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世界を席巻した『ゼルダの伝説』、「AI」が示す日本の敗戦、「マシリト」の記事はまたランクイン。2017年の電ファミ記事ランキングを、今年のゲーム業界とともに振り返ってみる

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 今年もあと1日で終わり。2016年2月に設立された電ファミニコゲーマーも、なんとか2度目の年越しを迎えることができそうです。これもひとえに皆様のご支援の賜物であります。おかげさまで、昨年から引き続きたくさんの記事を作ることもできました。
 新たな編集者を迎えたり広告記事をやりますと宣言したりと、電ファミは電ファミでいろいろありましたが、ゲーム業界自体もさまざまな動きがあった一年でした。
 というわけで今回も昨年に引き続き、2017年に作った電ファミの記事をいくつかピックアップしながら、今年一年を振り返ってみたいと思います。

2017年電ファミ人気記事(アクセス数順)

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集計期間:2017年1月1日~12月19日

 こちらは今年1年掲載した記事のアクセス数を集計した数値を中心としたランキング表。TwitterのリツイートとFacebookのいいね、はてブのブックマーク数を参考として記載しています。
 なお、Twitterのリツイート数については、サードパーティ製のAPIを利用しているため、一部の数値が不正確です。あくまで参考としてご参照ください。

文/TAITAI


世界を席巻した『ゼルダの伝説』、「AI」が示す日本の敗戦、「マシリト」の記事はまたランクイン。2017年の電ファミ記事ランキングを、今年のゲーム業界とともに振り返ってみる_001

1位:まず2Dゲームで開発、社員300人で1週間遊ぶ!? 新作ゼルダ、任天堂の驚愕の開発手法に迫る。「時オカ」企画書も公開! 【ゲームの企画書:任天堂・青沼英二×スクエニ・藤澤仁】  

まず2Dゲームで開発、社員300人で1週間遊ぶ!? 新作ゼルダ、任天堂の驚愕の開発手法に迫る。「時オカ」企画書も公開! 【ゲームの企画書:任天堂・青沼英二×スクエニ・藤澤仁】

 2017年の電ファミNo.1記事は、『ゼルダの伝説』プロデューサーの青沼英二氏と『ドラゴンクエスト』シリーズのディレクターを努めた藤澤仁氏の対談記事でした。
 2017年のゲーム業界全体を振り返ってみても、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は最大のホットトピックスの一つ。記事自体が発売日直前の掲載だったこともあってか、この記事はネット上でも大きな反響を呼び、電ファミの中でも歴代2位のアクセス数を記録する形になりました。
 
 この対談の経緯を軽く説明すると、この企画は、もともと藤澤さんの「青沼さんと話したい!」という思いから始まったもので、ちょうど『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が発売されるタイミングを見計らって、任天堂に取材を申し込んだというものでした。発売直前の多忙な時期に、青沼さんとの対談を実現できたのは、とても運がよかったと思います。

世界を席巻した『ゼルダの伝説』、「AI」が示す日本の敗戦、「マシリト」の記事はまたランクイン。2017年の電ファミ記事ランキングを、今年のゲーム業界とともに振り返ってみる_002
(画像はWiiU版『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』任天堂公式サイトより)

 記事の見どころは、なんといっても、藤澤さんが自身の悩みを青沼さんにぶつけ、結果としてお互いが本音で語り合ったというところに尽きます。そもそも、人に「本音」で語ってもらうことは、どんなシチュエーションであれとても難しいわけですが、それが公の取材の場でということになるとなおさらです。しかし本件では、いろいろな要因と幸運が重なって、少なからずお二人の「本音」が語られた、とても稀有な内容になりました。この記事が、ゲームファン以外の人にも広く読まれ、大きな反響を得たというのも、そうした本音の部分に読者が強く共感したからに違いありません。

 巨大IPを天才から引き継いだ2人の対談が実現したという点でも、歴史的な意義がある企画だったと感じていますし、取材をした私自身、いろいろなことを考えさせられた記事でした。
 ちなみに。商業ゲームメディアとしてはいかがなものかなと思うけど、この記事は、電ファミ初の「ゲームの発売日に合わせて公開された記事」だったりします。いやー、やっぱり発売日に併せた方が記事って読まれるよなぁなどと、今更ながらに思ってしまった一本でもありました(汗)。

