2020年を代表するビデオゲーム 10選──電ファミ編集部による2020年のゲームシーン総括

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 「2020年のビデオゲーム」は──コロナ禍の巣ごもり需要で一部のゲーム企業は好調なセールスを示し、E3などの大型イベントが感染予防のためにオンライン化され、11月には1972年のオデッセイから数えて第9世代となる次世代機が発売された。

 日本漢字検定協会の「今年の漢字」第1位が「密」となった2020年だが、ある意味でビデオゲーム業界にとっても、話題に事欠かない“密な1年”だったと言えるだろう。

 この記事ではそんな話題に事欠かなかった今年を象徴するような語るべき“2020年を代表するビデオゲーム”を、普段からTwitterなどのSNS数値とにらめっこをし、その背景についてあーだこーだと話すファミニコゲーマーの編集部員および編集補助アシスタントが選定した。

 なぜこのゲームがBuzzったのか、このゲームが面白いと高く評価されたのか、あの問題が起きたのかなどなど、その背景について普段から語り尽くしている編集部員が解説していこう。10選となっているが、勢いあまってそれ以上の作品を番外編として紹介しているのはご愛嬌だ。

 2020年もあと残りわずか、今年ビデオゲームで何があったのかを整理しておきたい方は、ぜひ年始年末に読んでみてほしい。


『龍が如く7』

●発売:2020年1月16日 ●開発・販売:セガ(龍が如くスタジオ)対応機種:PC、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X|S

 『龍が如く』シリーズはファミ通所属時代に記事担当を12年以上務めていたため、すべてのタイトルをプレイしている。また、ありがたいことに龍が如くスタジオの面々とも親交があり、いまでも連絡を取り合う間柄が続いている。少し昔話をさせてもらうと、『龍が如く5』発売を祝した打ち上げの場に参加させていただいた際、総合監督を務める名越さんにこう聞いたことがある。

 「以前、『龍が如く』はマスではないところをとりにいったタイトルだから『4』、『5』とシリーズが続くのは想像できない、とおっしゃっていましたよね? いま『5』が発売されて、あのころと心境は変わられましたか?」と。

 名越さんは少し考えたあと「これまでは「どう続けるのか」という悩みと戦ってきた。ただ、これだけのシリーズに育ってくれたことで「どう終わらせるか」を決める権利が生まれた。消えていくのではなく、終わらせられる。これはクリエイター冥利に尽きることだよね」と答えてくれた。このときの会話はいまでも鮮明に覚えている。

 次作となる『龍が如く6』で『龍が如く』シリーズはひとつの節目を迎えた。主人公、桐生一馬の物語が完結したのだ。シリーズファンは驚き、悲しみ、次作がどうなるのかに期待を膨らませた。

 前段が長くなったが、『龍が如く7』を語るうえで、名越さんをはじめとする龍が如くスタジオが約15年にわたって積み重ねてきたものを知ってもらう必要があると考え、記させてもらった。そして満を持して発売されたのが『龍が如く7』である。

 春日一番という新たな主人公。アクションゲームからRPGへのジャンル変更。『龍が如く』の新たな幕を開く本作だが、発売を迎えるまでは変化に対し、不安や不満を述べる意見が多かった。しかし、そのほとんどは見事に手のひらを返すことになる。『龍が如く7』の出来がすばらしかったからだ。

最底辺の主人公が織りなす『龍が如く7 光と闇の行方』はどうしてRPGである必要があったのか? 桐生一馬とは異なる「明」の物語を紐解く

 筆者はあまり物語を褒めるタイプではない。ゲームシステムをどう活かしているのかも重要だが、根本的に物語に「いい」、「悪い」はなく、「合う」か「合わない」かだと考えるタイプだからだ。結論から述べると『龍が如く7』の物語はドンピシャに刺さった。
 桐生一馬という完成されたキャラクターがこれまである意味で足枷になっていたのではと思ってしまうほど、大胆に、繊細で、それでいて突き抜けた人間ドラマが描かれている。

