2020年を代表するビデオゲーム 10選──電ファミ編集部による2020年のゲームシーン総括

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『天穂のサクナヒメ』

●発売:2020年11月10日 ●開発:えーでるわいす ●販売:マーベラス ●対応機種:PC、PS4、Nintendo Switch

(画像は『天穂のサクナヒメ』 公式サイトより)

 僕たちはビデオゲームという空間でどんな世界へも行けるし、どんなことだってできるはずなのに、「現実世界で起きていることを仮想世界で忠実にシミュレートする」という魔性の魅力に抗えない。世界(とくにドイツ)では狂ったようにシミュレーター型のゲームがリリースされ続け、地道に農業をやるだとか、PCをビルディングするだとか、家屋をリノベートして売るだとか、欧州でトラックを運転するだとかが再現されており、じつに多彩でよく思いつくものだなと思う。

 『天穂のサクナヒメ』は探索型の横スクロールアクションゲームではあるが、作中の「稲作シミュレーター」が強い注目を浴び話題をかっさらったことは間違いないだろう。プレイヤーは田畑をわざわざ起こし、種籾の選別から始め、苗を育てて、水田の管理をし、収穫したあとも脱穀といった作業工程が求められる。発売直後からTwitter上でそのリアルすぎる稲作が話題となり、「農林水産省公式HPが攻略wikiだ」とのパワーワードも生みだした。

農具ライクRPG『サクナヒメ』がTwitterでトレンド入り。本格的な米作りが話題に、「農林水産省公式HPが攻略wiki」と注目集める

「米づくりがガチすぎる」で話題沸騰中の『天穂のサクナヒメ』が本当に本気だった。細部まで再現したお米作りを体験できる本作の稲作パートを紹介

 では『天穂のサクナヒメ』が「稲作という独自のテーマに着目した」から大成功したのかと聞かれれば、そう単純な話ではないだろう。『Goat Simulator』『ごく普通の鹿のゲーム DEEEER Simulator』といった特例は置いておいて、この世にはシミュレーターと名の付いた適当なゲームが多々発表されているが、『天穂のサクナヒメ』には別格の味わいがある。

 それはゲームの内外において、開発のえーでるわいすの「稲作とゲームに対する誠実さ」があふれているからにほかならない。もはやレッドオーシャンのインディーゲームにおいて、一点突破のアイディアをそのままぶつけたような作品は日々濁流のように左から右へと流れている。
 筆者はニュース班を担当する編集スタッフなので、くだらない設定の作品を「笑えるね」とライターと話しながら、仕事として一発屋のお笑い芸人をお茶の間に送り出すテレビディレクターのような気持ちで紹介することもある。だが『天穂のサクナヒメ』は、まるで農作商品の生産者表示を見たときのように、ちゃんと作られたゲームであることがわかる。

 注目を浴びた稲作にしても、自宅でわざわざキットを注文して米作りをしたり、図書館や農学の論文を調査したりとフィールドワークに長大な時間を掛けてきた。マーベラスの公式サイトやインタビューでその熱量は宣伝され、害虫や水位、肥料の設定など細部まで長い開発期間を投じて作り込まれた要素もSNS上で見事に拡散されていった。これは稲作という設定をアイディアで終わらせず、おそらく「ここまで作り込む必要があるのか?」と脳裏に浮かびながらもそのテーマを誠実に追求したえーでるわいすの姿勢がもたらしたものにほかならない。

 そしてプレイしていて何よりも嬉しいのは、『天穂のサクナヒメ』がビデオゲームとしてもしっかりと作り込まれた面白い作品だということだ。探索アクションパートは爽快な出来で手触りも心地よく、これが一発屋のゲームでないことは触ればすぐにわかる。そこに稲作を軸とした食事パートがステータスアップというゲーム要素として見事に繋がっており、稲作でのゲームプレイがゲームの面白さと直結している。

