平成最後の12月も明日で終わり。2016年2月に設立された電ファミニコゲーマーは無事に3度目の年越しを迎えることができそうです。
これもひとえに皆様のご支援の賜物であります。おかげさまで、昨年から引き続きたくさんの記事をお届けすることができました。
今年は身近なところで言えば、平昌五輪やパンダのシャンシャンブームがあった一方、コインチェック流出問題やスポーツ周辺で噴出した諸問題など、例年同様にさまざまな出来事がありました。
ゲーム業界を見渡しても、『PUBG』を皮切りに、『フォートナイト』や『荒野行動』などの「バトルロイヤル」系の大ヒットや、Epic GamesストアやDiscordゲームストアといった新たなゲーム販売プラットフォームの登場、eスポーツという言葉が流行語大賞にノミネートされたことなど、新たな時代の到来を感じさせてくれます。
電ファミでも、今年からニュースや女性向け記事に力を入れたり、Yahoo!ニュースへの配信を開始したりと、さまざまな企画を試みました。思い起こすと一瞬で通り過ぎたような1年でしたが、この年末も昨年に引き続き、電ファミが配信した記事をピックアップしながら2018年を振り返ってみたいと思います。
文/TAITAI
まずは電ファミのサイト全体で、2018年にアクセス数の多かった3本の記事を紹介しながら、ゲーム業界に起きたブームについて振り返ってみたいと思います。
アクセス数ランキング 3位
『刀剣乱舞』ファンがこの3年間で巻き起こした覇業を振り返る。107万円の公式Blu-Rayに約70件の申し込み、刀1本の展示で経済効果が4億円、幻の日本刀復元に4500万円を調達!
今年から女性向けゲームについての記事をお届けし始めましたが、この記事によって女性ファンの作品に対する熱量をあらためて強く感じ、試みは正しかったと確信を得ることになりました。
『刀剣乱舞-ONLINE-』からの刀剣ブームは聞き及んでいたので、出張に合わせて京都国立博物館で開催されていた「京のかたな展」を訪れたのですが、京都に数ある名所を巡っても、並んだのはその展示だけでした。
会場に入るまでに70分。『刀剣乱舞』コラボの音声ガイドを借りるためにさらに60分。イヤフォンを耳に、メインの刀「三日月宗近」を間近で見ようと近づくと、そこにはまた列が……。「ここまで来たなら」と、さらに60分……。
来館者は8割くらいが女性。結局のところ僕は博物館に3時間以上いたわけで、図らずも熱量を肌で感じることになりました。
この『刀剣乱舞』の記事は、その熱量がまさに凝縮されたようなもの。『刀剣乱舞-ONLINE-』というコンテンツのファンたちが、やがてオリジナルの刀剣の鑑賞者や支援者に育っていく。
そんなファンの姿が時系列を追いながら手際よくまとまっており、好きな人からは共感を得て、知らなかった人には驚きとともに読まれたのだと思います。
女性ファンたちは、これまでも次元やジャンルを問わず、さまざまなものに盛り上がり、そして現場に行って熱を運んできた歴史があります。 大正時代から続く宝塚歌劇団しかり、フィギュアスケートの羽生結弦選手しかり。
こうした熱量を携えた女性ファンたちは、突然現れたように見えるかもしれませんが、ずっと対象や作品を愛し、支え続けていたんですね。ここへ来てようやくメーカーやメディアがその熱量をすくい取れるようになってきたのかもしれません。
同時にファンたちも大声で「私はこれが好き」と言えるような時代になってきたのだと言えます。
そうやって好きなものを全力で「好き」と語る女性たちにとっての“コンテンツ”とは、作品そのものだけでなく、イベント後に友だちと感想を語り合うところまでが含まれているのでしょう。
アクセス数ランキング 2位
世界の「eスポーツ」ゲームいくつ言えるかな? いま熱い競技シーンから、eスポーツの条件を考えてみる
今年はゲームメディアに留まらずeスポーツが注目された一年で、「eスポーツ」が流行語大賞にもノミネートされました。そんな盛り上がりを示すように、電ファミでもeスポーツのリファレンスになれるように作った記事がアクセス数2位となりました。
この記事は公開後すぐに拡散されたというよりも、検索から来た人に1年をかけてじっくり読まれて広まっていった感じです。
「eスポーツ」が一般メディアなどでも取り上げられた結果として、“ゲームで競技をする”ということが人々にも広く認知されましたが、eスポーツが強く根づいたムーブメントになっているかというと、海外と比べても日本はまだまだと言えるのは間違いないでしょう。
eスポーツの未来については、すでにいろいろなところで語られていますが、僕個人としては、単に賞金付き大会を開催するだけでなく、本当の意味でゲーマーが喜ぶ企画を立て、それに取り組んでいく必要があるのではと感じます。
とはいえ世間が注目しているいま、他業種からの参入も含め、一般のメディアで取り上げられやすくなったり、お金が動くようになったりというのは、eスポーツひいてはゲーム業界全体にとってもチャンスだと思います。それをより良い形へと持っていく手腕をeスポーツ関係者には期待したいし、その一助になれるよう努めたいですね。
そもそも、eスポーツがなぜこれほどまでに世の中を席巻しているのか。なぜゲーム会社の経営層が関心を持ち始めたのかといえば、それが「ゲームビジネスのルールが変わる」、「ゲーム市場のあり方が変わる」という可能性を孕んだものだからです。
どういうことか?