 シナリオの完成度の高さもあるが、声高に述べたいのが春日一番の声を務めた中谷一博の真に迫る演技だ。春日というキャラクターが持つ、優しさ、温かみ、バカらしさ、そして強さ。7作目にして新主人公となる春日一番がどんな人物なのか。何を大切にして、何を守り、何を許せないのか。それをシナリオだけではなく、演技で見せつけてくれた。
 シーンのひとつひとつから春日の人間性が伝わり、プレイしたほとんどの人が春日を好きになったのではないだろうか。新主人公のキャラ立てとして、これほどの仕事ぶりはない。「キャラクターに命を吹き込む」という言葉をひさしぶりに思い出す熱演だった。

 現代RPGの最先端バトルシステム、伊勢佐木異人町の作り込みの密度の高さなどなど、ゲーム部分についてはさまざまなところですでに語り尽くされていると思うので詳細は割愛したい。本稿で物語のことを中心に述べているのは、『龍が如く』が人間ドラマを根底に置いているシリーズだからだ。
 ゲームで人間ドラマを描く。これは1作目から変わっていない、シリーズが脈々と受け継いでいるテーマだ。人間ドラマが主軸にあるからこそ、俳優陣が毎作ゲスト出演してもぶれず、サブミッションに深みが出て、ミニゲームも本編を忘れてハマれて、終わったあとに誰かと語りたくなる。

 手塚治虫の『火の鳥』のように、人間ドラマというテーマが根底にあることで、『龍が如く』は主人公が変わっても、ジャンルが変わっても、芯は決してぶれず、多くの人に愛され続けるだろう。『龍が如く7』をプレイして感じたのは、その確信だった。「シリーズ最高傑作のひとつ」と評される『龍が如く7』。その評価は決して間違っていないのだ。

文/豊田恵吾

『ディズニー ツイステッドワンダーランド』

●配信:2020年3月18日 ●開発:f4samurai ●販売:アニプレックス ●対応機種:iOS、Android

『ディズニー ツイステッドワンダーランド』:読者にストレスをかけないよう配慮されたシナリオ

 『ディズニー ツイステッドワンダーランド』(以下、ツイステ)は、女性向けのスマホゲームという、メインストリームからは外れた作品だが、間違いなく2020年を代表するゲームのひとつに数えられるはずだ。

 ディズニーヴィランズ(悪役)をインスパイアした、現代的なキャラクター設定と魅力的な世界観が大いに人気を博した。男性向けIPで例えると、『東方Project』『艦隊これくしょん』『Fate/Grand Order』あたりと同じくらいに二次創作が盛り上がった、と言えば想像しやすいだろうか。

 ひさしぶりにちょっとびっくりするぐらい流行していたので、8月ごろにそれまでの『ツイステ』流行の軌跡をまとめた。pixivの小説ランキングはネット上での女性向け人気ジャンルを最も顕著に反映する場所のひとつなのだが、そこのトップ10をずっと独占し続けたり、単なるCMの告知ツイートが20万RT以上を記録していたりと、他に例を見ない流行り方をしていた。

 それ以降も『ツイステ』の勢いはとどまるところを知らない。新しいグッズやイベントの情報が出ればすぐに万単位のRT数で拡散されたり、ハロウィンイベントの情報が公開された生放送では、新カードが発表されるたびにキャラクター名がTwitterトレンドに載ったりしていた。

「『ツイステ』ってやつがすごく流行ってるんでしょ?」という人におくる『ディズニー ツイステッドワンダーランド』流行の軌跡

 どうして『ツイステ』はこんなにも人気になったのだろうか。『ツイステ』の魅力として、「シナリオの面白さ」は良く挙げられるポイントだ。ヴィランズが主役なだけに、王道から少しずらしたり、“毒”を感じさせたりする展開が特徴的(参考リンク:4Gamer)なのだが、そこについてもう少し踏み込んでみたい。