 しっかりと作り込まれた白ごはんは美味しいという、ごく当たり前だがじつは難しいことを成し遂げた『天穂のサクナヒメ』。5年以上の開発期間と多数の人たちが関わった本作が、50万本以上のセールスを記録し「2020年を代表する作品」となったことには、思わずほっこりしてしまう。

文/ishigenn

『サイバーパンク2077』

●発売:2020年12月10日 ●開発・販売:CD Projekt RED ●対応機種:PC、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X|S

バグや性器が悪目立ちするがオープンワールドRPGとしては特異点にあたる傑作『サイバーパンク2077』

 世界中のゲーマーが期待した『サイバーパンク2077』は、ある種の“サイバー問題児”として多くのユーザーの手元へと届けられた。

 バグやクラッシュが多発しハードによっては十分にプレイできず、返金騒ぎもあったため、マイナス面の話題が多くなってしまっているが、間違いなくオープンワールドRPGとして最高峰の物語体験を提供してくれる。

 とにかくシナリオ、ゲーム内を構成する要素、どの面から見ても本作のボリュームは度を超えている。メインストーリーのみをストイックに進めることができれば、常識的なプレイ時間に収まるのだが、もちろんナイトシティの誘惑はそんなことを許さない。

 50時間もプレイすれば全体のボリューム感はだいたい見えてくると踏んでいたのだが、本作はどこまで続くのか分からない……と語ったレビューからさらに数10時間プレイしている。いまだにナイトシティでの生活から離れることができない。サブクエストを進めていくと恋に暗殺に大忙しといった具合にてんてこ舞いだ。

我々が見てきたものは氷山の一角だった──数十時間のプレイでも全体像が見えない『サイバーパンク2077』レビュー。オープンワールドRPGにひとつの区切りを付けた大傑作

『サイバーパンク2077』は崩壊するほど「情報」を高密度に積み上げ何を目指したのか。広さではなく“深さ”で創られた「存在感」と「地続きの世界」

 もちろん、細部まで情報がぎっちりと詰まったサイバーパンクの世界で、ひとりの住人としてミッションや生活をこなしていく体験の濃度が薄いわけではない(サブクエストの内容の濃密さが始まるまで一切分からないのは少し残念だが)。

 ゲームの舞台である2077年を“次世代”と呼んでいいのなら、『サイバーパンク2077』はまさに次世代に残すべきマスターピース、傑作と言ってよい完成度を誇るだろう。

 とにかくバグや性器に目が行ってしまうのは仕方のないことだが、シナリオやゲームプレイの真っ当な素晴らしさについても話題に上がるべきだ。また、CD Projekt REDが今後展開していくDLCにも注目していきたい。

文/tnhr

番外編:『ARK: Survival Evolved』

●発売:2017年8月29日 ●開発・販売:Studio Wildcard ●対応機種:PC、PS4、Xbox One、Nintendo Switch、iOS、Android、Stadia

(画像は『ARK: Survival Evolved』 公式サイトはこちらより)

Vtuberの大規模PvPにより再ブーム『ARK: Survival Evolved』

 ゲーム実況のおかげで再ブームが訪れたゲームはこの世に多く存在する。今年もっともそれが顕著だった作品は『Among Us』だと思われるが、日本のVtuber文化の盛り上がりを見ると『ARK: Survival Evolved』も外せない作品となるだろう。

 2015年に初めてリリースされた『ARK: Survival Evoled』は恐竜が住む島でのサバイバルをテーマにしたマルチプレイオンラインゲーム。にじさんじやホロライブという大型Vtuber事務所が各自でサーバーを設立し、その中で行われたライバー同士の掛け合いが大きく話題になった。

 くわしくは電ファミで以前執筆した「にじさんじARK戦争」の戦記をご覧になっていただきたい。

バーチャルライバー「にじさんじ」が恐竜サバイバルゲーム『ARK』で起こした大戦争が注目集める。水資源を巡る緊張、有力者「四皇」の登場、誘拐と同盟で始まった戦いは立体的な戦記と化す