2位:ゲーム収納のために家を建てた男──超大量のゲームやマンガを絶対に捨てないという信念を貫いた、とあるゲーマーの努力と幸運

ゲーム収納のために家を建てた男──超大量のゲームやマンガを絶対に捨てないという信念を貫いた、とあるゲーマーの努力と幸運

 2位はゲーム収納のために建てられた家を取材した記事がランクイン。自分だけのゲーム御殿やゲーム部屋は、ゲーム好きであれば誰もが夢見るものだけど、そんな夢をあきらめることなく真正面から実現してしまったのがKaguraさんです。桜井政博さんへの取材に続く収納連載シリーズの2本めの記事でもあります。
 正直、編集スタッフからこの企画を提案された時にはピンと来なくて、「まぁ、行ってみたらいいんじゃないの」ぐらいで通したものだったのだけど、蓋を開けたら想像を超える大ヒットでびっくりしたのを覚えています。

 その反響はほんとうにすごくて、記事を掲載したあと、テレビ局や雑誌からKaguraさんへの出演依頼オファーが、なぜか編集部に続々と届くという珍現象が起きるほど。電ファミがまるでKaguraさんのマネージャーのような状態になっていました。
 問い合わせてくる媒体も千差万別で、収納をテーマにした女性向け雑誌など、およそゲームとは関係ないメディアからも問い合わせがあったあたり、この記事が本当に大きな話題になったことが如実に感じられるものでした。
 電ファミでは、ゲーマー向けのがっつり濃い記事も続けていく一方で、こういったゲームの話題を広く伝えるような記事もちょくちょく出していけるといいなと思う次第です。

3位:【新連載:田中圭一】坂口博信とFFの天才プログラマたちが歩んだ、打倒DQへの道。「毎日のようにキレてましたけど(苦笑)」【若ゲのいたり】

【新連載:田中圭一】坂口博信とFFの天才プログラマたちが歩んだ、打倒DQへの道。「毎日のようにキレてましたけど(苦笑)」【若ゲのいたり】

 今年から電ファミで始まった漫画連載、その第一弾となる『若ゲのいたり』が、堂々と3位にランクインしました。ランキングを見てもらえばわかるように、今年は20位内に同連載の記事が4つ入っているなど、田中圭一先生の記事が年間を通してヒットした、まさに田中圭一無双な1年でもありました。

 以前からゲームの記事を作るにあたって、どうすれば多くの人に読んでもらえるだろうか? という問題意識があったわけですが、漫画というのはそのなかでやってみたかった挑戦の1つ。たまたま田中先生の元担当編集がスタッフ内にいたこともあって、今回、こういう企画を実現させることができました。田中先生も積極的に取材その他に臨んでくださったので、このヒットにつながったのかなと思います。
 若ゲのいたりに関しては、遠からず書籍化などもすると思うので、その時はぜひチェックを。漫画を使った取り組みは、今後も引き続き考えていきたいとは思うので、2018年もぜひ楽しみにしていてください。

AIが示した日本の敗戦、40代クリエイターは悩めるお年ごろ。TOP20記事からピックアップ

 ここまでは上位3位までの記事をふり返ってみましたが、ここからはTOP20位から個人的に思い入れのある記事をいくつかピックアップしていきます。昨年は「ゲームの企画書」ばかりでしたが、今年はそれ以外にも興味深い取材や企画がありました。

【寺田P×奈須きのこ:対談】決戦!『スパロボ』VS『Fate』――と思いきや、奈須きのこのスパロボ愛が炸裂して、寺田Pから濃ゆい制作秘話が聞けちゃった!