 『ツイステ』のシナリオを読んでいると、「キャラクターの魅力を誤解なく伝えること」に貪欲に取り組んでいるように感じられる。具体的に言うと、読者を苛立たせないようにする配慮、すなわちヘイトコントロールがとてつもなく上手い。

 例として挙げたいのが、「グリム」というキャラクターの存在だ。「グリム」は主人公の相棒なのだが、野心が強く気が短いというトラブルメーカーとしての側面を持っている。こういったキャラクターは、起伏のあるシナリオを展開するには必要不可欠な存在だが、読者からは「足を引っ張っている」と嫌われることも多い。
 作り手と受け手の間に生まれるアンビバレントな課題だが、『ツイステ』はこの問題を上手に回避している。グリムを「猫の姿をした魔獣」にしたのだ。猫ほど、“人間に迷惑をかけてもしょうがない”と思われている存在はほかにないだろう。この工夫によって、プレイヤーはグリムに対して苛立つよりも、彼の無邪気さを楽しむことができるようになっているのではないだろうか。

 『ツイステ』のシナリオには、あらゆる点でこういった「読者にストレスをかけないようにする配慮」が見られるのだ。もちろんシナリオ自体の面白さも大きいのだが、「これだけ工夫されているシナリオなら、熱狂的に愛されているのも頷けるな」と納得できるものに仕上がっている。

 『刀剣乱舞』『あんさんぶるスターズ!』『アイドリッシュセブン』などのビッグタイトルがいくつも出た2015年と比べると、近年の女性向けゲーム市場はレッドオーシャン化が進み、難しい状況になっていると言わざるを得ない。
 そんな中で現れた『ツイステ』の大ヒットは、「女性向けゲームアプリ、まだまだ行けるんじゃないか!?」と思わせてくれる、気持ちのいい流行り方だった。今後もこの勢いに乗って面白い作品が出てくれれば良いな、と願ってやまない。

文/甘色

『Half-Life: Alyx』

●発売:2020年3月20日 ●開発・販売:Valve対応機種:PC(VR)

(画像は『Half-Life: Alyx』公式サイトより)

 初めて初代『Half-Life』を遊んだとき、それまでのゲームにはない圧倒的な没入感に痺れた。まるでその世界に入り込んだかのような感覚・体験。ゲームってなんて凄いんだ! というのを、問答無用で感じさせてくれたのが、『Half-Life』という作品だったのである。

 続編となる『Half-Life 2』も、やはり“それまでにない”感覚を与えられたゲームだ。当時としては圧倒的な表現力を誇ったSource Engineをベースにした美しい3Dグラフィックスも凄かったが、それに加えて物理演算や高度な敵のAIなどによって、まさに「世界そのものをシミュレートしている」ような感覚を、初めて我々ゲーマーに見せつけてくれた作品だったように思う。

 そして、2020年3月に出た『Half-Life: Alyx』もまた、“これまでにない”凄まじいゲームである。VRという新しいプラットフォームで、ゲームがどう進化できるのか? その問いに真正面から答えた作品だと言えるかもしれない。

 本作の何がそんなに凄いのか? それは、これまでのゲームとは比較にならないくらいの「実在感」にある。具体的には、以下のようなところが凄く丁寧に作り込まれているわけだが……。

 ・その世界にあるものに「ちゃんと触れられる」
  ・さまざまなオブジェクトを実際に掴める
   ・さらにそれを投げたりもできる
   ・ペンを拾って壁などに落書きしたりも
 ・銃弾の装填を自分の手で行う必要がある

 などなど。こう書くだけだと、それの何が凄いの? と思うかもしれないが、グラフィックスや物理シミュレートがハイエンドであることを前提に、こうした部分を「ちゃんとVR上でやる」ことで、本当に「そこに世界がある」と、脳が錯覚させられてしまうような感覚があるのだ。