 ロールプレイにロールプレイを重ね、複雑化していく恐竜の世界。私は「ARKにじさんじサーバー」をもうひとつの「にじさんじ」としての世界を構築するための可能性だと感じた。

 そこでは、政治的なやりとりが行われて、もちろん戦争も発生してしまう。だが、そこに現れる社会的なリアリティは私たちファンを熱狂させ、さらにVtuberが次のステージへと進化していることを確信させたのであった。

 配信文化の多様化や、包括契約によって生まれた実況文化の法的整備が著しく進んだ2020年は、ゲーム実況の新しい可能性の幕開けだともいえ、『ARK: Survival Evolved』関連のゲーム実況はそれを象徴したコンテンツだとも言える。

 続編の開発やアニメの制作も発表されており、これからも恐竜サバイバルゲームからは目が離せないはずだ。

文/tnhr

番外編:『マルコと銀河竜』

●発売:2020年2月28日 ●開発:TOKYOTOON ●販売:TOKYOTOON、HOBIBOX ●対応機種:PC

(画像はマルコと銀河竜より)

1000枚超えのCGとトゥーン調アニメによって生み出される独特なグルーブ感が話題を呼んだ『マルコと銀河竜』

 次世代機が登場しスペックの上昇によって極まる美術表現がある一方、それとはまったく関係ないところでも“職人の技”は進化し続けている。

 TOKYOTOONの『ノラと皇女と野良猫ハート』シリーズのスタッフによる、全年齢向けアドベンチャーゲーム『マルコと銀河竜』は、長い美少女ゲームの歴史の中でも異色だと言わるほどの新鮮な体験をプレイヤーに提供した。

 百聞は一見にしかず。まずは、このOPムービーを観れば何が異様か一瞬で分かるであろう。

 本作の特徴は1000枚を超える圧倒的なCGの量、そしてめちゃくちゃ動くカートゥーン調のアニメーションだ。じっくり噛みしめて文章を読み進めていくというよりは、テンポよく軽やかにシナリオが進行していき、その作中のテンポの良さとギャグの連発、キャラクターの愛嬌がリンクし、物語が進行していく現象自体に強い快感を覚える。

 宇宙版『母を訪ねて三千里』とも表現されるシナリオ自体は、残念ながら描き切るができず、またテーマやキャラクターの掘り下げが甘いため不完全燃焼に陥ってしまう場合があるのだが、それを含めて「この手法のアドベンチャーゲームをこの世に放出したい」という気概を感じて評価ができる。

 また、途中に挿入される謎のミニゲームや、井澤詩織やファイルーズあいなどの豪華声優にも注目していただきたい。

 多くの美少女ゲーム制作会社が『マルコと銀河竜』に感化され、尖った手法を利用したゲームが生まれたら非常にうれしく思う(めちゃくちゃ大変だと思うが……)。

文/tnhr

番外編:『ファイナルファンタジーVII リメイク』

●発売:2020年3月20日 ●開発・販売:スクウェア・エニックス ●対応機種:PS4

(画像は『FINAL FANTASY VII REMAKE』 公式サイトより)

 なぜ2020年を代表する10選とならず番外編なのかと問われれば、連作のパート1である本作はミッドガルという全体の序盤にあたる部分であり、その物語がまだ今年で終わらず続いていく点が大きい。とはいえそこさえ除けば、『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、FF7R)は、1997年発売のゲームのリメイクとは信じられないほどエネルギッシュかつフレッシュな序章だったと言えるだろう。

 業界歴23年のベテランがファンの望む形で戻ってくるまでには、紆余曲折があった。多数のスピンオフや外伝が登場し世界設定に厚みがもたらされていく一方で、一番の願いである「現代の最高のビジュアルで『ファイナルファンタジーVII』を再現すること」は長きにわたり叶えられてこなかった。2014年12月には、PS4向けに原作『ファイナルファンタジーVII』の移植が発表されたが、そのアナウンスには大きな失望の声が寄せられた。いまさらこんな昔のゲームをそのまま出すのか。欧州スクウェア・エニックスのYouTubeチャンネルが投稿した動画では、当時の批判の痕跡をコメントとしていまも見ることができる。

