設定考証という仕事
──そういったキャリアから設定考証の仕事を始めたきっかけは?
小倉:
独立前、オガワモデリングで富士急ハイランドの『GUNDAM THE RIDE』というアトラクションの仕事をやっていたんですよ。そのときにガンダム事業部長だった堀口滋さん【※】に「やたらガンダムと宇宙に詳しい奴がいるじゃないか」と覚えていてもらっていて、そのあと独立時、プラネタリウム用の『グリーンダイバーズ』という映像企画が2001年の夏に始まるにあたって、「SF的な設定は既にあるんだけど、いざ大気圏突入する時にどんなことになるのかちゃんとわかる人がいない」と。
それで呼ばれて、大気圏突入に詳しいかどうかを聞かれて「できる」と言っちゃってから、後で必死で調べて(笑)。なんとか仕事に通用する資料を提出できたから「できるじゃないか」って認められて、以後こういう仕事をやることになりました。
※堀口滋
CGプロデューサー。『アルドノア・ゼロ』、『亜人ちゃんは語りたい』などの制作に参加。
──比率として絵を描くお仕事と、それ以外のお仕事は?
福井:
いや、そうじゃなくて「この設定はこうです」と図解で示すことが小倉さんの特性なので。
──なるほど。
イシイ:
設定考証の人は文章+参考画像という人が多くて、それでも成立するんですけど、小倉さんは絵を描いてくれるのがすごくありがたいですね。
DMM GAMES担当者:
たとえば星の位置関係をイラストに起こしていただいたり、「シナリオ上は現在地がここになるから、実際の宇宙ではだいたいこれぐらい離れてるよね」というシナリオとのつじつまを考えていただいています。
──ゲームの形式としては戦闘の合間にストーリーが挟まれる形ですか?
イシイ:
そうです。基本的に宇宙の旅の孤独みたいな話になるんですよ。プレイヤーは地球人類なんですけど、超文明にもらった技術で亜高速の宇宙船に乗ってしまったがゆえに、旅立った瞬間、地球が滅亡するぐらいの未来に行っちゃうんですよ。
福井:
プレイヤーはひとりで乗ってるの?
小倉:
そうです。で、帰れないというより、帰っても滅亡した地球しかない。
福井:
時間はさかのぼったりできない?
イシイ:
さかのぼる方法を探さないといけない。
福井:
なるほど。
イシイ:
恒星少女にしても敵にしても、超次元の存在になってしまっているから、現実の物質宇宙に干渉できないんですよね。
だから代わりにプレイヤーがいろんな文明の秘密をかき集めて、敵を倒す謎を解いてくれと託される。ということで恒星少女と敵の反知性体が超次元で戦いながら、プレイヤーは宇宙を旅していろんな恒星の古代文明の秘密を旅しながら探っていく。ざっくり言うとそういう流れです。
小倉:
(小倉氏作成の設定イラストを見つつ)これとかは、超古代文明のダイソン天体で、しかも中心にあるのは普通の恒星じゃなくて、超高密度で超重力な白色矮星ですね。
イシイ:
超重力の白色矮星にたいして、軌道エレベーターみたいなものが山ほどあって、それに対しての重力の行き来で、発電しているという発想です。
福井:
その辺の説明をテキストで言われても、何にも頭に入って来ないですからね。それを一発、この絵があるってことで、バシンとわかるわけですよ。それが小倉さんの強みだね。
イシイ:
すごく真面目にやっていますよ。入り口としては女の子がキャッキャ言ってるんですけど、バックにあるのはこういうことなんで。
DMM GAMES担当者:
こういった設定資料とかはSFファンにとっては、たまらないものかなとは思うので、どんどん入れていきたいと考えているんですけど、どう入れ込むかは検討中の段階で、実際のビジュアルとしてはバトル時の背景だったりに反映されているのかなと。
小倉:
いろいろ描いても伝わりづらいことが多いので、3DCGの参考画像も起こしたり。
DMM GAMES担当者:
モチーフになった星の由来や設定に関しては、なるべくわかりやすい形でユーザーに届けたいんですけども……。ただ星の形の特徴ってなかなか難しいので。
小倉:
星の情報ってなかなか無いんですよ。「青くて大きい」ぐらいしか情報がない場合もある。そうなるとスタッフに女性も多いせいか、地球人の考える神話とか、そっちからキャラクターを作ろうとしちゃうんですよね。
たとえば、かにパルサーという星をモチーフにしたキャラクターは、かに座とは関係ないんだけど、パルサーだからものすごく回転してるから元気がいいとか、そういう要素から恒星そのものの特徴を入れてあげられる。入れてあげられるんだけど、そんなに際立ってキャラクターが立ってる星がなかなか無い。ここが実は盲点で、星の数ほど星はあるんだけど。
福井:
キャラクターは何十人もいるの?
