ファンタジー世界の生き物を討伐、解体、調理するための知識を「現実的に」描いた架空マニュアル本『モンスター解体図鑑』。本企画は気になるこの本の中身から、一部のモンスターを抜粋して紹介していく。
いよいよ最終回となる第10回は、危険度Sのモンスター「クラーケン」。全長120~150メートル、体重は2500~3500トンにもおよぶ巨大なモンスターだ。
見た目通りと言うべきか、触腕の肉はねっとりと、かつ弾力強く反発する歯ごたえが特徴。イカに似た旨みを持ちつつも、魚介とはまた異なる独自の深いコクがある。墨液も微量に和えれば、後味に苦みと鉄分の気配が伴い、より料理の深みを広げるという。
クラーケン(危険度S 魔法属性・水)
生態
深海底の裂け目や海底火山付近の深海底1,000~7,000mを縄張りとし、孤独に生きる。警戒心は非常に強く、領域内に侵入したものには激しい反応を示す。
食性は肉食性で、大型魚類、鯨類、深海イカなどを主に捕食。音波探知と魔力探知で獲物を察知し、魔道船や灯火船が餌と誤認される例もある。
皮膚は数層に重なり、最上層が厚さ5cm以上のゲル状組織となっていることで、水圧や斬撃から内臓を保護する。
墨には神経毒、幻覚性成分、魔力阻害成分を含む複合的な毒が含まれている。
おすすめ料理 海禍魔のゴイムック
~禁忌に触れる触腕の味~
茹でたクラーケンの触腕肉のスライスを玉ねぎ、香草、酢、果汁、極少量の墨嚢液と軽く和えたサラダ料理。
口に入れた瞬間、果汁の酸味が広がり、香草の冷涼な香りが鼻に抜ける。噛むごとにクラーケンの触腕肉がねっとりと、それでいて弾力強く反発する。
その内部から染み出すのは、イカ肉に似た旨味だが、魚介の熟成香とは異なる独自の深いコクを伴う。
墨嚢から抽出された墨液は、後味にかすかに残る苦味と鉄分の気配が深みを広げる。ひんやりした清涼感が夏にぴったり。
採取可能素材
嘴
金属系装甲にも有効打を与える高強度。
斬撃系や貫通系の武器や杖の芯材となる。
皮
耐水、耐圧、伸縮性が高く、防具素材や潜水装備用外革、魔力拡散コートとなる。
墨
魔術具や毒煙玉、黒染料の素材となる。
吸盤
魔力を通さないので、魔力干渉手袋や防魔マントの裏地に使用される。
解体手順
step 01 足を切り離す
足を1本1本切り離す。
死後に動くこともあるので、足を固定するとなお良い。
step 02 頭を開く
内臓を取りやすいように頭を開く。
step 03 墨嚢を取る
肛門近くにある墨嚢を取る。
毒があるので破かないように注意。
step 04 内臓を取る
頭に固定している筋を切りながら、内臓を取る。
step 05 目を取る
内臓を取り終わった頭を切り離し、目を取る。
step 06 魔力核を取る
目の間あたりにある魔力核を取る。
step 07 嘴を取る
足の付け根にある嘴を取る。
step 08 吸盤を取る
各足にある吸盤を取る。
step 09 皮膚を剥ぐ
3層になっている皮膚を1層ずつ剥ぐ。
クラーケンの吸盤
主吸盤
1.5〜2.5m。
触腕の基部から中腹にある吸盤。主な捕獲や拘束を担当する。
縁には角質鉤が備わっており、ただの吸着でなく、噛み付き+固定の効果を持つ。吸着力は最大7t級。
副吸盤
0.5〜1.2m
触腕部の中腹から末端部にある吸盤。捕獲の補助や細かい操作を担当する。
複数が連動して動く。
微吸盤
10〜30cm
主吸盤の内側や根元部周囲にある吸盤。感覚器や魔力感知の役割がある。
討伐証明の部位。
本連載は今回をもって終了となるが、書籍『モンスター解体図鑑』にはこのほかにも「ケルピー」や「リヴァイアサン」といったいくつものモンスターが掲載されているほか、モンスターの解体や調理に関するコラムも豊富に収録されている。
この連載を通じて気になった方は、ぜひ実際の書籍を手に取って“魔物メシ”の世界に触れてみていただきたい。
……
最後になりますが、全10回(!)分にもおよぶ無料公開を快く許可してくださった株式会社カンゼンさまに、この場において心よりお礼申し上げます。本当にありがとうございました!


 
              




 
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                         
                         
                         
                         
                        
 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                