 これは、実際にゲームに触れてみてもらわないことには伝わりづらい部分なのだが、本作をプレイしていると、「ああ、VRの体験ってこういうことか!」と思えるレベルの、新しい体感が確かにある。

(画像は『Half-Life: Alyx』公式サイトより)

 また、本作をやってあらためて思うのが、我々がいかに「ゲーム的なお約束」に慣れてしまっているかということだ。ボタン押したら近くのアイテムがさっと取得できる、リロードボタンを押したら即リロードなどなど、昨今の3Dアクションゲームでは当たり前のアクションでも、それを「実際に手を動かしてやる」と、まったく違う体験になるのだということ、本作はまざまざと見せつけてくれる。

 美しいグラフィックスと快適なUIで遊ばせる、昨今の最先端の3Dアクションゲーム群が、いかに「いろいろな面白さを再現できていないか」「いろいろなものをスポイルしているか」ということに、本作を遊ぶとあらためて気づかされるのだ。
 VRというプラットフォームが、ただ視野が広い映像を映すだけのものではなく、どれほど我々に新しい体験・感覚を提示し得るものであるのかを、本作は、作品を通して雄弁に語っているわけだ。

 ゲームの世界に入り込めることを示した初代『Half-Life』。
 次に、その世界自体を高度にシミュレートしてみせた『Half-Life 2』。
 そして、その高度に再現された世界を、“実際に触われるもの”にしたことによって、「実在感」という新たな感覚を提示してみせた『Half-Life: Alyx』。

 ゲームの新たな地平線を指し示した作品として、本作がVRゲームにおける──いや、ゲーム史上におけるマスターピースのひとつになるだろうことは疑いない。

文/TAITAI

『あつまれ どうぶつの森』

●発売:2020年3月20日 ●開発・販売:任天堂 ●対応機種:Nintendo Switch

(画像は『あつまれ どうぶつの森』 公式サイトより)

 『あつまれ どうぶつの森』のすごさを証明する数値は快挙にいとまがない。任天堂の2021年3月期第2四半期決算では世界累計販売本数が2604万と発表。国内でも発売から半年で562万本以上を販売し、シリーズタイトルでも歴代トップとなる売上を叩き出している。

 これだけの売上を記録しているのは、ゲーマーだけではなく、ふだんゲームを買わない層をしっかりと取り込んでいるからにほかならない。それを証明したのが、まさに我が家のケースだった。

 現在、我が家にはNintendo Switchが3台ある。そして『あつまれ どうぶつの森』のソフトも3本ある。もともとは自分用に1台所有していたのだが、『あつまれ どうぶつの森』が発売されて状況は一変した。
 ふたりの娘が『あつまれ どうぶつの森』を遊びたいと言い出したからだ。娘たちがそう主張したのにはわけがある。ゲームとしてのおもしろさはもちろんだが、新型コロナウイルス感染症対策として学校が臨時休校となったことが環境的要因として大きく影響していた。

 2020年3月当時、Nintendo Switchの入手は困難を極めた。さまざまなサイトで抽選に申し込み、その結果に一喜一憂しながら4月中になんとか2台のNintendo Switchを入手することができた。すべては『あつまれ どうぶつの森』を遊ぶために。ハードを牽引する。この言葉を具現化したようなタイトルだ。

『あつまれ どうぶつの森』人気の要因のひとつ「多様性」で広がるユーザーの“自己表現”。車椅子で受け入れられた人、性別にとらわれず選べる選択肢

『どうぶつの森』のアイテムは“無機能”であるがゆえに”自由”を生む──マリオやゼルダのような機能重視のゲームデザインと、その真逆である『あつ森』の凄さ

 ゴールデンウイークから娘たちの本格的なプレイが始まった。驚いたのは大人がなにも啓蒙していないにもかかわらず、子どもたちはいつのまにか『あつまれ どうぶつの森』の情報を得ていたことだ。 