小倉:
いるんですよ……。ゲームとしては必要で。
イシイ:
僕がシナリオを書くときも、選ばれてる星は普通の恒星じゃなくて尾を引いてたりとか二連星とかなので、その要素を入れるために苦労はしていますね。
──先例として『艦隊これくしょん』があるじゃないですか。戦後半世紀以上経ったタイミングで相当な数の日本人が艦船の名前に詳しくなりましたよね。そういう好奇心のきっかけにしたい気持ちは強いと?
小倉:
国立天文台【※】に恩を売れるぐらいになるといいですよね。全国のプラネタリウムもコンテンツ不足だし。ぜひキャラクターとして使ってほしい。最近あったハプニングだと、すでにボイス収録が済んでしまった星の名前が最近変わっちゃったとかね。
DMM GAMES担当者:
ありましたね。収録後だったので、その部分に関しては旧名のままやりましょうということになりました。ただ新発見は今後も起こり得るので、うまく取り入れていきたいと考えています。
小倉:
ひとつの星と思っていたらじつは五個の連星だったとか。科学の発展とともに、だんだん観測の解像度が上がっていくじゃないですか。
イシイ:
発見が多いですからね、最近の科学は。人類史の発見もすごく多いし。
福井:
21世紀もすごいよね。恐竜も毛が生えてたらしいとかね。
タイムトラベルものの根幹
──たとえば恐竜でもいいんですが、宇宙以外の題材で福井さんがやってみたいSFはありますか?
福井:
タイムトラベルものってやってみたいですよね。『戦国自衛隊1549』【※1】でやっていると言えばやっているんですけど、もうちょっと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』【※2】的な風情のやつで。
小倉:
ちゃんとタイムマシンを作って。
福井:
SFの社会批評的な機能って、とくに大人が見るときには重要なところだと思っていて。例えば最近のトピックで言ったら震災や原発があるけど、だったら原発のありなしで歴史は大きく変わったのかとか、そういうifを提示できるところがタイムトラベルものの面白いところかなとは思います。
ただそれと同時に『バック・トゥ・ザ・フュ―チャー』でも最終的に家族のドラマに帰結していたように、きちんと観客が共感できるところに落とし込めるかどうかも重要なポイントな気がしますけどね。
──イシイさんは『タイムトラベラーズ』【※】を手がけられましたけど、タイムトラベルもののポイントはどこにあると考えますか?
イシイ:
理屈だけで真面目に考えすぎるとダメだなってのはありますね。あと時間を書き換えることの面白さってすごくゲーム的なんですよ。分岐してifがいっぱい出てきて、どれを選ぶかという。
そこの面白さはゲームに落とし込みやすいから、ゲームとタイムトラベルものは相性がいい気はします。タイムトラベルものはたまに傑作が出ますよね。『フラッシュフォワード』【※】も面白かったし。
福井:
ドラマだっけ?
