをきっかけに物語が進んでいく。だいたいそんな立ち位置のキャラだと思ってください。
そんなハンスが引き起こすトラブルを見ていきましょう。
場面としては、日暮れに備えてキャンプを設営するシーン。
どうやらこのあたりには最近盗賊が出没するようなのですが、ハンスはそれもお構いなしに鎧を脱ぎ、湖で水浴びをすると言います。
ヘンリーもそれに付き合うのですが、水浴びをしていると、どこからか女性の声が……。
ハンス「ヘンリー、女だ!」
……嫌な予感がしてきました。
姿勢を低くして草をかき分け、女性の声がする方に向かうふたり。一応、ゲーム的にはスニーキング(隠密行動)のチュートリアルにもなっています。でも……これって……完全に……のぞ……k
おかしいですね。硬派な歴史ゲーと聞いていたんですが……。
すこし進むと、そこにはピクニックを楽しむ女性の姿が。
よかった。健全だ。あられもない姿が出てきたら、記事的にもいろいろ大変だった。胸をなでおろした瞬間……。
盗賊だーッ!
あ……これまずいのでは?
嫌な予感、的中です。仲間は殺され、任務に必要な手紙も奪われ、ふたりはめちゃめちゃに弓で撃たれながら逃げ出すことになってしまいました。
あーあ、言わんこっちゃない。
その後、生死の境をさまようもなんとか回復し、当初手紙を届ける予定だった「トロツキー城」になんとかたどり着きます。
まあ、いろいろあったけど、ようやく目的地に到着したわけですが……。
物乞いと間違えられて、糞尿をぶっかけられてしまいました。
それもそのはず、ふたりは裸で水浴びをしている最中に襲われたので、荷物も手紙もすべて失っています。
身に着けているのも道中で調達したみすぼらしい服。こんな状態でいくら「自分は貴族だ!」と言っても信用してもらえるはずはありませんよね。……糞尿をぶちまける必要はないと思いますが。これも中世ヨーロッパの洗礼というやつでしょうか。
というわけで、「なんとかして手紙を届ける予定だった貴族に接触しよう」ところから、本作のオープンワールド要素が解禁。さまざまなクエストをこなしていくことになります。
ちなみにこの後、ハンスは酒場で殴り合いの騒動を起こし、ヘンリーともども晒し台の刑に処されます。結果、ふたりは喧嘩別れ。ヘンリーひとりで中世ライフを送っていくことになります。……踏んだり蹴ったりすぎる。
ハードな中世ライフでは「見た目が大事」。身も蓋もないけど、人生ってそういうものだよね
ボロボロの服装で「俺は貴族だ!」と主張した結果、「おかしな物乞い」認定されてしまったハンスとヘンリーのふたり。
「かわいそうだな」とも「そりゃそうだよな」とも思うストーリー展開でしたが、本作ではこういった「自分の見た目が話し相手の態度に影響する」という、なんだか世知辛い要素が、装備システムにも搭載されています。
本作の装備システムは、かなりリアリティを重視した作り。
たとえば、各装備には耐久値システムが存在したり、クッションとなる衣服を下に着ないと鎧や兜が装備できなかったりと、こだわりの要素が実装されています。
戦闘時には、攻撃された部位と、そこに装着した防具によってダメージが大きく変わってくるので、剣と鎧の戦いのリアリティを追及した要素になっています。
ただ……本作の「リアリティ」は、戦闘面だけにとどまりません。それを象徴するのが、衣服に設定された「魅力」という値です。
簡単に言うと、自分が装備している衣服の「魅力」の値によって、NPCの態度であったり、交渉のしやすさに影響が出るというもの。
みすぼらしい服だったり、返り血まみれでボロボロの鎧を身に着けていたら警戒されるし、貴族が着ていそうな清潔で豪華な服を着ていたら信用されやすいわけです。
たとえば、ストーリーを進めていくと「地元の名士の結婚式に出席する」という場面が訪れます。
「地元の名士の結婚式に、手紙を届けるはずだった貴族が出席する」というウワサを聞きつけて、接触を狙って潜り込もうというお話で、事前にさまざまなクエストを経て出席することができるようになるのですが、いざ式に出席しようとすると言われるのが……。
「お前、そんな格好で結婚式に行くつもりか?」
それもそのはず、盗賊に襲われて衛兵に糞尿をぶっかけられ、そこから着ていたのはそこらへんで調達したボロボロの鎧。とてもじゃありませんが、結婚式に出席するのにふさわしい格好ではありません。「ちゃんとした格好をしてこい!」と怒られてしまいました。
仕方がないので、町の仕立屋でファッションチェックをしてもらいながら、オシャレな服を調達することに。
「まだ戦闘用の防具も揃いきっていないのに……」と思いつつ、なんとかお金を工面して高い服を購入するはめになりました。
システム的な話をすると、「装備を整えて『魅力』の値を一定以上に整えろ」というものなのですが、演出がいい味を出してます。
本作の装備は、ただの防具にとどまらず、見た目で自分の印象を形作るファッション的な意味合いも持っているんですね。
余談ですが、筆者も普段スーツに全く縁のない生活をしているので、友人の結婚式に招待され、「そういえばスーツ持ってないじゃん!」と焦った記憶が思い出されて妙にリアルでした。どんなところで共感しているんだ……。