 「友だちが持っていた家具がかわいい」、「住人を厳選して招いた」、「1週間後に特別なイベントがある」。彼女たちはメディアで情報を入手するわけではない。ゲーム内の興味・関心を、フレンドとのゲーム内チャットで得ているのだ。なんと完成されたエコシステムだろうか。

 シリーズの核となる「コミュニケーション」を昇華させた『あつまれ どうぶつの森』。パスワードで気軽に島の訪問ができるようになり、マイデザインが共有できるようになったことでオンラインの敷居が下がり、世界中のプレイヤーが影響を受けられるようになっている。
 このような新機能にプラスして、外に家具を置けることや、どうぶつたちの行動がより豊かになったことも、『あつまれ どうぶつの森』によるコミュニケーションの幅をさらに広げている。

 ふだんゲームをやらない妻が、娘たちのはまりように感化されてプレイを始めたのはまた別の話だが、同じような光景が多くの家庭で巻き起こっていると考えると、2020年最大の話題作と述べるのに一切の反論はないだろう。

文/豊田恵吾

『The Last of Us Part II』

●発売:2020年6月19日 ●開発:Naughty Dog ●販売:SIE ●対応機種:PS4

 「パックマン」がモンスターに噛み付き、「マリオ」がクリボーを踏んで撃退するようになってから、ビデオゲームはひとつの文脈を抱え続けている。見聞きして体験するだけでなく“攻略”するエンターテイメント作品であるがゆえに、多くのビデオゲームには「敵」が登場する。そして、その敵を排除するためにキャラクターたちが「暴力」を行使しているという事実だ。

 僕らは日常生活では人を傷つけず殺さないようにと教えられているのに、キャラクターを通じて銃を撃ちナイフを突き刺して、チープなスナック菓子でも食べるようにバイオレンスを楽しんでいる。筆者は今年発売された『DOOM Eternal』も大好きなので、そのことの良し悪しについて説教なんてするつもりはないが、ともかく現実世界の常識とゲームの世界のルールではそういった矛盾があり続けてきた。

 その暴力の矛盾はゲームクリエイターたちも感じてきたはずで、『METAL GEAR SOLID』『デス・ストランディング』の小島秀夫監督はそうだし、『moon』の木村祥朗さんとオニオンゲームズ、『Undertale』のトビー・フォックスさんもそうだろう。

 これらのクリエイターたちは、プレイヤーたちが敵を排除するために振るう当たり前の暴力をモチーフにし、問う意味を込めてその矛盾を、さまざまなゲームシステムや世界設定に巧みに落とし込んでいる。非致死性の武器やアクションを取り入れたり、モンスターを狩る勇者をべつの視点から見てみたりするのもそうだし、あるいは敵と友だちになることで暴力を振るわないゲームデザインもそうだ。

『The Last of Us II』という“次世代に語られるべき狂気の名作”について。倫理のない復讐の世界が描くのは「赦し」ではなく「命の選り分け方」

 2020年に発売された『The Last of Us Part II』は、そういった作品と比較すると異例のタイトルである。なんせ、暴力をゲームに落とし込むのではなく、いかに暴力をゲームの上でリアルに描いてプレイヤーに突きつけるかにフォーカスしているからだ。

 カットシーンではエリーの顔が信じられないほど苦渋にあふれ、心臓の鼓動のSEがフルスロットルとなり不安を煽る。バタフライナイフで敵の肉が抉れる音と、悲痛な叫び声が聞こえる。さっき殺した敵の血がベットリと床と壁に広がっている。殺した犬の名前なんて聞きたくなかった。撃ち抜いた頭は割ったスイカのように砕け、爆発で四肢は四方八方へ吹き飛ぶ(これは海外版だけの表現だが)。流血、死体、拷問、射殺、撲殺、爆殺。なんて悪趣味なゲームなんだ!