 それから半年が経った2015年6月のE3、その映像は突如として公開された。海外のストリーマーたちが「『ファイナルファンタジーVII』!?」とか「映画じゃないよな!?」とか半信半疑で叫ぶ中、最後に本作がリメイク版だともったいぶって伝えられた。地球はほんの少し、世界各地のファンの喜びの声で震えたかもしれない。

 同年12月にはリメイク版が分作であり、さらにのちにはフルプライスであることもあってか、発売までインターネット上では文句を言うユーザーも見られた(いまだにリメイク版はパートいくつまで続くかも決まっていないので、わからないでもない)。だがそういった事実など関係ないように、本作が発売から500万本セールスを全世界で達成し高い評価を受けたという事実については、よく考えなければならない。

 あらためて言うまでもないが、原作の『ファイナルファンタジーVII』はゲーム史上に残るマイルストーンとなっている。PlayStationというハードウェアの転換期に登場し当時の3Dグラフィックスの最先方を突き進んだ同作は、従来の伝統的な大型ファンタジーRPGではあまり見られない要素でいっぱいだった。むせ返りそうなスチームパンクの都市、無口でクールな主人公、神羅カンパニーという企業が世界を牛耳る斬新な構図。その作品自体の出来以上に、さまざまな要素が絡み合い特異点になった、記念碑のごとき作品と言っても差し支えない。

 23年後、それをリメイク作品で、現代の最高のグラフィックスとゲームシステムで描く。だから、すばらしい作品になるのは当たり前じゃないかと思える。だがおそらく、「改善ではなく拡張」という方向性をもって作られたことこそが、本作の肝であるのではないだろうか。
 戦闘システムが現代向けにスタイリッシュに変わったとかいった単純な話ではない。ミッドガルの一部一部を繊細に描くという行為は、ただ当時の開発資料に沿ってテクスチャやモデルを新しく作るだけでなく、それに見合った世界の演出や描き方を用意する必要がある。ただ一部を単純にリファインするだけでは、23年前のゲームのどこかとギャップが発生するだろう。

 それはまるで積み上げられたジェンガを組み直すがごとしだ。本作は、想像するだけで吐き気をもよおしてしまいそうな拡張を積み上げ高みを目指しつつも、『ファイナルファンタジーVII』の全体像というタワーはけっして崩さない見事な手腕で、序章の世界を描ききっている。スクウェア・エニックスがリメイク版をなかなか発表しなかったのも、なんとなく理解できてしまうところだ。しかしこれこそがファンが求めていた、当時の熱量をそのまま現代でも味わうことができる『FF7R』である。

 筆者はゲームが発売されてからしばらく経って本作をプレイしたが、しっかりとプレイしていた人々の感想に、いまなら相槌を打つ。クラウドなどのキャラクターやミッドガルの町並み、またストーリーすらも、懐かしいにも関わらずどこか新鮮で、当時思いもしなかった側面を見せてくれる。リメイク(創り変える)という意味を本当に体現した『FF7R』は、その行き着く先で何を提示してくれるのか。まだ旅路は終わっておらず、この偉業が完成するのかどうかには期待と不安が入り交じる。

文/ishigenn

番外編:『Helltaker』

●発売:2020年5月11日 ●開発・販売:Vanripper ●対応機種:PC

(画像はSteam『Helltaker』より)
(画像はSteam『Helltaker』より)

 2020年5月、PCゲーム配信プラットフォームのSteamに突如現れヒットした作品『Helltaker』(ヘルテイカー)をご存知だろうか。本作は、赤と黒の2色を基調にカートゥーン調で表現された悪魔っ娘のキャラクターたちが登場する短編パズルゲームだ。