【寺田P×奈須きのこ:対談】庵野「シャアをエヴァに乗せて」→スパロボPはなぜ断ったのか!? Pが語る原作とゲームの狭間の葛藤。そしてFGOがスパロボから継承したもの

 電ファミでは、初めての前後編記事となった『スーパーロボット大戦』×『Fate/Grand Order』の対談記事。こちらは、それぞれTOP10にランクインし、両記事のアクセス数をあわせるとランキング3位となりました。根強い人気を持つ『スパロボ』と近年人気の『FGO』がテーマであったこともあり、貫禄のランクインといったところでしょうか。
 もともと『Fate』は人気のIPでしたが、コンシューマ機では30万本以上を売り上げるような規模ではなく、そこまで大ヒットを飛ばすシリーズではありませんでした。それがソーシャルゲーム化されたことによってここまで人気になったのは、いまだにちょっと戸惑いがあるし、まだ分析もしきれていません。もし「こうなんじゃないの?」とわかる人がいるなら、記事化も検討するので、ぜひ教えてほしいぐらいです。

 一方で、ソシャゲの課金スタイルが年々変遷していくなかで、かつて5割程度だったキャラクターガチャの売り上げは、今や8割や9割を占めています。『Fate』というキャラクター性の強いIPが、そういった文脈や流れのなかにスポッとハマったのは、成功した1つの要因としてかなり大きいのではないでしょうか。少なくとも日本では、キャラガチャにお金を払って納得する上で、キャラクター性は切り離せない状況が今後も続いていくと思われます。来年以降も、何かしらキャラクターが軸となって成功するものが出てくるのかもしれません。

話題の『アズールレーン』はたった10名の会社が運営! 社長が“今のガチャ文化に違和感”を抱いた結果、SSR出現割合が7%になる【インタビュー】

 9位に入った『アズールレーン』も、今年を象徴するタイトルの1つだったと言えるでしょう。発売1か月でユーザー数が200万人を突破してから約2週間後、話題がホットなうちに記事を掲載できたということで、TOP20にランクインできたのは順当だと思います。
  みなさんご存知のように、『アズールレーン』は中国の企業が開発・運営しているアプリ。現在まで、欧米のゲームのクオリティが高いというのはよく知られてきましたが、中国のゲーム業界も実はそれに負けないビジネスサイズや規模感で回っていて、日本のゲームに劣らないどころか、それを凌駕するような作品が増えているという背景があります。その先鞭として『アズールレーン』が生まれてきたというのは示唆深く、市場としても興味深い現象でした。

 今後、『アズールレーン』の成功をもって、中国系やアジア系のタイトルがさらに日本に入ってくることは間違いなく、どういった作品が入ってくるのかは、非常に楽しみなところ。例えば、中国で流行っている『王者栄耀』は、日本のPCプラットフォームで浸透しきらなかったMOBA系の作品ですが、こういったタイトルが日本向けに大々的に展開したとしたら・・・。日本では伸び悩んでいるe-Sportsも、中国産タイトルが一つの突破口になる可能性だってありえます。

21世紀に“洋ゲー”でゲームAIが遂げた驚異の進化史。その「敗戦」から日本のゲーム業界が再び立ち上がるには?【AI開発者・三宅陽一郎氏インタビュー】

 三宅さんのAIにまつわる記事も、2017年の電ファミを代表するものでした。もともと、日本のゲームが欧米のゲームに劣勢を強いられているという話は、予算や組織マネジメント、3Dグラフィックスの面ではよく言われてきたところ。でも実は、その背景にはAI技術というものがわりと密接に絡んでおり、大きな敗因の1つになっていたというのは、多くの人にとって驚きだったのではないでしょうか。
 よくよく考えてみれば、ゲームが3Dになったり、オープンワールドで広くなったりしたときに、キャラクターの制御などをどうするかというのは、確かに問題となる部分。スクリプトのみで動かすかつての方法は物量的に難しくなっており、そういった部分をAIで肩代わりする必要性が生まれています。これは言われればわかるけど、遊んでるプレイヤーからするとなかなか気づきづらい点です。