 これらが極上のグラッフィクスとアニメーション、狂気の作り込みで確立されていく。正直なところ、YouTubeじゃなくてLiveleakに載る類のやつ。暴力の連鎖はつぎからつぎへと続き、あまりにも陰湿かつねばっこく描かれるもんだから、プレイしていてたまらない気持ちになる暴力ゲームNo.1である。これが『ソナチネ』みたいな乾いた暴力だったら、どんなによかったことか。

 そしてNaughty Dogとディレクターのニール・ドラックマンは、ゲーム上で長大かつ緻密に記した暴力の連鎖の答えをプレイヤーに委ねることなく、「これが暴力の矛盾への答えだ」と最後に突きつけてくる。槍のひと突きのような鋭さ。そうして、「なぜエンディングはああなったの? 意味わからん」とか、「ゲームを楽しみたいだけなのに暴力を考えろとは? 知るか」とか、そういう疑問を抱かせる装置として、『The Last of Us Part II』は芸術的に完璧であり美しい装置なのである。

 暴力の連鎖を徹底的にリアルに体験させ矛盾への疑問を抱かせることが目的なのだ。これが人が楽しむ娯楽や、ためになる作品として成立しているかは、正直、人によるとしか言えない。受け入れられない人には、受け入れられない作品だし、それは正しい。ローンチ直後に本作への評価がさまざまな文脈にとらわれ、インターネット上で主義主張の棒となったり強く否定的な意見が悪目立ちしたのも、そういう構造から来ている部分もあるだろう。

 だが一言だけ言いたいのは、ゲームに真摯に向きあいエリーの物語を終えれば、納得にしろ嫌悪感にしろ何かしら心に去来するものがあるだろうということだ。無心でなければ、安っぽいポテトチップスでくだらなくお腹をふくらませたとき以上には“何か”は満ちる。『The Last of Us Part II』は、「ゲームにおける暴力の矛盾」を新たなレベルでモチーフにした作品として、2020年を代表するビデオゲームと言える。

文/ishigenn

『Ghost of Tsushima』

●発売:2020年7月17日 ●開発:Sucker Punch Productions ●販売:SIE ●対応機種:PS4

(画像は『Ghost of Tsushima』公式サイトより)

 「誉は浜で死にました」「お侍様の戦い方じゃない」などのパンチラインを生み出し、ネット上でも多くの話題を生んだ、Sucker Punch Productionsが送る和風オープンワールドRPG『ゴーストオブツシマ』

 “風”によってプレイヤーを誘導し、短歌や温泉スポット、動物たちを追いかけまわしながら美しい情景に能動的に関わることのできるサブ要素など、小回りの利いたデザイン性が大きな話題となった。

 また「世界ふしぎ発見」長崎県・対馬の特集が放送された際は『ゴーストオブツシマ』の映像が流れた上にナレーションを石川先生が務め、ゲーム好き以外へのインパクトも残しているはずだ。

 ステルス要素というシナリオと密接に関係する部分では賛否両論があったものの、一見硬派に見える境井仁やゆかいな仲間から垣間見えるほころびや愛嬌も功を奏し、日本だけではなく海外からも多くの支持を得た。

『Ghost of Tsushima』レビュー。誉れ高き「武士」と対馬の民を守るための邪道の道「冥人」、その葛藤の行く末に待つものを示す和風オープンワールドゲーム

『Ghost of Tsushima』は歴史ではなく“サムライファンタジー”を追求したオープンワールドゲームだった。「日の本の美」を表現するための創造に迫る

 本作の魅力を簡単に述べると「誉れ高き武士として育てられた仁の葛藤と矛盾」、「ハッキリとした目的を持った登場人物」、「高揚感と緊張感を得るこのができる刀での戦闘」、「テーマと密接に関係する冥人としての戦闘」、「広大で美しい自然と、それに能動的に関わりたくなる風や動物たちを利用したゲームデザイン」が上げられるだろう。とくに武士のカッコよさを安直に伝えるのではなく、真摯に武士の価値観と向き合ったストーリーが評価できる。