 ゲームシステム自体は「指定された手数でキャラクターを悪魔っ娘の元へ移動させる」シンプルなものでありながら、執筆時点のSteamストアページでは8万4000件以上のレビュー投稿があり、そのうち98%のユーザーから好評価を受けている。

 ポーランド出身の製作者VanRipperことウカシュ・ピスコシュ氏は、本作のリリース以前から海外アートコミュニティサイトDeviantArtとYouTubeチャンネルでイラストや自主制作アニメを公開している。

 『Helltaker』のヒットには「SNS上でのファンアート拡散」が大きく影響しているが、その起点にはコアなゲームファンだけでなく、旧来からの氏のファンも関わっているようだ。

VanRipper氏がインスピレーションを得た恋愛シミュレーションゲーム『Monster Prom』へ登場するヒロインのひとり「The Slayer」
(画像はmonsterProm by VanRipper on DeviantArtより)

 また、本作がヒットした要因には、海外インディーゲームの日本語翻訳を手がける陽炎01型氏の打診「有志翻訳ガイドライン」早期に整備された点も挙げられる。

 英語圏外のプレイヤー、特にSteamで3番目にユーザー数の多いアジア圏のユーザーが母国語で物語を楽しめることはヒットにおいて非常に重要な要素であった。

 2020年の「Steamアワード」では「ベストサウンドトラック賞」にもノミネートされ、アーティストのMittsies氏による音楽の評価も高い『Helltaker』。
 
 しかし、ゲーマーが作品を選ぶうえでの“入口”として、筆者は上記ふたつが大きな要因になっていると考える。
 本作に興味があれば、ぜひ日本語で遊び、ファンアートや音楽を楽しんでほしい。

文/ヨシムネ

番外編:『クラフトピア』

●発売:2020年9月4日(早期アクセス) ●開発・販売:ポケットペア ●対応機種:PC

(画像は『クラフトピア』 公式サイトより)

 2020年を混沌の年だとするのなら、『クラフトピア』はある意味で2020年を代表する作品に選ばれてもいいだろう。2020年9月にリリースされた同作は、日本国産としてはめずらしいオープンワールド型のクラフトゲームで、しかも早期アクセス販売でありながらSteamで一次売り上げランキング1位に君臨。12月に入ると50万本を売り上げるという大きな成功を収めた。

 ポケットペアいわく「クラフト農業ハクスラ⾃動化建築マルチ対応オープンワールドサバイバルアクション」なるジャンルで、開発陣が好きこのむ要素をこれでもかと積み込んだのが同作となる。ハック&スラッシュとサバイバル、クラフトが軸のゲームは世界中に存在するが、さらにそこ「農業」、「⾃動化」、「ペット飼育」、「ダンジョン探索」、「建築」などなど、ここまで多種多様な要素を詰め込んでいるのはめずらしいだろう。さらにマルチプレイもあるし、スキルツリーも用意されている。

 一見すると混沌としており、まるでキメラのような作品に見えるだろう。グラフィックスは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のテイストを感じるし、ペットのテイムは『ポケットモンスター』、建築や自動化は『フォートナイト』を参考にしたように思える。開発者もそれは認めており、Steamストアの解説文では本作のコンセプトは明確に示されている。

私達が人生で遊んできた最高のゲーム達を、すべて組み合わせたら、一体どうなるんだろう…?
本当にリスペクトしてやまない、偉大な素晴らしいゲーム達を。そう、例えば…

サンドボックスのように木や石を掘り、
オープンワールドのように広大な世界を冒険し、
サバイバルゲームのように飢えと戦い、
牧場系ゲームのように畑を耕し作物を育て、
ハクスラのようにダンジョンに潜りレア武器を集めて、
工場シミュレーションのようにすべての作業を自動化し、
ハンティングアクションのように巨大生物を狩り、
ファンタジーRPGのように魔法を唱える。

そんなゲーム、作れるはずがない。スローライフな牧場系ゲームと、殺伐としたハクスラ、そして自由度の高いクラフトゲームが、共存するはずがない。そう思いながらも、数々の困難を乗り越え、何度も絶望を味わいながら開発を続けた結果生まれた、私達の理想郷。

