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最新作『ルミネス アライズ』をプレイして、パズル・音楽・演出が一体となった多幸感に包まれた。『ルミネス』らしさは、生き物も出てくる“ちょっと笑っちゃう感じ”のユニークな演出にあった【石原孝士ディレクターインタビュー】

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エンハンスのゲームの魅力は「やればわかってもらえる」。パズルやシューティングといったジャンルに囚われない、エンハンスならではの“体験性”

──パズルゲームは、既存のファンが熱量高くプレイし続ける一方で、なかなか新規層に広がるのが難しいゲームジャンルなのではないかと思います。本作『Lumines Arise』は、既存の『ルミネス』プレイヤーではない層へ、どのようにアプローチしていく予定ですか?

石原氏:
開発目線だと、実はそんなに心配をしていないんです。エンハンスの作品には本作のようなパズルゲームだけでなく、『Rez』というシューティングゲームもありますが、私たちとしてはあまり「ジャンルが何なのか」という部分は気にせず、「その作品を通じてなにを感じてもらえるか」という部分に一番価値があると思って制作をおこなっているんですよ。

なので、エンハンスの作品に触れた経験のある方であれば、「パズルだからやろう」「○○だからやろう」ということではなく、「エンハンスの作品だからやってみよう」と思って、手に取っていただけるのではないかと思っています。

過去に『テトリス』のIPを使った『テトリス・エフェクト』という作品を発表した際、かなり多くのお客さんに遊んでいただけたという実績もあるので、ある意味では自信をもって『Lumines Arise』に取り組めている部分はありますね。

──本作はVRでも展開されるとのことで、『ルミネス』のように光やグラフィックの演出にこだわりのあるタイトルにとっては、HMDを用いた視界全体を覆う体験というのは一層魅力が引き立つのではないかと思います。一方で、VRというのはふだんのゲームにも増して、「遊んでみなければわからない」というプラットフォームでもあります。本作のVR版の魅力を発信するための施策などは考えていますか?

石原氏:
我々としても、そこをどう伝えていくかは難しいと思っていますが、いまのところは「体験した方からほかの方へ伝えていただく」しかないのかな、と考えています。

マーケティング担当・工藤氏:
難しいことではあるんですが、いわゆる「水口ゲー」はファンの方が作品の魅力を発信してくださるケースも多いので、水口ゲーが好きな方に喜んでもらえれば、そこから口コミのような形で広がっていくのではないかと期待しています。

『ルミネス アライズ』石原孝士氏インタビュー:『ルミネス』らしさは、生き物も出てくる“ちょっと笑っちゃう感じ”のユニークな演出_006

石原氏:
プラットフォームごとのゲーム体験という意味だと、本作はプレイステーションの周辺機器である「プレーステーションポータル」に対応しているので、見方によっては「かつてのPSPのように遊べる」ということもできます

もちろん4K画質でもプレイできますし、VRにも対応しているので、『ルミネス』の体験の幅というのは、過去と比べても非常に広くなっています。

工藤氏:
くわえて、本作はSteam Deckにも対応予定です。こういった「携帯機で遊べる」という部分には、初代『ルミネス』をPSPで遊んでくれた、20年来のファンの方が熱烈に反応をしてくださいました。そういった方々へ向けた、携帯機での体験というものも大切にしたいと考えています。

『テトリス・エフェクト』でつちかったセンスや技術を『ルミネス』に当てはめた時、何が生じるのか? Enhanceが挑む、新生『ルミネス』

──さきほどお話に出た『テトリス・エフェクト』は本作と同じく水口さんがプロデューサー、石原さんはディレクターという陣容でしたね。

過去のインタビューを拝見したところ、水口さんは「もともと音楽と『テトリス』を組み合わせたかったけど、版権の問題があって『ルミネス』を作ったんです」というお話をされていました。

ある意味では、『テトリス・エフェクト』によって水口さんの夢が叶ったとも言えるかと思いますが、そういった流れを踏まえて、今ここで『ルミネス』の新作を出すことには、どういう想いがありますか?

『ルミネス アライズ』石原孝士氏インタビュー:『ルミネス』らしさは、生き物も出てくる“ちょっと笑っちゃう感じ”のユニークな演出_007
(画像は『テトリス® エフェクト』水口哲也氏&石原孝士氏インタビュー! 11月1日より期間限定で体験版も配信!│PlayStation.Blogより)

石原氏:
『テトリス・エフェクト』を作っていくなかで、チーム内にはさまざまなセンスや技術が培われました。そのセンスや技術を『ルミネス』に当てはめた時、「『ルミネス』がどう変わるのか?」という部分にはシンプルに興味が持てたので、水口さんと話していて「やってみようか」と、自然な流れで制作することが決まりましたね。

実は、オリジナルの『ルミネス』を作ったメンバーってほとんどエンハンスにいないんですよ。なので私たちにとって『ルミネス』に取り組むというのは非常に新鮮なことで、『Lumines Arise』の制作を経てどんなふうにチームが変わっていくんだろうか、という部分にも、期待や興味を持っています。