イシイ:
ドラマになっているんですけど、もともとSF小説で、CERNの実験が原因で、全人類が一分間くらいブラックアウトして、気を失っちゃう。気がついたら飛行機は落ちてるし、車は事故に合ってるし、昼だった地域はとんでもないことになっていて、逆に夜だった地域は寝てるからセーフなんですよ。
で、そのブラックアウトしていた間に全員が何十年後かの未来を見ちゃうっていう切り口。ドラマはどんどん複雑になっちゃうんですけど、小説は一巻ものの長編だからうまく落としてるんですよね。
福井:
この前、タイムトラベルものでケネディ暗殺を阻止するためにがんばる、スティーブン・キング【※】作品(編集部注:『11/22/63』)を観たんですよ。暗殺を阻止したらどうなるだろうという話かと思ったら、そこが主眼ではなく、暗殺を阻止しようとすると、歴史の修正されまいとする力が介入して邪魔されるという話で。
それでも阻止したら未来がディストピア状態になっちゃって、ひとつのボタンをかけ違うと、とんでもないことになるよと。これは普通に生きていても感じることじゃないですか。そういう要素をちゃんと配置できるかどうかが、SF作品として広く受け入れられるかどうかの一番の境目な気がする。
※スティーブン・キング
アメリカの小説家、数多くの小説が映画化されている。『IT』や『シャイニング』など主にホラー色の強い小説で知られるが、『ショーシャンクの空に』のようなまったく違う性質の物語も多く、ジャンルにとらわれず多作である。
小倉:
なるほど。
福井:
たとえば『ヤマト』に波動砲があるじゃないですか。あれが『2199』の最後で使っちゃダメということになった。でも使わないと世の中、成り立っていかない。これはさっき言った原発問題にもそのまんま当てはめられるから、身近に感じられますよね。
でもいまのリメイク版の波動砲の設定は余剰次元っていう、別の次元をつぶしたパワーで撃つみたいなことになってるんだけれども、その部分はわかりにくし、いま生きていく上で何かに例えられない。だから普通の生活に例えられないSF設定って、どうしてもコアユーザー向けになってしまうんですよね。
小倉:
まったくその通りです。そこの取捨選択はよっぽど話し合いますよね。地続き感というか。エンターテインメントである以上、物語で描いてることが、いま私たちが生きていることと無関係だったらアウトだと思う。『ガンダムUC』でも西暦から宇宙世紀につなげたのは「地続きですよ」ってわざわざ宣言しているわけで。
福井:
SFも本来は普通の生活に例えられる、さっき小倉さんが言ってた“寓話”としての部分が出発点だと思うし、「サイエンス・フィクション」っていう定義通りの科学要素はむしろ後付けなんじゃないかと思うことはあるよね。
小倉:
小松左京さんは原爆が登場したことがショックで、科学が生み出した化け物が世の中を変えちゃうことと無関係ではいられないんだと。そういうことを物語に描かなきゃいけないと考えて、小説家としてのキャリアをスタートするときに『地には平和を』【※】を書くんですよ。
※『地には平和を』
1963年にSF同人誌『宇宙塵』に掲載された短編小説。
『地には平和を』は第二次世界大戦で日本が終戦を迎えないでそのまま日本が滅亡しちゃうぐらいに叩きのめされるという話。そういう時間軸にいる主人公のところに、タイムパトロールがやって来て「この時間軸、間違ってるから」って言われるって話で。
福井:
戦争の時代を生きた人たちが普通にたくさんいた時代だから、同時代の人に「あれで戦争が終わってなかったら、俺たちどうしてたんだろうね」という、酒飲み話みたいなところからでも興味を引けるわけですよね。
僕たちくらいの世代、あるいはもっと若い世代が、日本が戦争を続けていたらどうするってやったら、単なる架空戦記にしからならない。
小倉:
そうなんですよ。架空戦記ってSF作家が書く場合もあるけど、大抵の架空戦記はSFでもなんでもなくて、購買対象であるサラリーマンのすごく狭い範囲の鬱憤話になっちゃうんですよね。
福井さんの仕事でいつも感動するのは、マーケティング的な意味での狭い対象を相手に「少なくても手堅く売れる」ビジネスの考え方に対して、「そんな狭い層の客を相手にするよりも、その外側にこれだけお客がいるじゃないか」っていう話をしてくれるからなんですよね。
──『ローレライ』【※】は戦記ものでもあり、SFものでもあり、群象劇でもある。そこを全部入れて『ガンダム』を見ない世代にも届くように作られたんですか?
