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ゲーム実況の配信ガイドラインは「ゲーム実況者の法的な地位を安定させるため」にある。 法律の専門家が解説する配信ガイドライン策定の意義【CEDEC2024】

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「配信ガイドライン」を策定することで2つの法的効果が生じる

ゲームメーカーが「配信ガイドライン」を策定することでふたつの法的効果が生じている。ひとつは先ほどから述べている通り「配信ガイドライン」に則った行為なら禁止権が行使されないため、ゲーム実況者の法的地位を安定させることが可能になるというもの。

もうひとつは、犯罪の抑止効果である。ゲームメーカーは当然だが、自社タイトルの商品価値を下げるような利用はしてほしくないだろう。「配信ガイドライン」に“利用許諾の範囲に属さない行為”を明記することで、してほしくない行為を未然に防ぐことができるのだ。やっていいコトと悪いコトが最初から分かっているのはゲーム配信者の安心にもつながると個人的に感じた。

ゲーム実況「配信ガイドライン」の解説・レポート:CEDEC2024_031

なお、ゲーム実況者が「配信ガイドライン」に違反をした場合、厳しい処罰が与えられたケースもある。画像右側の「ファストコンテンツに関する裁判例」では、2時間ほどの映画を10分ほどに短縮し紹介する動画が、「映画が正当な評価を受ける機会を失わせて、映画の収益構造を破壊している」「動画投稿者は再生回数に応じた広告収益を得るため、自己顕示欲の充足などを目的としていて身勝手かつ利欲的だ」などの理由から、著作権者によって起訴された判例だ。

ゲーム実況「配信ガイドライン」の解説・レポート:CEDEC2024_032

「配信ガイドライン」は定型約款(ていけいやっかん)に該当するのか

定型約款とは、特定の者が不特定多数の者を対象に行う取引である。例えば、電車に乗るための切符の裏には定型約款の文章が書かれているという。

落合氏は「配信ガイドライン」に関して、ゲームの購入者が全員この配信ガイドラインに合意しているわけではないため、定型約款には該当しないと考察している。ゲームの購入者が全員配信するかというと、そうではないからだ。

また、定型約款は一度定めると勝手に不利益変更できない。もし「配信ガイドライン」が定期約款に該当する場合、ゲームメーカーが後から勝手に変更できなくなってしまう。そして現状の「配信ガイドライン」を見る限りでは該当しないだろうという結論に至った。

ゲーム実況「配信ガイドライン」の解説・レポート:CEDEC2024_033

さて「配信ガイドライン」が定型約款に該当しないなら、ゲームメーカーは「配信ガイドライン」を自由に撤回・変更してよいのかという疑問が生まれるだろう。

ここでは、法的な規制が2パターン考えられるという。ひとつは「一般条項」による制限だ。ゲームメーカーがゲーム実況者の立場を安定させるために出している「配信ガイドライン」を“いつでも撤回・変更可能”だとすると、ゲーム実況者の法的な地位は不安定なままということになってしまいかねない。

さらに、ゲームメーカーが一度利用許諾をしたものを、「やっぱり辞めます」と言い出すと、先ほども登場したが“自分が言ったことに反している”権利濫用によって否定される可能性があるという。

しかし、無償の利用許諾は“贈与”として考えることもできるため、未履行の部分、つまりまだ発売されていないゲームについては反映されないという見解もある。

もうひとつは「独占禁止法」による規制である。近年では、利用規約の変更が「優越的地位の濫用」として公正取引委員会の調査を受けたケースがあるという。「独占禁止法」による規制とは、先述したケースが「配信ガイドライン」にも当てはまる可能性があるというものだ。

ゲーム実況「配信ガイドライン」の解説・レポート:CEDEC2024_034

しかし、「独占禁止法」21条には「著作権法による権利の行使と認められる行為には適用しない」とある。そもそも「著作権法」自体が、対象物を独占する権利を与える法律であるため、「独占禁止」にはならないのだ。

では落合氏がなぜ「独占禁止法」の規制が考えられると語るのか。画像のように知的財産制度の主旨を逸脱し、「権利の行使とは見られない行為」である場合は、「独占禁止法」が適用されるからである。簡単に言うと「著作権」の権利行使だからといって何をやってもいいというわけではないということだ。

ゲーム実況「配信ガイドライン」の解説・レポート:CEDEC2024_035

著作権を持つ者と利用権を得る者では、立場の強さ・弱さは必然的に生まれるものだ。立場の強い者から弱い者へのアクションが、「優越的地位の濫用」ではないか?と議論されることは多いだろう。画像では落合氏が考える、ほぼ確実にこれは「優越的地位の濫用」だとされるものを例に挙げている。

下の画像の①は、「“自社タイトルの配信だけするなら”ゲーム実況をしていいよ」という素人でもわかるぐらいの性格の悪い条件だ。落合氏はこのような“マーケットを歪める行為”は「独占禁止法」に反すると考察した。

②は、「今まで無料だったけど、これからは○○円のライセンス料を払ってね」と後から変更するもの。これが適正対価ではない場合、「独占禁止法」に反する可能性があるという。

ゲーム実況「配信ガイドライン」の解説・レポート:CEDEC2024_036

最後に落合氏は、ゲームメーカーが「配信ガイドライン」を策定することで、ゲーム実況者の法的な地位を安定させる効果と、犯罪抑止の効果があるとまとめた。

また、理論的には一度配信「ガイドライン」を公開すると変更・撤回が制限される可能性があることから、ゲームメーカーは「配信ガイドライン」の策定時に専門家による精査が必要不可欠だと語った。

ゲーム実況「配信ガイドライン」の解説・レポート:CEDEC2024_037


本セッションを聴講し、「ゲーム実況」とは、ゲームメーカーが「配信ガイドライン」を策定し、ゲーム実況者の法的な立場を安定させているからこそ、ゲーム実況者は安心して配信・動画投稿を行うことができるものであると考えた。

そして今日まで、多くのゲーム実況者が「配信ガイドライン」に則って活動を行い、ゲームメーカーにとってもポジティブな効果をもたらしてきたことが、ここまでゲーム実況を我々の身近な存在に位置づけたのだと思う。なお、ゲーム実況動画を視聴する人間も、ゲーム実況を取り巻く大きな流れを知ることで、安心してゲーム実況者・ゲームメーカーを応援することができるだろう。

このような講演が行われることで、より多くの方が“ゲーム実況に作用している法律”を知ることができ、ゲームの著作権の扱い方がどんどんクリアになっていくのだと思う。いっぽうで、現時点ではまだ議論すべき点もあるように感じた。ゲームを愛する皆さんも、今後ゲーム実況をより健全に発展させるべく、ゲーム実況に関するいろいろな情報をチェックしてみてはいかがだろうか。

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ライター
何気なくプレイしたNieRオートマタによってゲームの魅力に完全に取り憑かれてしまった。
オープンワールド大好き。
FPSと他ジャンルを反復横跳び。
いいものはなんでも人に紹介したくなっちゃう。 ちょっとこれ見てみて!

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