 マルチプレイモード「Legends」(冥人奇譚)の配信も盛り上がり、まだまだ遊べる作品となっているのでまだプレイしていない方はぜひ楽しんでいただきたい。

文/tnhr

『Fall Guys: Ultimate Knockout』

●発売:2020年8月4日 ●開発:Mediatonic Limited ●販売:Devolver Digital ●対応機種:PC、PS4

(画像はFall Guys: Ultimate Knockoutより)

「プレイする際の腰の重さ」が圧倒的に低かった『Fall Guys』

 2020年の8月から9月にかけて、『Fall Guys: Ultimate Knockout』(以下、Fall Guys)の人気はすさまじいものだった。Steamでの最大同時接続数は発売から2週間経っても伸び続け、Steam版は売り上げ700万本を突破し、発売と同時にフリープレイに登場したこともあってか、PS PlusでのDL数は歴代1位を記録した。この規模感からは信じがたいが、インディーのバトロワゲームで、しかも基本無料ではなく買い切り型であることを考えると、とてつもない快挙だと言えよう。

 リリース当初は「風雲たけし城ゲーム」という、伝わるのか伝わらないのかよくわからない触れ込みだった(事実、リリース前に開発のMediatonicが「たけし城にインスパイアされた」と言っていたのだ)のだが、あれよあれよという間に大流行に成長していた。
 開発チームのPR戦略が非常に巧みだったのも印象的だ。ポップでキュートなフォールガイの衝撃的な骨格図を公開したかと思えば、真相を巡って開発チームに亀裂! と称してカワイイ骨格図を出したり、チーターだけがマッチする「チーター島」を実装したりするなど、話題に事欠かなかった。

 どうしてこれほど流行ったのか。その理由のひとつとして、「圧倒的に敷居が低い」ということはまず挙げられるだろう。そもそも、バトルロイヤルというジャンルは「基本的には負ける」のでプレイの敷居は低いのだが、『Fall Guys』では「プレイする際の腰の重さ」がさらに軽くなっている。
 操作はほぼ覚える必要がないし、1ゲームも短い。エイム力も必要ないし、マップを覚える必要もない。ランダム性もそこそこ高いので、下手でも頑張っていれば生き残れたりする。

 そのため、既存のバトロワ系ゲームにあまり馴染めなかった筆者でも楽しんで遊ぶことができたし【※】、「このゲームならドン勝も狙えるんじゃないか……?」と思えたりもした。実際にはそこまでやり込めはしなかったのだが、『Fall Guys』には「自分でもできそう」と思わさせるものがあった。

ぼくが面白くなかった『Fall Guys』、妻が楽しんだ『Fall Guys』。対戦マルチプレイゲームでひとりのコアゲーマーが振り返った「楽しい」の感情

※余談ながら、対戦型ゲームにおいて「楽しい」と「面白い」は異なる感情だ。こちらの記事では、『Fall Guys』を引き合いに出しつつ、その点が見事に分析されている。あわせてご参照いただきたい。

 当時、ネットでは右を見ても左を見ても『Fall Guys』が配信されており、こんなに誰も彼もがプレイするゲームがこの時代に現れうるものなのか、と驚いた記憶がある。しかし、10月に配信されたシーズン2以降、その勢いはぱたりと止んでしまった(少なくとも国内では)。

 その盛衰のスピードも含めて、まさしくバブル的な人気であったと思う。しかし、そのレベルまで話題になること自体が珍しく、そして困難なのだから、『Fall Guys』が2020年を代表するゲームのひとつであることは間違いないだろう。

