その人形は、嘘をつく──。
9月19日発売の韓国のゲーム会社NEOWIZ社が制作した『Lies of P』(PS5 / PS4 / Xbox Series X|S / Xbox One / Xbox Game Pass / Steam)は、人々を襲い始めた自動人形の暴走を止めるため、ひとつの自動人形が立ち上がるというストーリーのソウルライクゲームです。
そんな本作の下敷きとなっているのは、イタリアのカルロ・コロッディーによる児童文学作品『ピノッキオの冒険』。いわゆる『ピノキオ』のことであり、ディズニー長編アニメ第2作として制作された『ピノキオ』でもその名を知られる作品です。嘘をついたことで鼻が伸びてしまうシーンが特に有名でしょうか。
『ピノッキオの冒険』の内容をザックリ説明しますと、人形師のゼペットじいさんによって作られた木でできた人形の子供、ピノッキオが命を得て、様々な経験をしながら本当の人間の子供になるまでが描かれています。
そして、当時の世相を反映した『ピノッキオの冒険』は風刺的、教訓的な側面が強く、その中身は子供達のトラウマになりそうな恐ろしい展開ばかり。
そういった『ピノッキオの冒険』の不気味さをしっかりと受け継いでいる本作は、奇妙ながらも美しいという独自の世界を作り上げています。
更に、本作のタイトル『Lies of P』を直訳するならば、“Pの嘘” 。『ピノッキオの冒険』同様、本作でも嘘がストーリーのキーワードとなり、人形と嘘の関係性が描かれます。
また、こういった世界の中で繰り広げられる『Lies of P』のゲームプレイには、ソウルシリーズへの多大なるリスペクトが感じられるばかりでなく、武器調合などといったオリジナル要素も充実しているため、高難易度であっても何度でも繰り返し遊びたくなるような魅力がたっぷりと詰まっています。
そこで今回は、ソウルシリーズの良さをしっかりと保ちながらも独自の発展を遂げている『Lies of P』の魅力を、可能な限りお伝えしていきたいと思います。
なお、電ファミでは『Lies of P』プロデューサーのチェ・ジウォン氏へのインタビューも掲載しておりますので、そちらも是非ご覧ください。
文/DuckHead
お気に入りの武器を自由に生み出せる、武器調合
それでは、まず最初に、『Lies of P』の大きな核となるアクション要素について見ていきたいと思います。
『Lies of P』が、ソウルシリーズに大いなるリスペクトを寄せて制作され、自らソウルライクというゲームジャンルを標榜しているということからもお分かりいただけるかと思いますが、本作の基本的なシステムはソウルシリーズと非常によく似ています。
例えば、『Lies of P』のストーリーは、敵を倒しつつスターゲイザーと呼ばれるチェックポイントを経由しながら各エリアを突き進み、その最奥にて待ち構えるボスを撃破していくことで進行しますし、主人公が攻撃や回避といった行動をとる際にはスタミナゲージが消費されるため、プレイヤーにはスタミナゲージが切れないような冷静な立ち回りが求められます。
更に、主人公が倒した敵が落としていくアイテムを使って主人公のステータスを上げていくというのも、ソウルシリーズお馴染みのシステム。ソウルシリーズファンであればすぐに馴染むことができるでしょう。
ちなみにですが、この時に消費するアイテムはエルゴと言い、『Lies of P』の世界の人々の生活の質を一気に向上させた石。ゲーム攻略とストーリーにおけるキーアイテムです。
さて、そんな本作では、右手に持つ “基本武器” と左腕に装着する “リージョンアーム” という、大きく分けて二種類の武器を駆使して戦うこととなります。
主人公の主な攻撃手段は右手の基本武器による基本攻撃とタメ攻撃。この基本武器には様々な種類があり、それぞれ攻撃モーションが異なる他、打撃・斬撃・貫き・電撃・炎……といった属性が設定されています。
そして、これらの基本武器は、武器の本体部分であるブレードと持ち手である柄に解体することが可能で、これらを自由に組み合わせることで自分好みの武器を作り上げることができるというのが、本作の大きな目玉の1つ。
“武器調合” と呼ばれる、武器を自由にっっb組み合わせるこの過程は 、ブレードが武器性能の中枢を担い、柄が武器の攻撃モーションを司る形となっているのが非常に面白いポイントです。