これは、スクウェア・エニックスの元社長である和田洋一さんの言葉、「ゲームの市場は低いところに広がっていく」という視点で見てみると解りやすいかもしれません。
ゲームは、アーケードゲームやコンピューターゲームといったコアなゲーマーが楽しむ時代に始まり、家庭用ゲーム機の普及で一般家庭へと浸透し、さらに誰もが持つようになった携帯電話やスマートフォンへと広がっていきました。
要するにゲーム市場は、長い歴史の中でより簡単に遊べる形へと進化してきたのです。新しい簡便な間口を開拓することで、どんどんゲームを遊ぶ人が増えていった流れがここにあります。
その視点でeスポーツ、あるいはゲーム実況などを解釈するとどうなるか。つまり、これって「ついにゲーム市場が、ゲームを遊ばない人たちにも広がっていく!」ということに他なりません。
ゲームが「遊ぶだけ」ではなく、「視聴・観戦」という部分にも、面白さや可能性を秘めているのは、eスポーツファンや実況配信などを観ている人には周知のとおりでしょう。
eスポーツは、「ゲームをプレイしない人でも楽しめる」ゲームという点で、新興市場として高いポテンシャルを秘めています。だからこそ、これだけビジネスレイヤーで注目されているわけです。
もちろん、日本でそうしたポテンシャルが花開くには、いろいろと足りない要素を埋めていく必要があります。ゲーム業界の発展のためにも、関係者の方々にはぜひ頑張っていただきたいですね。
アクセス数ランキング 1位
王 貞治、長嶋茂雄、田中将大、大谷翔平……球界のレジェンド・野村克也が『パワプロ』各選手&自身の能力データをボヤキながら分析してみた
「プロ野球選手に『パワプロ』内の自身のデータを自己査定してもらう」という企画は、じつは電ファミが立ち上がる2016年前後に、ライターの森祐介さんからいただいていたものでした。
この森さんの企画が今年になって再燃し、「せっかくだからプロ野球の生き字引であるノムさんに伺うのはどうだろう。ダメでもともと、アタックしよう!」と打ち合わせで盛り上がり、まさかの実現にいたった、というのが事の経緯です。
野村さんが最愛の奥さまとの別れという悲しみから立ち直ろうと、ちょうど仕事を受け始めた時期という絶妙なタイミングだったこともあり、叶いました。
インタビューは、受ける側に話すモチベーションがないと成立しません。だからこそ、インタビューする側としては、先方が「話したい」と思えるテーマを考えることが礼儀となるし、場合によっては、先方が「話してみたい」と思う相手をブッキングするなどしてモチベーションを引き出すこともあります。しっかり考えて、きちんと準備することが、面白いインタビューをするコツなんですよね。
これはゲームファン以外にも広くリーチすることができた記事ですが、編集部としては、今後もこうしたゲームを軸とした、世間で話題になるような記事をもっと作っていければいいなと思います。
電ファミ2018年記事アクセス数ランキング
※2018年に公開した記事のアクセス数をもとに作成したランキング表です。各種SNS(Twitter、Facebook、はてなブックマーク)での反響数をあわせて記載しています。
なお、反響数については、サードパーティ製のAPIを利用しているため、一部の数値が不正確なので、あくまで参考としてご参照ください。
■ 番外編 ■
誠実かつロジカルな「出たがりおじさん」のすごさ
スクウェアは貴族でエニックスはヴァイキング? 人たらしでヒットに導く齊藤Pに見る“優秀なゲームプロデューサー”【齊藤陽介×藤澤仁×ヨコオタロウ×安藤武博:座談会】
技術力が高すぎて「大手企業がバックにいるのでは?」と噂されていたVTuber集団、実は『ドラクエX』『ニーア』のスクエニ齊藤Pによるバーチャルアイドルグループだった──「GEMS COMPANY」珠根うた含む各メンバー総まとめ