 とはいえ、まさかこのレベルで流行るものがもうひとつ(『Among Us』)現れるとは思わなかったが……。2020年は魔境なのか。

文/実存

『Among Us』

●発売:2018年6月15日 ●開発・販売:InnerSloth ●対応機種:iOS、Android、PC、Nintendo Switch、Xbox One、Xbox Series X|S

(画像は『Among Us』 公式サイトより)

 みなさんは、魅力的なゲームを見かけたときどうするだろうか。ゲームへの興味と腰の重さを天秤にかけ、ゲームへの興味が勝ったらゲームをダウンロードするだろう。しかしダウンロードしていざプレイしたはいいものの、初心者ゆえにゲームを楽しむところまでプレイできず、なんとなく辞めてしまう経験があるのではないだろうか。

 本項では、美麗なグラフィックも、議論に役立つボイスチャットもない、だけども新規プレイヤーの参入への障壁をうまく取り払い、2020年大きな話題となった『AmongUs』の魅力について触れていきたい。

 本作は、直感的に理解できるミニゲーム「タスク」と、4〜10人のプレイヤーの中に紛れ込んだ1〜3名の人狼をあぶり出す「議論」のふたつのセクションから成る人狼ゲームだ。

 Crewmate(村人)陣営の勝利条件はふたつ。宇宙船を修理するタスクを全て完了するか、議論によってImposterを全員追放することでCrewmate側の勝利となる。
 Imposter(人狼)陣営は、Crewmateを殺害してImposterと同人数にした時点で勝利となる。また、Crewmateへの妨害も可能。時間制限付きのタスク(メルトダウンや酸素濃度を減少させる)を発生させ、Crewmateが時間制限内にこのタスクをクリアできなかった場合もImposter陣営の勝利となる。

 動画サイトや配信サイトで大きな話題となったことで、2018年の発売から2年を経てプレイ人口が大幅に拡大した本作。プレイしたことがなくとも、動画や配信で見たことがあるという方も多いのではないだろうか。

(画像は『Among Us』 公式サイトより)

 まず本作には、人狼ゲームにおける「占い師」や「狂人」といった役職が存在しない。本作における役職は「Crewmate」と「Imposter」のふたつのみとなっている。複雑なことは考えずただ人狼をあぶり出せばよいので、プレイしてすぐに議論に参加することが可能だ。

 人狼ゲームの欠点である、追放されたらゲームに干渉することはできない点をカバーしているのも、新規プレイヤーには優しい点だろう。議論の末に追放されてしまった場合でも、Crewmateであればタスクを、Imposterであれば妨害が可能なので、ただゲームの終了を待つのではなくゲームに参加しながらゲームの行く末を見守ることができる。

 また、一度見たら忘れられない、キャッチーなビジュアルも魅力のひとつだ。マッチングルームにあるPCから、好きな色を選択したり、帽子を被せるなどCrewmateのカスタマイズも可能となっている。カスタマイズした自分のCrewmateがフィールド上を右往左往する様子はキュートで、プレイを重ねるごとに、より一層愛着が湧くことだろう。

 しかし本作では、通常の人狼ゲームと違って人狼による殺害がはっきり描かれる。緊張感のあるSEと共に、自分のCrewmateが銃で後頭部を撃たれたり、ナイフで何度も刺される様子がアニメーションで流れるのはショッキングなのだが、少しシュールで笑ってしまう。死体となったCrewmateは、体が半分に切断され骨が露出するが、これもなんだかポップな骨が1本だけ飛び出ているのだ。このあたりのキュートとシュールのバランス感も、ブームの一因だろう。

 新規プレイヤーの参入障壁を取り払いながらも、人狼ゲームのスリルはそのまま楽しめる『AmongUs』。PC版、スマートフォン版にくわえて12月16日(水)にNintendo Switch版もリリースされている。ダラダラしがちな年末年始にプレイして、ヒリつくスリルを味わおう。

文/anymo

 

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