つまり、本作では高い性能を持つブレードの柄を変えることで、自分好みの攻撃モーションを持った性能の高い武器を手軽に作ることができるようになっているというわけで、アクションゲームではありがちな、「この武器、性能は強いけどモーションが苦手で使いにくいんだよな……」という悩みが見事に解消されているのです。
たとえば、ゲームを進める中で非常に狭い場所での戦いを強いられる局面に直面した際、横に武器を振りかぶる攻撃モーションの柄を使っていたがために、武器が壁に当たって攻撃モーションが中断され、思うように敵を攻撃することができないという状況に陥ったのですが、この時にも武器調合が非常に役立ちました。
幾度となく攻撃モーションを中断される中で苛立ちを募らせながらも、私がその武器を使い続けていたのは、対峙していた相手に有効な属性をその武器が持っていたから。
こういった状況の場合、普通のアクションゲームであれば、その属性武器を使い続けることを諦めて、その環境に適したモーションの武器に変更したりすることで対処するのですが、武器調合を利用して、ブレードの属性はそのまま残した状態で、柄だけを横に振りかぶらないモーションが主体のものに変更したところ、これまでの苦戦が嘘かのようにスムーズに相手の弱点を突く攻撃を当てられ、すぐにそのエリアを突破することができたのです。
このように、相手の能力や動き、周囲の環境に合わせて自分の中での最適解となる武器を探求していけるというのが、本作の大きな魅力の1つと言えるでしょう。
また、武器のブレードと柄は個別にパワーアップさせることができ、ブレードを強化すれば武器の攻撃力が上昇、柄を変形させれば主人公の基本能力に合わせた強化を施すことができますし、ブレードと柄には、“フェーブルアーツ” と呼ばれる、ゲージを消費して繰り出す必殺技のような特殊アクションがそれぞれ個別に設定されている上、武器の攻撃力に関わるステータスとして、動力・技術・進化という三要素が絡み合うため、本作の武器調合はかなりの奥深さを持つものとなっています。
また、本作で主人公が身に着けておける基本武器は2種類。これらは探索中であれば自由なタイミングで切り替えていくことができるため、プレイヤーは2つのファイトスタイルを常備しておくことが可能です。
つまり、新しい武器を調合したときには、その新武器とは別に、使い慣れた武器を同時に装備しておくことができるということ。装備品の入れ替え中にも普通に敵が攻撃してくるソウルライクにおいて、新武器があまりいい組み合わせでなかった場合に備えて保険をかけておけるこの仕様は、色々な武器を試してみたいプレイヤーにとって非常に嬉しいものとなっています。
勿論、装備する2つを両方とも新武器にして、色々なパターンを一気に試していくということもできます。こういったシステムが充実しているおかげで、更に更に武器調合へと手が伸びていくのです。
続いては、主人公の左腕に装着されたリージョンアームについて。
これは、1つの戦闘能力を持つ特殊な義手であり、敵を掴んでこちらに引き寄せるもの、敵の攻撃をブロックするもの、火炎を放射し汚物を消毒するものなど8種類があります。
このリージョンアームも状況や好みに応じて付け替えることができ、特定のアイテムを消費することで性能の強化も可能。使用回数には制限があるので、使いどころは慎重に見極める必要がありますが、主人公の冒険を手助けしてくれる有用な装備となっています。
そんなリージョーンアームですが、何と言っても素晴らしいのがそのデザイン。メカメカしいものが大好物である身としては、見た瞬間に心を奪われてしまいました。
リージョンアームに限った話ではありませんが、本作にはデザインの良いアイテムが多く、そういった点も、ゲームの揺るぎない魅力を構築する1要素となっているのです。
また、これら以外にも、アミュレットや防御パーツといった装備品があるのですが、これらにはそれぞれに対し重量が設定されており、その総重量が主人公の積載できる限界量を超えてしまうと、移動速度とスタミナ回復速度が低下してしまいます。
しかも、この総重量は、ただ積載限界量の限界ギリギリに収めればいいというものではなく、積載限界量の60%を超えた時点からやや重いと判定が下されて能力の減少がスタート。この絶妙なシビアさも面白いポイントですね。
慎重さと大胆さが絶妙な塩梅で求められる、防御アクション
さて、『Lies of P』がソウルライクゲームである以上、避けて通れない話題が、その難易度の高さでしょう。