さて。上に掲げた表の中でも注目したいのが、17位と20位。どちらも、スクウェア・エニックスの齊藤陽介さんに関連する記事です。
「スクウェアは貴族でエニックスはヴァイキング? 人たらしでヒットに導く齊藤Pに見る“優秀なゲームプロデューサー”【齊藤陽介×藤澤仁×ヨコオタロウ×安藤武博:座談会】」の記事でも触れていますが、齊藤陽介さんは、いまもっとも優秀なゲームプロデューサーのひとりと言えるでしょう。
ニコニコ生放送のいろいろな番組に出まくっていることもあってか、「出たがりおじさん」の愛称でも知られていますが、そんなおちゃらけた顔の裏で、凄く誠実かつロジカルに仕事を進める側面もあるというのが、齊藤陽介という人の面白いところだと思います。
業界や世間の流行に左右されず、本質的な価値を判断して仕事をできる人だからこそ、『ドラゴンクエスト』のオンライン化にも力を発揮し、『ドラゴンクエストXI』を率いる一方で『ニーア』を世界的なIPに育て上げることができたのでしょう。
座談会でも語られているように、『ニーア』のヒットは挑戦の賜物であり、一朝一夕で偶然成功したものではありません。
そんな齊藤さんがこれから仕掛けていくプロジェクトがどうなっていくのか。今後の動向に注目したいところですね。
記事の寿命、愛される記事
まず2Dゲームで開発、社員300人で1週間遊ぶ!? 新作ゼルダ、任天堂の驚愕の開発手法に迫る。「時オカ」企画書も公開! 【ゲームの企画書:任天堂・青沼英二×スクエニ・藤澤仁】
【全文公開】伝説の漫画編集者マシリトはゲーム業界でも偉人だった! 鳥嶋和彦が語る「DQ」「FF」「クロノ・トリガー」誕生秘話
Nintendo Switch版の話も飛び出した! 6年振りに復活した『桃鉄』という唯一無二なゲームのすごさとは?
そのほかの注目事項としては、2018年以前の記事が3本ランクインしているところでしょうか。なかでも鳥嶋和彦さんのインタビューは、2016年の掲載以降、毎年ランクインしています。しかもけっこういい位置だったり。
電ファミが他のニュースサイトと違うところは、「記事の寿命が決定的に長い」というところだと思います。
一般的に、ニュース記事は3日から一週間で読まれなくなってしまうものですが、電ファミには何年も読まれ続ける記事がある。これは“本当に読者のあいだで広がった”という証拠。ページビュー稼ぎに特化した”軽い記事”が流行る昨今ですが、電ファミでは、来年以降もこうした長く愛される記事をお届けしていきたいですね。
これからのWebメディアについて
電ファミの新しい試みとして、今年の5月からYahoo!ニュースでも記事を配信し始めました。Yahoo!で読まれた記事のランキングを見てもわかるとおり、電ファミとはまた違う傾向の記事がランクインしているのが面白いところです。
Yahoo! 電ファミ配信記事2018年アクセス数ランキング
スマートフォンが普及し、記事の流通経路がSNSなどに依存するようになり、ニュースメディアのありかたは劇的に変化しました。ニュースサイトのトップページを訪れ、そこから記事を探すというスタイルが減り、自分のSNSのタイムライン上に流れて来たニュースを見たり、ニュースアプリでおすすめされる記事を読んだりと、「自分向けにカスタマイズされた環境」からの閲覧が主流になってきています。
そうなると、ニュースメディアの影響力は、もはや自サイトのページビューだけでは測れないことがわかります。「SNSでいかに拡散されていくか」や、配信された先も含めて「トータルでどう記事が読まれるか」を問われるようになっているのです。
今後、ニュースメディアはひとつのサイトに依存しなくなっていく時代。このような変化にも電ファミは対応し、ゲーム業界を盛り上げて行きたいと思っております。
来年も電ファミをよろしくお願いします!