ある意味、新生『ルミネス』というか。過去の『ルミネス』とは結構ちがうものになっていると思います。

──今回、試遊をさせていただいたなかで、カメレオンを両側に配置しているステージが非常に魅力的に感じました。石原さん的にお気に入りのステージや、開発チームとして「ここは気合を入れて作りました」というステージがあれば、お聞かせください。

石原氏:
まさに「カメレオンステージ」は僕も大好きで、チーム内でも人気があります(笑)。

あの感じは、『テトリス・エフェクト』にはないんですよね。ああいう「ちょっと笑っちゃう感じ」、面白い感じのステージや、昆虫のようなユニークなものを取り扱うことも『テトリス・エフェクト』ではしなかったので、『ルミネス』らしさを感じて、大好きですね。

『テトリス・エフェクト』がその名のとおりエフェクトに重点をおいた作品だったのに対し、『ルミネス』は人や動物といったモノと音楽が一体化することを狙っているんです。

これは、私たちが「シナスタジア(共感覚)体験」と呼んでいるもので、エンハンスではこのシナスタジア体験をコンセプトとして、ゲームを作り続けています。

──本作は「マルチプレイヤーモード」の実装を予定しています。その内容に関して、現時点で語れる部分があればお聞かせください。

石原氏:
すみません、マルチプレイヤーモードに関してはまだ詳細をお話することはできません。

ただ、今年の夏に配信を予定している体験版のなかでは、マルチプレイヤーモードもプレイしていただけるはずです。その際に遊んでいただいて、みなさんからの感想などをフィードバックしていただけると嬉しいです。

──本作のような落ち物パズルゲームは、うまくプレイできれば気持ちよくブロックを消せますが、逆にプレイヤーがミスをすると、画面内にブロックが残り続けてしまい、自身のミスが意識され続けてプレッシャーとなってしまう部分があります。

パズル制作者として、そういったプレッシャーに対してはどのような意識を持っておられますか?

石原氏:
確かに、『ルミネス』シリーズはブロックを揃えるのも難しい上に、揃えてから消えるまでのタイムラグがあるため、どうしても消したいブロックがどんどん積みあがってしまうことはありますね。

我々としても、いたずらにプレイヤーへプレッシャーを掛けたいと思っているわけではありません。なんとか解決策を用意したいとは考えており、シリーズとしては隣接する同色ブロックを破壊できる「チェインブロック」が存在しています。

『ルミネス アライズ』石原孝士氏インタビュー:『ルミネス』らしさは、生き物も出てくる“ちょっと笑っちゃう感じ”のユニークな演出_008

また最新作である『ルミネス アライズ』では「バースト」を実装して、さらに盤面をスッキリさせることができるようになりました。チェインとバーストを定期的に使っていけば、かなり長い間ゲームをプレイできるようなバランスにはしています。

そもそも、私たちエンハンスの作品の特徴として、「音楽やビジュアルを体験してもらう」という部分を最優先に考えているので、プレイヤーの意識がパズルに引っ張られすぎないように、バランスには気を付けて制作しています。

もちろん製品版では難易度設定も用意し、ライトな方からコアな方まで楽しんでいただける幅も設けています。

──最後に、発売を心待ちにしているファンの方へ向けたメッセージをお願いします。

石原氏:
さきほどもお話させていただいたことではありますが、やはりエンハンスの作品、そして『ルミネス』は「体験して初めてわかる」部分が多いので、ぜひ夏の配信を予定している体験版で、マルチプレイを含めた新しい『ルミネス』を遊んでいただけたらと思います

もし待てない方がいたら、『ルミネス リマスター』という作品もありますので、そちらをプレイしつつ、スタンバイをお願いします(笑)。

──ちなみに、『ルミネス』を初めて遊ぶ方へ向けた、ワンポイントアドバイスのようなものがあれば、いただけると嬉しいのですが……。

石原氏:
実は、本作シリーズのブロックの積み方って、2~3種類ほど定石みたいなものがあって、その2~3種類を見つけられれば、ほぼうまくいきます。なんとかそこまで辿りついていただければ、ということと……あとは、「落ち着いてチェインブロックを待つ」ですかね。チャンスは必ず来ます。がんばってください!


いかがだったでしょうか。『ルミネス』誕生から20年以上が経った今。『テトリス・エフェクト』を始めとした数々の経験を積み重ねた今だからこそ作れる、新生『ルミネス』。そんな『Lumines Arise』に対する石原さんの自信が、読者の皆様にも伝わっていれば幸いです。

そんな『Lumines Arise』は7月18日から7月20日にかけて京都市勧業館・みやこめっせにて開催中のイベント「BitSummit the 13th」で体験できるほか、今年の夏には「マルチプレイヤーモード」も含めた体験版の配信が予定されていますので、興味のある方はぜひこちらをチェックし、進化した『ルミネス』を楽しんでいただければと思います。

僕も『ルミネス リマスター』を練習して、体験版に備えます!

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編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest
編集者
3D酔いに全敗の神奈川生まれ99’s。好きなゲームは『ベヨネッタ』『ロリポップチェーンソー』『RUINER』。好きな酔い止めはアネロンニスキャップとNAVAMET。
Twitter:@d0ntcry4nym0re

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