福井:
あれは先に依頼があったんですね。第二次世界大戦もので、潜水艦もので、あとは男ばかりだとキツイんで女の子を乗せてくださいと。それと樋口真嗣【※】からの「第三の原爆ってネタはどうですかね?」というお題からまとめていったんですね。だから自分だけで考えたものとはまた違うんだけれども、意識したのはどうしても第二次世界大戦で、潜水艦映画ってなると、東宝の昔の戦争ものみたいなイメージで、そんなの若い子は見ないだろうっていう思いしかないわけですよ。
※樋口真嗣
日本の映画監督。代表作に『シン・ゴジラ』、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』など。
じゃあ日本のお客さんは何を観ているって考えたら宮崎アニメで、だったら第二次世界大戦でも、宮崎アニメみたいな感じでやっちゃえばいいじゃん、っていうのが俺の考え方でしたね。「宮崎駿がこれを撮ったと考えてみてよ」と言うと、ちょっと勘どころがある人なら「ああ、それならアリかも」って反応してくれる。だからそれをベースにやっていった感じですよね。
小倉:
福井さんは宮崎アニメの例えを時々出しますよね。『ガンダムUC』のインダストリアル7の人工太陽区画からミネバが落ちるところは、『天空の城ラピュタ』のシータだとか。お姫さまは必ず空から落ちてくる!
福井:
そうそうそう。売れているものは真似しろ!
一同:
(笑)。
イシイ:
『ローレライ』に関しては僕も思い出があって、『ローレライ』って佐藤直紀さん【※】の音楽がすごいと思ったんですよ。めちゃくちゃ音楽が面白い、音楽推しの映画じゃないですか。これだけ音楽が目立っている日本映画は久しぶりだと思って、それで『428』の音楽を佐藤直紀さんに頼もうと思いついたんです。
※佐藤直紀
作曲家・編曲家。『海猿』や『ALWAYS 三丁目の夕日』、『永遠の0』など多くの映画音楽を手掛ける。
小倉:
そうなんだ!
──じゃあ福井さんは『ローレライ』、イシイさんは『428』、小倉さんは『エウレカセブン』で、みなさん佐藤直紀さんとは縁があるんですね。
イシイ:
『エウレカセブン』を観て、テクノ以外の音楽もいいなと思って確認したら佐藤直紀さんだった。『428』にはハリウッドライクな音楽を使いたいなと思って、でも日本になかなか書ける人がいないな、と思っていたところに観たのが『ローレライ』だったんですね。
──スピルバーグにおけるジョン・ウィリアムズ【※】のような音楽を日本で書ける方だと。
※ジョン・ウィリアムズ
アメリカの作曲家『スター・ウォーズ』シリーズや『ハリー・ポッター』シリーズの音楽を担当。
イシイ:
そうですね。メロディライン重視だし、ハンス・ジマー【※】よりはジョン・ウィリアムズですよね。
※ハンス・ジマー
アメリカの作曲家。『ライオン・キング』でアカデミー賞作曲賞受賞。ほかに『レインマン』、『インターステラー』など。
ジョン・ウィリアムズで思い出したんですけど、日本のJ.J.の福井さんに聞きたいのは最近の『スター・ウォーズ』ってどう見られてます?
福井:
この間の『最後のジェダイ』【※】はダメダメですね。
一同:
(笑)
イシイ:
話が合いそうですねえ(笑)。その前にJ.J.がやった『フォースの覚醒』【※】は?