 こういう話からもわかるように、現代においてゲームを作る構成要素というのは非常に複雑化していて、個人の才能や個性では突破しきれない側面も生まれつつあります。この記事を読むと、今後の日本のゲーム業界は難しいと思うかもしれないし、日本のゲームがどういう立ち位置で、どう戦っていくべきかという点については、さまざまな角度からの試行錯誤が必要になっていくでしょう。
 一方で、まだまだ個性で突破していく作品もあり、昨年はThe Game AwardsなどでGame of the Yearを獲得した『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』しかり、『ペルソナ5』や『NieR: Automata』も国内外で高く評価されています。日本は日本ならではの立ち位置、ポジショニングを維持する試みも、続けてほしいなぁと思うところです。

ニーア、ペルソナ等の人気ゲーム開発者が激論! 国内ゲーム産業を支える40代クリエイターの苦悩とは【SIE外山圭一郎×アトラス橋野桂×スクエニ藤澤仁×ヨコオタロウ】

 40代のクリエイターの方々に集まっていただいたこの対談も、個人的には思い入れの深い記事でした。なぜ40代をチョイスしたかというと、いま日本のゲームの良さを体現している、そのなんたるかを知っているクリエイターたちが、この先どこへ向かうのかということに、個人的に非常に興味があったからです。実際にこの取材をする前、一緒にご飯を食べたりするなかで、クリエイターからいろいろな悩みを聞くことがよくよくありました。
 一線級の彼らが悩んでいる内容は、ゲーム業界であるないに関わらず、今の多くの日本人にとっても共通のものではないのか。その悩みをオープンにすることで、気づきだったり共感が生まれ、なにかしら解決の糸口になりえないかなというのが、今回の取材の意図でした。

 実際にやってみると、筆者も今年40歳の悩めるお年頃ということもあって、いろいろ共感できるものでした。とくに、みなさんの若手に対する複雑な感情は興味深い。それこそ、後進として育てたい、道を譲りたいという気持ちもある一方で、でも自分がこれから作品を創作していく上では、戦っていかなければならない相手でもある。その狭間で揺れ動く年代という意味でも、40代クリエイターというのは難しいお年頃なのだなと感じた次第であります。
 アクセス数1位の『ゼルダの伝説』もこの記事も、悩みというか、本音がある記事というのは、ちゃんと共感されるものだなあと思うところであります。

水口哲也のハチャメチャ人生が『Rez』で人類を進化(?)させるまで。「制約が創造を生む」なんて、もう言い訳しない【ゲームの企画書:水口哲也氏】

 水口さんの取材は、個人的に今年もっとも興味深くエキサイティングだったインタビューの1つ。正直、VRのすごさは、『Rez』を遊ぶ&水口さんの話を聞くまで懐疑的だったのですが、VRがこれまでのメディアと何が違うのか、何を切り開こうとしているのか。水口さんの話を聞いている内に理解することができ、個人的にも非常に大きな収穫となりました。

 そもそも、人が何かしらの思いや体験をメディアで表現するという行為は、その体験したものを文字や音楽、映像などに変換し落とし込む作業になります。たとえば小説であれば文章に落とし込み、映画であれば映像に落とし込みます。だけど、高い山の上から眼前に広がる壮大な風景を見たときの感覚や体感は、文章や映画に落とし込んだときには、実はほとんどがスポイルされてしまいます。そのスポイルされた感覚をいろいろな技法でなんとか表現してきたのが、クリエイティブの歴史だったわけです。

 VRの何がすごいかというと、体験をわりとそのままトレースできてしまう点であり、これは確かにメディアの歴史において、非常に大きな転換点となり得ます。いまはまだ技術的に未成熟なせいもあって、完全な普及には至っていないけれど、何年後かに何かしらのブレイクスルーがあることで、より身近な装置になるのではないでしょうか。
 そういう可能性や未来像を本当にクリアに見せてくれたのが『Rez Infinite』で、さらにそれを20年前からある程度の解像度で見定めてきた水口さんは、世界に類を見ない真のクリエイターだと言えるでしょう。そんな水口さんが今後作っていくであろうコンテンツや取り組みに関しては、個人的にも注目しているし、とても応援したいので、何か絡める余地があれば絡んでいただかせたいと思っています。