(文章はSteamストア 『ク

 『クラフトピア』はもちろん、前作の『Overdungeon』を見ても、ポケットペアというインディー開発スタジオはとてもユニークだなと思う。ユニークなアイディアや世界設定で市場を一点突破するというインディーゲームの魅力は、これまで数多の作品でストーリーやドラマとして語られてきており、「インディー=個性」という考え方は良し悪しはべつとして根強い。にも関わらず、同スタジオはオリジナルにはこだわっておらず、いくつかのビデオゲームの要素を精査しそれらを組み合わせて新しい作品を作り出すということを明確に念頭において両作で挑戦している。

 それはどこか大手企業がビジネスのために人気作を模倣するような行為に見えることもあるかもしれない。ただ、ポケットペアが明確に違うのは、掛け合わせる作品をどれも単純に「好きだから」とか「すごいから」とか思っているのだろうということだ。とにかく、そういった作品を組み合わせるとどうなるのと、実験を続けているようなのだ。

 当たり前の話だが、素晴らしい作品と素晴らしい作品をかけ合わせれば、より素晴らしい作品が簡単に生まれるわけではない。そこでは掛け合わせたことで多数のズレや誤作動が生じるし、いちいちい微調整が求められるだろうし、そもそもゲームとして成り立たないことの方が多いだろう。だから、ジャンルやシリーズ続編といったより大きな区分で一からゲームを作る工程とは別種の難しさがある。

 インタビュー記事を読むと、アセットを流用するといったコスト軽減策など、合理的な思考を持っていることは明白だ。なのだが、それよりもむしろ、開発陣には「これとこれを混ぜたら楽しいんじゃね?」というプリミティブな興味心があり、実際の開発で必死にそれを制御しようとしているように見える。そこには日本のインディーゲームにはおそらくあまりない、『Overdungeon』や『クラフトピア』の特異さがある。

素材の組み合わせだけのゲームが5万本セールス!? 「ほぼ1枚も描いていない」という『Overdungeon』作者に訊くWeb的ゲーム開発

「これを組み合わせたらどうなるんですか?」→「わかりません!」──なぜ『クラフトピア』は開発者ですら把握しきれない破綻やバグを乗り越え、売上50万本を達成できたのか

 奇しくも『クラフトピア』は発売後、そのあまりに行き過ぎた興味心のためか要素を盛り込み過ぎ、開発者すら予期しない動作や挙動が発生し続け混沌の様相を見せた。だが、そういうった問題もTwitter上でファンとの楽しいやり取りにしてしまっている。そこにはプロモーションの効果を考えての打算もあるだろうが、同時に本人たちが本当に楽しんでいるような感覚も受ける。はたして『クラフトピア』が混沌を脱ぎ捨てて完成したとき、どのようなビデオゲームとなるのかは見えてこないが、本作が2020年に発売されたという事実は頭に留めておいてよいだろう。

文/ishigenn


 以上、電ファミニコゲーマーが選出した「2020年を代表するビデオゲーム 10選」となる。こうやって見ると、2020年も意外とさまざまな作品がゲーマーたちの注目を集めてきたと思えるだろう。

 2021年も編集部は昔のビデオゲームばかりでなく、最新のタイトルを追いかけ「なぜ面白いのか?」、「どうして話題になっているのか?」という背景を解き明かしていく予定だ。ぜひ来年以降も、電ファミニコゲーマーの公開する記事にご期待いただきたい。

 

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ジャンプ編集部の逸話や『十三機兵防衛圏』のレビューが大きな反響に──電ファミ記事ランキング2020年度版&振り返り

兎にも角にも今年が激動の一年であったとことには違いない。ここでは、そんな今年一年を締めくくる意味でも、電ファミで掲載された記事の振り返りを行ってみたい。集計期間は、2019年12月〜2020年11月まで。

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