福井:
『フォースの覚醒』は良かった。
イシイ:
これは話が合うなぁ!(笑)
※『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』、『フォースの覚醒』
『フォースの覚醒』は、2015年に上映されたJ・J・エイブラムス監督による作品。ルーカスフィルムがディズニー社に買収されてから初となる作品で、レイを主人公とする新3部作の第1作。2017年上映の『最後のジェダイ』その続編としてライアン・ジョンソン監督がメガホンを振るったが、その内容にはファンから賛否が集まった。
小倉:
『フォースの覚醒』はウェルメイドって言葉その通りでしたね。「J.J.がやっているウェルメイド感を目指したいよね」という話をこの間も福井さんとはしてたんだよね。
福井:
そうそうそう。
イシイ:
なぜそこを聞きたかったかと言うと、僕自身も『428』は『街』という作品のある意味続編的なものだったので。どうやったらこれまでのファンの方から受け入れられるのか、同時に新しいファンの方を連れて来れるのか、『428』はすごく模索しながら作ったんですよ。作ったあとにJ.J.の『スタートレック』を見て「これを先に見ていたら、もう一歩行けたかもしれないな」とすごく思ったんですね。『スタートレック』なんだけど『スタートレック』であることに溺れていない。
で、さらにJ.J.の『フォースの覚醒』も見てやっぱりすごいなと。彼は『スタートレック』よりは『スター・ウォーズ』のファンだと言ってるじゃないですか。でも『スター・ウォーズ』をやっても『スター・ウォーズ』に溺れなかった。
小倉:
彼自身にもオタク性はあるんだけど、必ず自分よりもっと詳しいブレーンを置くから、そこで適切な距離を作るんでしょうね。おそらくブレーンにいろんなアイデアを出してもらって、その上で観客をどうくすぐるかっていうチョイスの仕方。
福井:
なるほどね。
イシイ:
コアファンの気持ちを汲み取る提案を受けながら、さらに広いユーザー、新しいお客さんにも届くような取捨選択の勘がすごくあって。
小倉:
それが映画を通して見えるんだよね。
──作り手の取捨選択が映画を通して見える部分というのは、具体的に挙げるとどんな形ですか?
福井:
映画って前提知識がなくても楽しめるように、あまりにも混乱することはやめようっていうのが基本なんです。それで言えばJ.J.の『スタートレック』で昔のスポックを出す【※】のは大きな賭けだったと思うんですよ。完全新規のお客さんがせっかくここまで楽しんでいたのに「?」ってなっちゃう可能性もある。
イシイ:
そうですね。
福井:
でも一方で『スタートレック』はそれこそアメリカでは国民的な人気になっている。そのファンを裏切らないためにもこれぐらいはやったほうがいいっていう、あのギリギリ感。
小倉:
あのギリギリ感。いままでのシリーズも否定しない。並行世界の証として、そこから来ているスポック。
──「この人、誰?」ってなるリスクと、ファンへのサプライズを天秤にかけた結果、それを選んだというのが理解できると。
福井
そういうことですね。逆に『最後のジェダイ』はこれまでを否定して、その割には新しいものが冴えない。作っている当人は『スター・ウォーズ』に溺れないようにやったのかもしれないですけど、溺れないように身構えた時点ですでに溺れているんだと。溺れないように旧来のファンを寄せ付けないで、新しいファンに気負いすぎて沈んじゃった気がしますね。
その辺は監督ひとりの責任じゃなくて、たぶん世代交代をさせたいというビジネスの犠牲になっちゃった。もちろん何事もビジネスは意識しなければならないんだけど、ちょっと両立させる腕がなかったかなっていう感じですよね。
イシイ:
やりたことは透けて見えるんだけど、もうちょっとがんばってほしかった。
福井:
「もうジェダイとかルークに頼るのはやめようぜ!」っていうメッセージを打ち出してるわりには新しい道が提示されず、結局最後もルークに頼っちゃってる。
イシイ:
J.J.がすごいと思ったのは『フォースの覚醒』でハン・ソロやルークが出てきても、やっぱりレイとフィンの話になってるじゃないですか。そこにすごく力を入れていて、新しいこのふたりを愛してねと。しかも『スター・ウォーズ』の文法にそった上で愛してね、という差し出し方。ルークのラストもすごくいいんですよ。
でもやっぱりレイとフィンに愛着を持って終われるところが巧みだなって思いましたね。『スタートレック』でも最初は新しいカークとスポックを見て「ちょっと違うんじゃない?」って思うんだけど、観終わった段階ではしっくり来るように立ち上げていて。
小倉:
J.J.の『スタートレック』は観客として観ている間はツッコミ入れまくりなんだけど、いざエンタメとしての仕事目線で見てると本当によくできている。あ、そう言えば意外と谷口悟朗さんは『最後のジェダイ』を評価している。
イシイ:
なるほど。じゃあ次回、谷口さんに来ていただくときには……。
小倉:
また全然違う話を聞けますね。