【全文公開】伝説の漫画編集者マシリトはゲーム業界でも偉人だった! 鳥嶋和彦が語る「DQ」「FF」「クロノ・トリガー」誕生秘話

 厳密には今年掲載された記事ではないのだけど、昨年のアクセス数ランキングでも1位となったDr.マシリトこと鳥嶋和彦氏へのインタビューが、今年の集計でも7位にランクインしました。並み居る電ファミの人気記事のなかで、昨年のマシリト記事がこんな上位に入ってくるのは、貫禄というほかないでしょう。折に触れて言及されたり読み返されたりという教科書のような記事になっていることが、この順位からも窺い知れます。

 筆者はゲーム業界外の方と話す機会もありますが、実際に驚くほどみんなが読んでいるようです。ぶっちゃけ、電ファミのことを知らなくても、この記事のことは知っていたりします。誇張なく、電ファミ自体よりも有名なのが、この鳥嶋さんの記事でしょう。
 実は、この記事が縁になり、鳥嶋さんとはけっこうな頻度でやり取りをするようになっていたりして、筆者は白泉社のアドバイザー的な立ち位置で実務にちょっとだけ関わっていたりもします。鳥嶋さんは、接すれば接するほど本当に面白く深い人で、また鳥嶋さんにフォーカスした記事なり特集なりをやりたいと思っているので、それが陽の目を見たときにはぜひ読んでみてほしいと思います。

電ファミが目指すものとこれから

 さて。筆者は以前、4Gamer.netに在籍していましたが、当時考えていた、いわゆるニュースサイトというもののあり方は、例えば、100万PVを目指すためには1万PVの記事を100本作るようなやり方でした。もちろん、これはこれでやってると面白いわけですけど、その一方で「これが本当にメディアのありようなのか?」という疑問がありました。
 それに対して、今、電ファミでやってみたい(実現してみたい)と考えているのは、1本の記事で100万PVを目指す、一つの話題を100万人が共有するものを目指すということです。同じ100万PVでも、こちらだったら何かが起こるんじゃないか。それこそが、本来メディアが持っていた力、あるいは可能性なんじゃないのか。そんなことをぼんやり考えている次第です。

 そして、そんな願いを少なからず体現してくれたのが、去年の鳥嶋さんの記事でした。具体的には、この記事の影響で何か目に見えるようなことが起きたわけではないかもしれません。しかし、この記事が与えた影響という点に関しては、確実に手応えを感じているのも事実です。
 今年一番だった『ゼルダの伝説』の記事にしても、ゲームの紹介のみに終わらない1本となりました。ただのPVという数値では測りきれない、メディアが及ぼす影響力がそこにはあったのだと実感しています。2018年もまた、そんな記事を作っていければと思うのであります。

 また電ファミは、編集部としても徐々に体制が整ってきました。年末からAUTOMATONの元編集長の石元さんが加わり、年始にはファミ通.comの現編集長の豊田さんも加わる予定です。より強いコンテンツが送り出せる体制になってきたと思っています。
 その名が表すように、電ファミニコゲーマーは、いろいろなゲームメディアからスタッフが集まる愚連隊のような存在になりつつあるようです。
 SNSが発展して個人のゲームファンやメーカーが自分で情報を発信するようになり、メディアの仕事ってなんだろうと悩むことも多いなかで、我々にしかできない仕事を、今後も追い求めて行く所存。編集スタッフ一同、来年以降も頑張って仕事をしていくつもりなので、ぜひ2018年の電ファミにもご期待ください。

 あ、最後に。依然としてビジネスモデルは模索中でありますので、何か我々と仕事をしてみたいと思う人がいたら、連絡(入れ知恵)よろしくです! ではまた来年〜。

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2位ヨッピーさん、3位ダークソウルおじいちゃん、そして1位はあの伝説の…? 2016年電ファミをTAITAI編集長が振り返る

インタビュアー
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。
元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999
世界を席巻した『ゼルダの伝説』、「AI」が示す日本の敗戦、「マシリト」の記事はまたランクイン。2017年の電ファミ記事ランキングを、今年のゲーム業界とともに振り返ってみる_003

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