通常、難易度が高いということは、ゲームのハードルを上げてしまうマイナス要素になりがちですが、この圧倒的な難易度こそがソウルライクの醍醐味であり、多くのプレイヤーに愛されてきた理由ですから、これまでにこの世に誕生してきた様々なソウルライクゲームがそうであるように、本作もまた、地獄でなぜ悪いと言わんばかりの難易度をもってプレイヤーの眼前にその姿を現わしています。
それ故にソウルライクでは、「防御」が攻撃と同等かそれ以上にゲームを攻略する上で非常に重要なポイントとなります。
『Lies of P』で敵の攻撃を食らわないようにする防御手段は、大きく分けると回避とガードの2種類。
回避は、その言葉からイメージされる通り、ステップによって敵の攻撃を避けるアクション。上手く決まれば敵の攻撃をノーダメージで切り抜けることができますが、敵の攻撃範囲とキャラクターの立ち位置によっては、回避を使ったとしてもどうにもすることができない場合もあります。
そして、ガードは、武器を構えて敵の攻撃を受け止めるアクション。これを使用して敵の攻撃を受けると、スタミナは消費してしまいますが、ノーガードの場合と比較して大きくダメージを抑えることができます。
更に、ガードによって軽減したダメージは、体力ゲージ上で “ガードリゲイン” と呼ばれる状態に移行します。このガードリゲインは、一定時間が経過することで徐々に減少していきますが、発生している間に敵に攻撃を与えることができれば、この分の体力を回復していくことが可能。つまり、敵の攻撃を適切にガードし、隙を見て的確に攻撃を与えることで、主人公の生存率を高めることができるのです。
このように、防御手段として有効なガードですが、ゲームを進めていくとことで、ガードでは防げない “フューリーアタック” という攻撃を仕掛けてくる敵も頻繁に登場してくるようになるため、こればかりに頼ってもいられません。
そこで登場してくる『Lies of P』攻略の立役者が、ジャストガード。
これは、文字通り敵の攻撃をジャストタイミングでガードすることで発動させることができるアクションであり、これに成功すると、流石にスタミナは消費してしまいますが、主人公に一切のダメージを通すことなく相手の攻撃を凌ぐことができます。
そして、このジャストガードこそが、先ほどのフューリーアタックに対処する数少ない方法の1つとなっているのです。
更に、1体の敵に対してジャストガードが複数回成功すると、その敵の武器を破壊したり、敵の体力ゲージが白く光ったスタッガー状態という大ダメージを与えるチャンスが生まれたりするため、このアクションをうまく使いこなせるかどうかが、スムーズな敵の殲滅の鍵を握ります。
……とは言うものの、ジャストガードは決して容易なものではないことに加えて、相手は一瞬の気の緩みで大惨事に陥ることが日常茶飯事なソウルライク。ヘタクソに片足を突っ込んでいる私のようなプレイヤーでは、プレイをしている間に体力を回復しなければ如何ともしがたい局面に何度も出くわすこととなります。
ということで、続いては『Lies of P』の回復システムについてお話していきましょう。
「パルス電池」と呼ばれる本作の回復アイテムは使用回数の上限が決まっているのですが、残り使用回数が0回になると、敵に攻撃を加えることでパルス電池に電力がチャージされるようになり、これを最大まで充電することができれば、1度だけ電池を再使用することが可能となります。
この0から1を生み出すチャージの回数には制限がないため、回復アイテムが底を尽きてしまったとしても、充電が完了するまでの間、相手の攻撃を上手く防御して、こちらの攻撃を的確に当て続けるというミッションさえこなせれば、どうにかこうにか主人公の命をつなぎとめていくことができるようになっているのです。
私の場合、高難易度なアクションゲームをプレイしていますと、自分の体力と残っている回復アイテムを敵の体力と比較した結果、そのあまりにも大きすぎる差にショックを受け、絶望的な空気感に包みこまれてしまうということが度々あるのですが、本作ではこのチャージシステムがあるおかげで、そのような状況に追い詰められたとしても、「あと何発か攻撃を当てればもう一度回復ができるようになる」といった具合に常に一筋の光を見出し続けることができるため、諦めの感情が顔を覗かせるタイミングがかなり少なくなっており、投げやりな気持ちでプレイをする時間が非常に短かったのが印象的でした。